2016年08月15日

九井諒子「ダンジョン飯 3巻」感想

 今回もブレずに飛ばしていますよ!
 一番すげー! と思ったのは、寄生虫を食べる話。

 うえっ 気持ち悪ぅ〜 って思いますよね?
 私も(登場人物たちも)最初そう感じて青ざめました。

 この寄生虫、クラーケンという巨大なイカ(タコ?)の怪物の体内に住んでいたもので、ちょうど蛇くらいの大きさ。
 この頭部を銛(もり)で固定し、包丁を差し入れ開きにし、内蔵を取り、人数分に切ってから串を刺し、醤油・みりん・砂糖・酒で作ったタレを付けて焼くと……

 はい、蒲焼きの完成です!!
 香ばしい匂いまでして、メチャクチャ美味しそうになっちゃうんだ。

 この工程を描いた2ページは淡々としながらも、見事に読者の価値観をひっくり返す。
 九井さん本当にすごい。

 次の巻では炎竜(レッドドラゴン)が出てくるのかなー
 九井さんは食べ物描写も上手いですが、何と言っても竜が! 素晴らしいのですよ!!
(短編集「竜の学校は山の上」「竜のかわいい七つの子」「ひきだしにテラリウム」読んでない方はぜひ)

 彼女が満を持して描く竜……!
 楽しみだなぁ♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 22:24| 読書 | 更新情報をチェックする

2016年08月13日

直人は優馬を愛していたのか(吉田修一「怒り」の話)

「……この役は、果てしないです」
 一瞬、意味が分からなかった。
「果てしない?」
「はい。……なんというか、どこまで追いかけても捕まえられないというか……」


 映画「怒り」で綾野剛が演じることになる直人は、謎の男として登場する。
 一応物語の最後で素性が明らかになるのだけど、恋人のように暮らしていた優馬や、親しかった女性による「外側からの描写」だけに終始するので、直人の内面は誰も知ることが出来ない。

 その不可解さゆえに優馬は「直人は逃亡中の殺人犯なのではないか」と疑い始めるのだが、正直私にはそんなのどうでも良いことに思える。
 それよりずっと気になるのは、
「直人は優馬を愛していたのか」
 ということだ。

 直人は優馬に「愛している」とは言わないし、
「直人は優馬さんを愛していましたよ」
 と教えてくれる人もいない。

 優馬は直人に惚れきっていて、それは読者に伝わるように書いてあるし、その感情を直接吐露する場面もある。
 けれども直人の本心を推察するための描写は少ない。

「俺さえいれば幸せみたいな、そんな風に見えたんだよ」
 という優馬の記憶。
「優馬さんと一緒にいると、なんだか自分にも自信が湧くんだって」
 という女性の話。そして、
「前に、一緒に墓入るかって、俺に訊いたろ? 一緒は無理でも、隣でもいいよな」
 という直人のセリフ。

(ついでに書くと、セックスは日常的にしている。
 細かい描写はないが、その分食事のように「当たり前のこと」だったのが分かる)

 優馬への思いはとりあえず置いておいて、一つはっきりしているのは、
「直人は上辺だけではない、本質的な優しさを持った人間だった」
 ということだ。

 入院中の優馬のお母さんのところに(たぶん毎日のように)通うし、お母さんが亡くなった後、優馬は直人に冷たくするのに、直人は自分のことなどまるで気にしない様子で優馬に寄り添う。
 過酷な運命の中で生きてきた人間が、せめて自分は世界に対して優しくありたい、と願うような、切実で深い愛情が彼にはある。

 直人は優馬と永遠に一緒にいることが出来ないのを知っていた。
 そんな身の上で、優馬を愛することと愛さないこと、どちらが優しさになるのか、判断つきかねていたのではないだろうか。
 そしてもしそんな風に悩んでいたとすれば、それはもう「愛していた」ということになるのではないか。

 直人は正月に優馬と近所の寺に行き、真剣に手を合わせて何かを祈る。
 直人の願いが何であったか、小説の中では明かされない。

 私には何となく、
「優馬が幸せになりますように」
 であったような気がする。

 直人が自分の何かを願うようには思えない。
 優馬が幸せになりますように。
 自分がいなくなった後も、ずっと。

 これは私の勝手な直人像だ。
 残された謎が多い分、直人は無限通りに解釈出来る。
 正解がはっきりしないから、難しい。良く言えば「自由に演じられる」
 綾野剛は、どんな直人を見せてくれるのだろう。

