2017年02月24日

「草間彌生 わが永遠の魂」展感想

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 国立新美術館で開催中の草間彌生展に行ってきました〜

 館内に入ってすぐ、行列が見えた。
「平日なのに並んでる……!!」
 と驚愕したのですが、それはグッズ売り場の会計の列でした。
 展示には並ばずすっと入れてホッ。

 草間彌生本人のコメントが聞けるというので音声ガイドを借りてみた。

 最初の部屋にあった「生命は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時」と題された富士山の絵と、次の体育館みたいに大きな部屋いっぱいに飾られた連作「わが永遠の魂」を見ている間、ずーっと涙ぐんでいた。
 この人が生き抜いたことに、うわーっとなった感じ。

「幼少期から幻覚や幻聴に悩まされ、水玉や網目模様をモティーフとした絵を描き始めました」
(「ごあいさつ」の文章から引用)

 私にも幻覚の症状がある。
 私を攻撃してくるような幻ではないので治療したことはないけれど(これが治ってしまったら生きていけない)そっちの世界に意識が行ってしまうと仕事や家事がおろそかになるので、効率的に生きるためには「余分なもの」と言えるだろう。

 草間の幻覚は草間を苦しめる内容だったのだと思う。
 それを「芸術」という形にして幻覚と戦った。
 彼女が戦いに負けなかった証が、この巨大で色鮮やかな作品群だ。

「心に余分なものが湧いてくる人」
 が全員草間彌生のようになれる訳ではない。
 しかしその「余分」を別の何かにすることで、苦しみを喜びに変えていく方法があるのではないかと思うのだ(私の場合は小説です)

 連作「わが永遠の魂」は一つ一つの作品を細かく見ていくのも楽しい。
 人間の描き方がコミカルで可愛らしく、
「ちびまる子ちゃんに出て来そう」
 と言っている人がいた。確かに。
「わたしは漫画家になりたい」
 というタイトルの作品もあったりする。

 部屋全体を見渡して草間世界を全身で感じると、精神が温泉に浸かるような効果がある。

 ぎゅうぎゅうではないにしろ、平日とは思えないほど来場者数は多い。
 外国からの旅行者も少なくない。
 みな草間彌生に心惹かれてやって来たのだと思うと嬉しくなる。

「あれが好き!」
 と絵を指差しながら語り合う母娘。
「楽しかった!」
 と言い合いながら部屋を出る若い男の子2人。

「これで第一部なんでしょ?」
「信じられない!」
 と感嘆している人たちが。
 うん、見ごたえすごいね。

 次の部屋では子供の頃に描いた絵など初期作品が集められている。
 黒い点々やからみ合う植物など、描こうとしているものは現在と全く変わらない。
 ただ色彩は薄暗く、本当に必要な表現方法を探している状態だったのだろう。

 音声ガイドでは草間が父母への思いを歌にして歌っていて、それが昭和歌謡っぽいメロディーで、そうだよなぁ、これだけポップな作品を作っていても母や伯母たちと同じくらい(昭和はじめの生まれ)なんだよなぁ、と微笑んだ。

 ニューヨークに渡った後の作品は一転、草間彌生らしさが消える。
 アメリカの現代アート展のようだ。
 この時(1960年代)に草間はポップ・アートやミニマル・アートの手法を取り入れたらしい。
 白地に赤の網目を描いた絵画「No.X」はどこか千代紙のような和風の趣きがある。

 細江英公(三島由紀夫の写真集「薔薇刑」を撮影した写真家)によるパフォーマンスの記録(カラースライド)も見ることが出来た。
 力強いパフォーマーというより、パフォーマンスをしないと(経済的にではなく精神的に)生きていけないか弱い少女が写っている気がした。

 日の光が注ぐ明るい展示室に、大きなかぼちゃの立体作品があった。
 音声ガイドによると、草間は実家の畑でかぼちゃに愛着を抱いた。
 悲惨でみじめな子供時代、かぼちゃが心を慰めてくれた。
 かぼちゃに描かれた水玉は、かぼちゃの表面の突起を表しているという。

 草間にとって「水玉」とは何なのだろうか。
 彼女は「水玉を描いたらおしゃれ」と考えて水玉をモティーフにした訳ではないと思う。

 おそらく当たり前のように、世界中に水玉が見えていたのだ。
 彼女が見ている世界をそのまま見ることは出来ない。
 作品=見えているもの、でもないだろう。
 具体的には分からないが、子供時代に水玉は、彼女に「恐怖を与えるもの」として現れたのではないか。

 草間のかぼちゃを形取った作品は、心から生じ心を苦しめる水玉(幻覚)と、心の外側にあり心を慰めてくれる愛らしいものが一体化したものだ。
 これは大きな救いの形であるように感じた。