 綾野さんの声もまた、どこまで追いかけても捕まえられないように聞こえる。
 綾野さんはまるで、自分の声をずっと追いかけているような話し方をする。



※黄色い文字の部分は『小説「怒り」と映画「怒り」吉田修一の世界』に収録されている「エッセイ 映画撮影現場を訪ねて 東京篇」から、緑色の文字の部分は原作の『怒り』から引用しました。

小説怒りと映画怒り - 吉田修一の世界 -
小説怒りと映画怒り - 吉田修一の世界 -

怒り(上) (中公文庫) -
怒り(上) (中公文庫) -
 
posted by 柳屋文芸堂 at 11:03| 読書 | 更新情報をチェックする

2016年08月12日

池袋のレストラン「ラシーヌ」に行ってきました

 池袋の東口にある「ラシーヌ」というお店に行ってきました〜
 ジュンク堂の裏あたりで、ちょっと入り口が分かりにくい。

IMG_0403.JPG

 外側から見るとこんな感じで……

写真.JPG

 階段を降りてゆく。

 地下にこんなお店があったのか! 人がいっぱい! と驚く賑わい。
 まずサラダがすごく美味しかった。
 野菜が新鮮でシャキシャキしていて、珍しい種類(赤いオクラとか)が色々入っているのも面白い。

 メインに選んだ、
「大山鶏1/2羽のロースト 青唐辛子と青トマトのサルサ」
 は、ハラペーニョっぽい青唐辛子とたっぷりのシャンツァイのおかげで、めちゃくちゃエスニック!!

 辛い! 美味しい!! と骨を手で持ってバクバク食べていたら、
「のりは野性を開放したの?」
 とDちゃんに言われた。
 ナイフとフォークなんて使っちゃいられないわよっ

 デザートは、

写真2.JPG

 とうもろこしの……何だっけ。
 ネットで調べれば出てくるだろうと思ってメモしなかったっ お店のページに載ってない!
 とうもろこし味の冷たいケーキみたいなの。
 甘過ぎなくて(とうもろこしの甘さそのままのイメージ)でも食べ応えのある不思議なお菓子だった。

 満腹。

 池袋にこんなお洒落かつ美味なお店があるとは〜
 行けて良かった♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:02| 料理・食べ物 | 更新情報をチェックする

2016年08月09日

映画「シン・ゴジラ」感想

 見てきたよ〜
 期待通り上映前に「怒り」の予告が流れて、大きな画面の直人(綾野剛)にうっとり。
 満足……(いや、何しに来たの?)

 シン・ゴジラ、特技監督(特撮部分担当)の樋口真嗣は大好きなのですが、総監督の庵野秀明に対する思いが複雑過ぎて、見る前は、
「どーしよっかなー」
 という感じでした。
 エヴァの破とQが全然好みじゃなかったんだよね。

 今回の映画もエヴァそのまんまのところが沢山あって、
「この人、本当にもうエヴァから逃れられないんだな」
 と苦笑した。本人だけの責任ではなく、周囲からの期待も含めて。

 でもちゃんと新しい試みや切実な問いかけもあったのでホッとした。
 好きなクリエイターが立ち止まったり後退しているのを見るのは辛いんだ。

 さて、私は特撮、特に街が破壊される映像が病的に好きです。
 電線切られて街が真っ暗になったり、ビーム照射でビルが爆発して崩壊したりするの、快感ですよね……
 ゴジラが暴れまわっている場面を見ている間、ほとんど「性的」と言っても良いくらい興奮していました。

 まだ東京残ってる! 神奈川も千葉もあるし、何なら埼玉まで来ても良い!
 もっともっと壊せゴジラ!!

 不謹慎って思われるかもしれないけど、日常とは価値観が反転して、ふだんやっちゃいけないことをガンガンやれるのが物語の世界じゃないか。
 都市が壊されるのがこんなに気持ち良いということは、文明嫌いなのかな、私……

 人間たちのドラマの方では、市川実日子が演じた環境省自然環境局野生生物課長補佐(Wikipediaの情報コピーなので間違っていたらごめんなさい)の尾頭ヒロミがすっごい可愛くて、
「死ぬなよ! 最後まで残れよ!!」
 って応援しながら見た。
 いかにも理系女子らしいクールさと熱さが素敵でしたね。

 Dちゃんは最初の方に出てきたゴジラ(途中で形態が変わる)が可愛くて、
「これなら最後まで見られる!」
 と思ったらしい。

 私は、
「何これ、ゴジラじゃないじゃん! これとゴジラが戦うの……?」
 と首をひねっていましたが。

 最終的にはちゃんとゴジラらしいゴジラになってくれたので一安心。
 キャストの最後に「野村萬斎」とあって、
「え? どこに出てた?」
 と思ったら、何と! ゴジラの動きを野村萬斎から取っていたらしい(モーションキャプチャー)