 彼女は水玉を描くことで水玉と戦い、勝ち続けなければいけない。
 かぼちゃのような愛らしいものたちが、その戦いを支えている。
 水玉も気が付けば愛らしくなり、草間の味方となって戦っている。

 電飾がちりばめられている鏡張りの部屋「生命の輝きに満ちて」に入るのは本当に楽しい体験だった。
 上にも、下にも、横にも、無限に光の粒が広がっている。
 宇宙に似ているが、心の中にある宇宙の方が近い。
 難しいことは考えずに「綺麗〜」とつぶやき幸せな気持ちになる。

 音声ガイドの最後の詩の朗読から一部引用する。

「死が待ちかまえていても構うものか」
「死よもう私に語りかけないで」


 草間彌生は若い頃から何度も自殺未遂を繰り返した。
 老いた先にある「死」以上に、
「死にたい」
 という気持ちが彼女を脅かし続けた。

 死に追いかけられている人間が、死を振り払うために歩んだ道。
 その激しい生。
 希死と老衰という二つの死に迫られた現在の草間彌生が放つ閃光は恐ろしく眩しく、美しく、優しい。

 自分を生み出した宇宙への畏敬の念を表したいと草間は言う。
 あんなにも苦しんだのに、この宇宙や生きることを憎んではいないのだ。

 展示場を出たところにある「オブリタレーションルーム」でチケットを見せると……

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 シールがもらえる。
 これを好きな場所に貼って良いらしい。

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 こんな感じになっている。
 私は思わず床の汚れを隠すように貼ってしまって、
「主婦だ」
 と思った。

 私のように心に「余分なもの」を抱えた人たちが、この展示を見て励まされると良いなと思った。
 自分なりの変換方法(絵、音楽、言葉など)を見つけて、一緒に生き抜いてゆこうよ。
 どこかで私は、あなたの作品を見るかもしれない。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 15:37| 美術 | 更新情報をチェックする

2017年02月18日

読んだ漫画2016(自分用メモ)

1
雲田はるこ
昭和元禄落語心中9
講談社
ついに次巻で完結だって。寂しいなぁ。この漫画ですっかり落語にハマったもんね。この巻に出てくる噺は「芝浜」「元犬」「たちきり」「居残り」「死神」

2
萩尾望都
ポーの一族1
小学館文庫

3
萩尾望都
ポーの一族2
小学館文庫

4
萩尾望都
ポーの一族3
小学館文庫
最初に読んだ時(十年以上前)は暗くて途中でやめちゃったのだけど、「魔女の秘密展」という展示で魔女狩りの詳細を知ったら急に再読したくなり、今回は最後まで一気に読んだ。伝説と実際は違っているのに、人々が伝説だけを信じて怯えて主人公たちを追い詰めるところとか、魔女狩りに似ている。ファンタジーでありながらすごくリアルな描写だったんだなと感心した。「昔がたりと 未知への畏怖が ぼくらの苗床」というエドガーの言葉が好き。

5
北野詠一
てのひらの熱を1
講談社
空手漫画。世津路さんにおすすめされて読んでみた。男の子たちが可愛い。

6
オノ・ナツメ
逃げる男
太田出版
絵の上手さにゾクゾクした。

7
オノ・ナツメ
ACCA13区監察課1
スクウェア・エニックス

8
オノ・ナツメ
ACCA13区監察課2
スクウェア・エニックス

9
オノ・ナツメ
ACCA13区監察課3
スクウェア・エニックス

10
オノ・ナツメ
ACCA13区監察課4
スクウェア・エニックス

11
オノ・ナツメ
ACCA13区監察課5
スクウェア・エニックス
ちゃんとハラハラするのに、ちゃんとのどかで、出てくる食べ物が全部美味そう。オノ・ナツメほんとすごいな。

12
九井諒子
ダンジョン飯3
KADOKAWA
今回もブレずに飛ばしてる! 一番すげー! と思ったのは、寄生虫を食べる話。うえっ 気持ち悪ぅ〜 って思うよね? この寄生虫、クラーケンという巨大なイカ(タコ?)の怪物の体内に住んでいたもので、ちょうど蛇くらいの大きさ。この頭部を銛(もり)で固定し、包丁を差し入れ開きにし、内蔵を取り、人数分に切ってから串を刺し、醤油・みりん・砂糖・酒で作ったタレを付けて焼くと…… 蒲焼きの完成! 香ばしい匂いまでして、メチャクチャ美味しそうになっちゃうんだ。この工程を描いた2ページは淡々としながらも、見事に読者の価値観をひっくり返す。九井さん本当にすごい。次の巻では炎竜(レッドドラゴン)が出てくるのかなー 九井さんは食べ物描写も上手いけど、何と言っても竜が素晴らしい。彼女が満を持して描く竜……! 楽しみだなぁ♪

13
雲田はるこ
昭和元禄落語心中10
講談社
最終巻。もうちょっと膨らませて欲しい部分もあったけど、まあ大団円かな。松田さんが! 死なない! やはりポーの一族……!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:19| 読書 | 更新情報をチェックする

読んだ本2016(自分用メモ)

1
小倉聖子(編)
CINEMA VALERIA vol.1
VALERIA
クストリッツァ監督特集上映のパンフレット的小冊子。アンダーグラウンドを見た時に購入。すごい映画だったな。

2
高野秀行・清水克行
世界の辺境とハードボイルド室町時代
集英社インターナショナル
基本雑談なので話題の流れが散漫ではあるのだけど、のんびり読むにはちょうど良かったし面白かった。丁寧な註が入っているのもありがたく、勉強になった。

3
石渡正志・滝川洋二(編)
発展コラム式 中学理科の教科書 第2分野 生物・地球・宇宙
講談社
ブルーバックス。久々に理科に浸れて楽しかった。

4
大里浩二(他多数)
やさしいレイアウトの教科書
エムディエヌコーポレーション
レイアウトが苦手な理由がよく分かった。見た人を驚かせるか、安心させるか、その度合いを自在にコントロールするのがデザインの世界なんだなと。読みやすい本を作る人は、文章そのものも読みやすいといつも感じていて、それは文章書きにもデザインの要素(重要なものとそうでないものの描写の配分など)があるからなんじゃないかと思っている。またデザイン・レイアウトの本を読んで勉強して、文章書きにも活かしたい。

5
竹宮惠子
少年の名はジルベール
小学館
竹宮惠子が上京し「風と木の詩」を連載出来るようになるまでの自伝。メチャクチャ面白くて一気読み。私にとっても青春の書である「風と木の詩」の作者が、こんなにも自分をごまかさない、責任感あふれる人だったと分かり、嬉しくて涙が出た。

6
高森純一郎
疎遠なる同胞
高森純一郎
ベトナム戦争中のサイゴン(南ベトナムの首都。現在のホーチミン)が舞台。街の喧騒が聞こえてくるような臨場感。報道写真についての話でもあって、真実を写すことになっている写真というものが、取り上げられ方によっていくらでも見る人をだませ、イデオロギーの宣伝に使える、ということが実際の歴史を踏まえて語られており、説得力があった。戦争、政治、そこに含まれる矛盾など、メインの内容は硬派だけど、同時に語られるラブストーリーが練乳入りのコーヒー、というよりコーヒー入りの練乳? ってくらい甘々で楽しかった。写真を一緒に撮る場面とか。ヒロイン・チャウの勝ち気でたくましい性格が読んでいて気持ち良い。

7
原真里
私のドイツ語手帖
国際語学社
小説書きの資料として。ドイツでは電車に覆面検札官がいるという話に驚いた。

8
ことりっぷ編集部(編)
ことりっぷ海外版 ミュンヘン・ロマンティック街道
昭文社
小説書きの資料として。旅行の予定がなくてもガイドブックを見るのは楽しいなぁ。

9
柿本礼子(編)
ヨーロッパのスープ料理
誠文堂新光社
小説書きの資料として。もちろん今後の食卓のためにも。

10
蒼井彩夏
ゆきとねこ*ココロ*
風花の夢
成長途中の二人の恋。好き合っていても上手くいかない時の不安や切なさが伝わってきて良かった。

11
池内紀
ドイツ 町から町へ
中公新書
小説書きの資料として。地味だけど素敵な本だった。この作者の名前「紀」は「おさむ」と読むらしい。

12
田辺秀樹
やさしく歌えるドイツ語のうた
NHK出版
小説書きの資料として。歌詞は素敵なのがあって良かったけど、付属CDの歌がイマイチで、繰り返し聴きたいと思えなかったのが残念……