 あのどっしりした動きは狂言のものだったのか〜
 変にプカプカしたところが無くて説得力がありましたよね。

 エンディングで有名なゴジラのテーマ曲をたっぷり聴けたのも幸せでした。
 メインのストーリーも実際の事件(福島原発事故とその後の混乱)を省みる内容になっているし、第一作目のゴジラが成し遂げたことを非常に大事にして作られている気がしました。

 見終わった後、パンフレットを買おうとしたら売り切れでがっかり。
 あ〜 読んであーだこーだ言いたかったよう。
 まあ、パンフレットがなくても夫婦であーだこーだ言い続けている訳ですが。

 メイキング映像も見たいな〜
「嬉々としてミニチュアのビルを並べる樋口真嗣」
 とか。特技監督自ら並べたりしないか。

 約1万円の台本付き記録集が9月に発売されるそうですよ……

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ -
ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ -
 
posted by 柳屋文芸堂 at 09:15| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年08月02日

映画「日本で一番悪い奴ら」パンフレット感想

【映画パンフレット】 日本で一番悪い奴ら 監督 白石和彌 キャスト 綾野剛, YOUNG DAIS, 植野行雄, 矢吹春奈, 瀧内公美, 田中隆三, みのすけ, -
【映画パンフレット】 日本で一番悪い奴ら 監督 白石和彌 キャスト 綾野剛, YOUNG DAIS, 植野行雄, 矢吹春奈, 瀧内公美, 田中隆三, みのすけ, -

 すごい読みでのあるパンフだった!
 主演の綾野剛、監督の白石和彌だけでなく、悪い仲間3人組(中村獅童、YOUNG DAIS、植野行雄)、最初の方にしか出てこないピエール瀧へのインタビューまで載っているの!

 植野行雄が綾野剛を刺し殺そうとする場面で、植野がリハーサル通りに出来なくて全員アドリブになった、という話が面白かった。
 植野はそれを「ミスった」と言うのだけど、本当にそれは「間違い」だったのだろうか。

 撮影の間、ずっと役になり切るうちに「その役としての動き」が自然と出てしまっただけで、間違っていたのは安全を優先したリハーサルの動きの方だったのではなかろうか。
 綾野剛は本気で逃げていたらしく、確かに非常に緊迫感のある良い場面だった。
 ケガ人が出なくて何よりでした。

 話の元となった事件で逮捕された稲葉圭昭(綾野剛が演じた諸星のモデル)のコメントも載っている。
 捜査費を捻出するために覚醒剤を密売、って何度読んでも笑っちゃいますね。
 笑い事じゃないんだけど。

 この映画の舞台は昭和の終わりから平成の初めくらいで、その少し昔っぽい雰囲気が嘘臭くなく、画面に説得力があった。
 美術を担当した今村力へのインタビューを読んでその理由が分かった。
 この人はまさに昭和のまっただ中から映画界にいたベテランの方らしくて、細かく書き込まれた設計図やセットを描いたドローイング(というのかな?)が素晴らしい。

 パソコンがなくて黒電話が置いてあるデスク。
 高級クラブの使い込まれたソファーの質感。
 こういう一つ一つの細部を本物のように見せる職人技が、虚構を真実に変えるのだ。
 感動した。

 衣装についてのページもある。
 中村獅童とピエール瀧は昭和の極悪人ファッションがやたらに似合っていて可笑しかった。
 綾野剛はあんまり似合ってなくて、それが身の丈に合わない暮らしをしている役柄をよく表していて、痛々しさ倍増で最高だった。
 似合わない服によって表現出来ることがあるんですね……

 撮影が終了したのは2015年7月6日。 
 映画「怒り」の制作日誌によると、こちらの撮影は2015年8月8日から。
 だいたいひと月くらいで綾野剛は諸星から直人に化けたのか〜

 全然違うタイプのキャラ(諸星→柔道バカの刑事 直人→優しくて病弱な謎の男)なのに、すごいな。
 しかも雪の場面を撮るために、12月に再び諸星に戻ったらしい。

 俳優とスタッフが全力を出して作り上げる映画の世界を堪能出来て「日本で一番悪い奴ら」の土台まで味わえた気がしました。
 もちろんいっぱい収録されている綾野剛の写真も可愛いです♪♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:06| 映画・映像 | 更新情報をチェックする