13
ちーず。
卒業まで、あと少し
ちーず書店
都会に憧れる気持ちってこんな感じなのか〜

14
秋野有紀(他多数)
まいにちドイツ語 2016年4月号
NHK出版
久々のドイツ語。可愛いストーリーで気に入った。これなら続けられそう。

15
高梨來
ほどけない体温
午前三時の音楽
他人に興味がない、と言いつつ他人をものすごく気にする男の子が主人公のBL。他人には理解してもらえない、と絶望しつつ孤独は選ばないので(割とよく大人数で集まってワイワイする場面がある)よりいっそう孤独感を味わうことになる。自分をよりどころにして生きるのを「地べたを歩く」感覚とすれば、彼の毎日はまるで足のつかない水中をずっと泳いでいるような苦しさだ。この子はちゃんとどこかにたどり着けるのだろうかと心配しながら読み進めると、地べたを見つけないうちに恋に落ちてしまう。心身ともに深く愛し合っているのに、自信がないからそこに確かにある愛を素直に受け止められない。共にいる喜びより失う恐怖がまさってしまう。当然相手にも不安は感染し、二人を隔てている何かを埋めようと、ひたすらに愛の言葉と行為を重ねてゆく。一応ハッピーエンドにはなっているけれど、彼らがしっかりと地べたに立てたのかは分からない。ただ、二人の日々がこのまま続けば、いつの間にか地に足がつき、息苦しさや怖さも消えるのかもしれない。一人では生きていけない二人が恋に溺れてゆく甘やかさを存分に楽しんだ。

16
秋山真琴
文学フリマガイドブック2016年春(通算第9号)
文学フリマガイドブック編集委員会
2016年5月の文学フリマで購入。

17
青波零也(他多数)
嘘つきコルニクス【予告篇】
嘘つきコルニクス編集委員会
2016年5月の文学フリマでもらった。

18
並木陽
青い幻燈
銅のケトル社
舞台は19世紀のパリ。「永遠の詩的霊感」を求める詩人と、「今この瞬間」を愛する画家のもとに、愛らしい少女が現れる。冒頭(前口上)の文章が音楽のようにリズムが良くて、ああ、この伴奏は何だろう。ピアノのように打つ音じゃない。アコーディオンのような空気が鳴らす音…… そう考えながらページをめくると、手回し式オルガンが降誕祭の祝歌を奏でる場面に。ああ、オルガンだったのか! かすかに哀愁を含んだ音色に誘われて、気付けば素敵な物語世界に入り込んでいた。並木陽さんは「物語」というものを大きくとらえている印象がある。現代の物語(小説・漫画・映画など)の大半は、ストーリーの起伏とリアリティを重視して作られている。けれども昔話や伝説には謎が投げ出されるだけのものも多くあるし、演劇では舞台を華やかにするためにリアリティを犠牲にすることも少なくない。そういう古今東西の無数の物語の中から、自分の表現したいものに最も合った形を選んでいるのではないか。この「青い幻燈」にはお芝居の雰囲気がある。登場人物たちの行動やセリフは、現実よりも少しキザだ。私はキザ普及推進委員会委員長(自称)だから、読みながらニコニコしてしまう。ゲーテの臨終の言葉をさりげなく冗談のようにつぶやいたりするのが、いかにも19世紀の学生街という感じがする。自分の知識や能力に限りがあることに苦しむ詩人。自分の人生や与えられた世界に満足している画家。どちらの気持ちも痛いほど分かる。この物語は不思議な終わり方をする。結末が幻なのか? それまでの日々の方が幻だったのか? 失われていく我々の生は全て幻のようなものなのか? そんなつまらない質問をしようとすれば、少女は私の唇に人差し指を押し当てるだろう。唇にはラムの風味が残り、少女の面影とともにその香りは永遠に消えない。

19
桜野聖雪
雪よりしろく1
天使奏楽堂
ピアノのレッスンの話が勉強になった。

20
秋野有紀(他多数)
まいにちドイツ語 2016年5月号
NHK出版
介護で忙しくて聞けない日もあったけど、講師の秋野先生と主人公のケイが可愛いので、聞けた日はなごんだ。

21
地球の歩き方編集室(編)
地球の歩き方A16 ベルリンと北ドイツ 2016〜2017年版
ダイヤモンド・ビッグ社
小説書きの資料として。ドイツってけっこう妙な伝説が多いな。ホレおばさんとか。

22
池内紀
ゲーテさんこんばんは
集英社文庫
小説書きの資料として。ゲーテは骨や石や雲の研究など、小説執筆以外にも色んなことをやっていたのだと知った。ゲーテは抽象化を嫌い、自然の持つ形態をそのまま観察することで物を考えた。現代の感覚だとちょっととんちんかんな部分もあるけど、本当は大事だったのに近代以降に切り捨ててしまった、今後見直さなければいけない価値観も含まれている気がした。

23
まるた曜子
常磐木に夕辺を刻む
博物館リュボーフィ
短編集。「群青の道をゆく」に出てくるアセクシャル青年、慎二くんに共感。周囲の人から欲望を押し付けられて毎日戸惑うことばかりのはずなのに、人の心理や行動原理を「学習」してきちんと集団の中で生きているのが偉いなぁ、と。

24
田中洋
企業を高めるブランド戦略
講談社現代新書
小説書きの資料として。サークル活動に当てはめてみると、売れているところはちゃんと出来ているんだよね。

25
秋野有紀(他多数)
まいにちドイツ語 2016年6月号
NHK出版
今月は全部聞けたぞ!

26
静岡NOVELS
静岡NOVELS 第一作品集
静岡NOVELS
静岡文学マルシェでもらった。死がテーマだったのかな?

27
高梨來
ジェミニとほうき星
午前三時の音楽
主人公の海吏くんが双子の姉の祈吏ちゃんへの恋で悩むのは、近親相姦というよりも、あたたかく安全な巣から飛び立つ雛の苦しみであるように感じた。何があっても味方でいてくれる、家族。それはもちろん大切で必要なものだけれど、生きていくためには、時に攻撃してくる者も現れる、危険な「外の世界」に出て行かないといけない。外の世界にだって味方になってくれる人がいる。無理やり巣立ちをするように留学したロンドンで出会う、マーティン。けれども同性であるがゆえに、彼は愛し愛されることをためらう。「君は寂しいだけなんだよ。そのくらい知ってるよ、そんなの全部分かって君に近づいたんだ。軽蔑するだろ?」このセリフ、切なくて本当に良い。海吏くんとマーティンがキスをしたり体を触りあったりするシーンがとても優しく素敵で、舞台がイギリスであることもあり、映画「モーリス」を思い出した。BLは、やるのも良いが、やらないのも良い! 海吏くんは最終的に、祈吏ちゃんとの適切な距離を見つける。「愛おしいというその気持ちの在り方を教えてくれたのが祈吏だった」家族愛も、異性愛も、同性愛も「自分ではない誰かを大事にする」という意味で基本は一緒だ。海吏くんと祈吏ちゃんはこれからもきっと(それぞれが別の家族を作ったとしても)支え合って生きていけるし、沢山の人に愛を分けてあげられる。そんな気がした。

28
高梨來
庫内灯⇄午前三時の音楽
午前三時の音楽
俳句を元にした短編小説集。「ハッピーバースデー」が良かった。

29
高梨來
つめたくしないで
午前三時の音楽
周くんの愛情表現のささやかさよ。それをちゃんと分かってあげる忍くんエラい。可愛い。

30
吉田修一
怒り(上巻)
中公文庫

31
吉田修一
怒り(下巻)
中公文庫
ゲイカップルである優馬と直人が出てくる場面だけを拾い読みし、脳内で「優馬→妻夫木聡 直人→綾野剛」で映像化する、というかなり身勝手なやり方で楽しんだ。何となく拾ってみたら家に居着いて全然帰らない綾野剛。本質的な部分ですごく優しく、大事なことを一切教えてくれない綾野剛。無自覚に、気が狂いそうなくらい愛してしまった後でふっといなくなる綾野剛。最高だよ…… ほとんど猫の域だ。優馬には余命三ヶ月で入院している母親がいて、ちょうど伯母の病院に行った帰りだったこともあり、親しみを感じながら読めた。本当は推理小説らしいのだけど、私の中では不器用であたたかい恋愛小説として完結。作者ごめん。

32
李相日(他多数)
映画「怒り」パンフレット
東宝(株)映像事業部
直人の写真可愛い…… 公開前後に発表された出演者同士の対談やインタビューも面白かったから、まとめて本にして欲しいなぁ。

33
吉田修一(他多数)
小説「怒り」と映画「怒り」
中央公論新社
役者さんが役に入る時の話が興味深かった。自我や欲が消える瞬間。

34
又吉直樹
第2図書係補佐
幻冬舎よしもと文庫
こういう書き方もありなんだなぁ、と勉強になった。本にしろ映画にしろ、その内容「だけ」を紹介することにこだわらなくても良いんだ。

35
うさうらら
泣草図譜 やまばと編
花うさぎ
家でグダグダしてる叔父さん最高……! ゴジラが出てくる部分が特に好きだ。

36
オカワダアキナ
ぎょくおん
ザネリ
綾野剛主演で映画化しないかな。クラウドファンディングを使うべきか。アランが好きで、カルヴァドスの香りを嗅いだ時に思い出したりした。果物と酒の匂いのする男。

37
オカワダアキナ
水ギョーザとの交接
ザネリ
物語世界の中にいる間とにかく幸せで、今のところ彼女の作品で一番好きかも。どれも面白いけど。

38
オカワダアキナ
猫を飼う
ザネリ
可愛らしい恋愛(未満?)小説。マダム三毛子の文章でウケた。表紙も綺麗。

39
円城塔(他多数)
映画「屍者の帝国」パンフレット
東宝(株)映像事業部
冒頭の円城塔の言葉が切ない。「伊藤計劃ならどう考えるかではなく、伊藤計劃の書いたものを通じて得たものから、自分ならどう考えることができるのかが問題だ」

40
九州方言研究会(編)
これが九州方言の底力!
大修館書店
熊本の言葉を使えるようになりたいんだけど、難しい…… 方言には古語や古い文法が残っているそうで「現代文より古文の方が日常会話に近かった」と言っていた島根の子の話はあながち冗談でもなかったんだなと。

41
綾野剛
綾野剛 2009▶︎2013▶︎
幻冬舎
写真・インタビュー集。役を演じることは小説書きに似ている点が多くて、勉強になった。自分ではない誰かになるために自分の記憶が邪魔になること。まずは観てもらわないと良いとも悪いとも評価されないこと。芝居を華道にたとえたり、表現への感覚が鋭い。またこういう本を作ってくれないかなぁ。2013年以降の彼の考えもまとめて読みたい。

42
新井敏記(編集発行人)
コヨーテ No.58 Spring 2016 安西水丸 おもしろ美術一年生
スイッチ・パブリッシング
雑誌なのだけど、水丸さんの特集が誌面のほとんどを占めていて「特集と言いつつちょっとしか載ってないじゃん!」というありがちな不満を抱かずに済み好感が持てた。こういう雑誌ばかりならどんどん買うんだけどなぁ。「オリジナリティは出そうと思って出るものではなく、にじみ出るくらいがちょうどいい」「大変だなぁって思わせる絵は良くない」「コンプレックスを持つと三千歩くらい後退する」等々水丸さんの教えは文章書きにも当てはまってありがたい。

43
Martin B. Stanzeleit
Eine kleine Kaffeepause
NHK出版
ドイツ語では「暑い!」「寒い!」と感嘆する時も一つの単語ではなく文章にして言わなければいけない、という話が興味深かった。日本の街にあふれる注意書きや警告アナウンスの話も面白かった。確かに外国から帰ってくると日本の過保護っぷりに驚くよね。

44
高梨來
春、間近ーほどけない体温2ー
午前三時の音楽
ついついエッチなとこばかり読んでしまうな。

45
村上春樹
パン屋再襲撃
文春文庫
表題作最高! 結婚って本当にこんな感じだよね。

46
服部匠
君と食べ物があればいい
またまたご冗談を!
白菜のグラタンを作りたくなった。白菜を入れたことはなかったな。野菜の甘さが出て美味しそう。裕也くんがコントラバス奏者なのが嬉しい。美味しい食べ物とBLという組み合わせは幸せが保証されている感じがする。

47
あずみ
消滅可能性私達
冬青
土地と出会い、美しいもの・醜いものを見て、愛し・疑い・憎み、別れる。土地の物語というのは、一種の恋愛小説なのかもしれない。

48
くまっこ
夜に映ゆたう蟲
象印社
「ほしのこ」の「恨んでいるんじゃないの?」で涙がじわーっと。「夜に映ゆたう蟲」のイルミネーションが光の粒になって花火が上がる場面が綺麗。「ネジたち」も好き。

49
氷砂糖
架空レポ集 月のワインの試飲会
cage
面白かった! 日常の中のちょっとした嬉しさが沢山つまっていて、不思議な話なのに、楽しいことが自分の身に起こったように感じられた。「ちょっといろいろあったデザインチャイルド」にウケた。魔女のシチューを常温に冷ます理由とか、細かい部分がリアルですごく良い。奥付のcageの下にwe must Control our AGgressive Emotionsとあってそういう意味だったのかと驚く。単純に鳥籠だと思っていた。

50
秋野有紀(他多数)
まいにちドイツ語 2016年7月号
NHK出版
割と聴けた。

51
秋野有紀(他多数)
まいにちドイツ語 2016年8月号
NHK出版
けっこうサボってしまった。

52
綾野剛(他多数)
映画「日本で一番悪い奴ら」パンフレット
東映(株)事業推進部
植野行雄が綾野剛を刺しに行くシーンでミスった話が興味深い。私はあれこそ正解だったように思う。今村力の美術、宮本まさ江の衣装の話など読み出のある良いパンフレットだった。最近、映画の裏方の仕事に強く惹かれる。

53
小泉哉女(責任編集)
Text-Revolutions4公式アンソロジー「和」
Text-Revolutions準備会
わたりさえこさんの「狂わぬ時計」が素晴らしかった。私のハニワも好評で嬉しかった。

54
ヒビキケイ
戯曲作成アシスタント
シュガーリィ珈琲
舞台上で実現可能でなければいけない、という戯曲の制限は想像以上に大きいのだと思った。小説の自由さを感じる。自分で書くのはなかなか難しそうだけど、いつか戯曲向きのアイデアが浮かんだら挑戦してみたい。

55
くまっこ
クマの豆本製造ライン
象印社
「練馬の国のアリス」の隠し帯が面白い。コピー本を作ることになったら読み直して参考にしたい。

56
くまっこ
クマの豆本製造ライン2
象印社
くまっこさんの本はこんな風に作られているんだ〜! と幸せな気持ちで読んだ。

57
えも オカワダアキナ
すよすよおまた
えも オカワダアキナ
「隣人を愛したい」「ドリフのビデオ」「灰色の街」が特に好き。あとがきの、物語に倦んでしまうという話にホッとした。これは確かにそういう時にも読める本だ。

58
小川未明
小川未明童話集
新潮文庫
「金の輪」が大好き。こういうBLが書きたいんだよ……!

59
なな
ホクリクマンダラ
北陸アンソロジー
花うさぎ「海柘榴」の「ひがんて どこ きっと 海の向こうだよ」でゾクゥゥゥッとした。他にも好きな作品がいっぱいあって満足度の高いアンソロジーだった。

60
村上春樹 大橋歩
村上ラヂオ3 サラダ好きのライオン
新潮文庫
やっぱり村上春樹のエッセイは良いなぁ。開くとうっかり読み直しちゃって大変。

61
吉田修一
作家と一日
木楽舎
吉田修一が描く独特の人恋しさってあるよなと思う。村上春樹の自己完結している孤独と対比させると面白い。ホーミーを歌い出す編集者の話が好きだ。小説連載で忙しそうだけどまたエッセイ集も出して欲しい。

62
添嶋譲
再録集「僕らがいた」
空想少年はテキストデータの夢を見るか?
添嶋さんのファンになるきっかけになった「ずっとすきだった」が入っていて嬉しかった。男子たちの空気がしっかり感じられるBL。

63
添嶋譲
午前零時のカンパネルラ
空想少年はテキストデータの夢を見るか?
「あ あ きこえますか」で始まり、「またね」で終わる、孤独についての本。「大半の女子がする 大半の男子はしない 僕のすることは 気持ち悪いのだそうです」

64
氷砂糖
lesson
cage
玉に共感した。私もただ生きているだけでは生きていけず、自分が美しいと思うものにたくさん触れていないとおかしくなってしまうから。「森の魔女」が特に悲しくて印象に残った。メインの玉を育てる話も好きだ。

65
伊藤計劃(他多数)
映画「ハーモニー」パンフレット
東宝(株)映像事業部
なかむらたかし監督のトァン・ミァハ・キアンの関係のとらえ方がもう少し深ければ、また違った結末になっていたのかなぁと。まああれはあれで嫌いじゃないのだけど、原作を知っている映画を見る場合、原作を超えて欲しいのだ。でもそんな映画見たことない。

66
オカワダアキナ
晩年のままごと
ザネリ
この小説のメインの舞台は東京都足立区花畑。「川の向こうにはひよこまんじゅうの工場と、やくざの組事務所が並んでいます。その奥では火葬場が煙突を屹立させて、まいにち煙を吐いています」谷塚の火葬場だよ……! 死体がガンガン焼かれているすぐ横でひよこがどんどん焼かれていて、悲しみに浸り切れない、泣くつもりだったのにうっかりちょっと笑ってしまう、そんな奇妙な場所。この小説で最も特徴的なのは語り口。たとえばこんな。「いつも人ごみのなかでキリエの姿を求めた。街角、どこにいたってキリエを探していた。というのはさすがに大げさです。ときどき思い出したくらいです」主人公のカタリナがキリエに会いたいと思っているのは真実なのだけれど、「どこにいたってキリエを探していた」と言ってしまった後で「本当にそうだろうか。これは単なる言葉の勢いで、実際の気持ちとはズレているのではないか」と「ときどき思い出したくらい」に修正する。この迷いを積極的に残した文体によって、カタリナの盛り上がり切れない、満たされない気持ちが、ごまかしなしに伝わってくる。カタリナが誰かと対立し、苦悩し、何かを解決する、なんてことは不可能だ。対立し切れないし、苦悩し切れないし、解決し切れない。物語はドラマチックであることを放棄する。しかし物語的でない物語こそが、本当の人生なのではないか。言葉には「よくある流れ」があり、物語には「よくある展開」があるので、ややもすれば言葉や物語は登場人物の感情そっちのけで勝手に進んでいってしまう。それを避けていくのは書き手にとって大変なことだ。この物語は一見ゴチャッとして奇妙だけれど、人の心の動きを描くことに対して非常に誠実だと感じた。何かを言い切ってしまうことの不誠実さを思う。言い切るたびに少しずつ嘘をついていることに気付く。それでも何かを言わないと、前に進めないのもまた本当、だ。

67
轂冴凪
ひとさじの幻想曲
紡ぎ手たちの物語
「あの夏、私は少年だった。」が好き。

68
轂冴凪
ひとさじの幻想曲II
紡ぎ手たちの物語
「地球の香り」が好き。

69
池田奈穂(他多数)
PAPERS 00/boy
+ING PRESS PUBLISHERS
池田奈穂さんのベルリン旅行記があったのが嬉しかった。

70
オカワダアキナ
着火の快感
ザネリ
裏表紙の漫画がすごい。

71
Text-Revolutions準備会
第4回 Text-Revolutions
Text-Revolutions準備会
会場でもらったパンフレット。あまぶんさんとの対談が面白かった。イベントの主催者さんたちは、当日の会場を盛り上げるような要望は歓迎で、開催前後の作業が煩雑になるような要求は出来れば控えて欲しいのかな、と思った。

72
高梨來
No signal
午前三時の音楽
(周は俺の身体が好き。たぶんそれ以外はいらない)というのが切ない。

73
鹿紙路(文責)
テキレボ4 百合マップ
鹿紙路
清森夏子さん(サークル名:イノセントフラワァ)の「ガラ」に興味を持った。

74
きと
少年
be*be
この背表紙をずっと見ていたせいで自分の小説に少年好きのおじさんが出てきた……

75
綾野剛
RUN GO RUN 裸にしたい男 プレミアム・エディション ブックレット
NHKエンタープライズ
ドキュメンタリー番組のDVDに付いていた冊子。映像も写真も可愛い系綾野剛満載でたまら〜ん! 新しいことに挑戦する時の感覚を「知らない自分が古い自分を食っていく」と表現したり、自分の内面の変化を自分の言葉できちんと説明するところが好きだ。役者は毎日嘘をつくのが仕事だから、その瞬間に置かれた状況の中で「本当のこと」しか言えない。物語を作る人間の在り方に似ているな、と思う。

76
らし
ビン詰め小説 ヨンコと四個のビン
おとといあさって
本、というか四個のビンが入った小箱。物語の中で登場人物がビンを開けるたび、読者も実際にビンを開けていくことになる。ワクワクしながら読み進めた。

77
らし
ハミングバード(GIANT)
おとといあさって
自分と違うものへの憧れ。失って初めて気付く本当に大切だったもの。悲しく切ない話だ。

78
並木陽
ノーサンブリア物語 上巻
銅のケトル社
自らの野心のために強くなろうとするアクハと、人々を魅了する優しい心によって危機を脱するエドウィン。対照的な姉弟の生き方を追ううちに、ブリタニアの歴史が動く。下巻が楽しみ。

79
並木陽
斜陽の国のルスダン
銅のケトル社
一番「あー!」と思ったのはギオルギ王がモンゴルというものをうまくとらえられない部分。キリスト教文化圏とイスラム教文化圏の対立という視点で世界情勢を見ていたために、東方からやってきたモンゴルが何なのか理解出来ない。「男と女」「右と左」のように二項対立で物事を考えていると、その二項しか存在しないように錯覚してしまって、正確に事象をとらえる妨げになるのではないか。既存の二項対立について再考する際は、そもそも二項ではない可能性、未知の概念、まだ言語化されてない何かについても思いを馳せた方が良い……という感想はつまらないかなと思ってブログでは「愛する妻を守るために、帝王の寵愛を受け入れた美しい王子」への愛を語った。最初に読み終えた時「ジャラルッディーン×ディミトリの薄い本ください」と真っ先に思ったので。かつて敵であったにもかかわらず、ディミトリはジャラルッディーンを憎まない。自分にはない強さや統率力に憧れ、彼の立場で許される限りの誠意を尽くす。ディミトリは身を落とす原因となったルスダンのことも恨まない。最後には伝書鳩を使ってホラズム側の情報をルスダンに伝え、自害する。ディミトリにも野心はあるが、それはルスダンと、彼女が愛した都を守るための優しさから生じたもの。複雑な事情を抱えた国で、複雑な境遇に置かれた王子は、自分の良心に従って精一杯生きた。彼の利己心からではない奮闘が、この物語を読みやすく、あたたかいものにしている。現在のグルジアがどうなっているかも知らないのに、私は13世紀のトビリシの王宮のリラの花の香りをかいだ。どこかファンタジー小説にも似た、決して辿り着けない場所への郷愁。勇ましい戦史を元にしていても、歴史小説は甘みのある切なさも表現出来る。そのことを教えてくれた、ルスダン、ディミトリ、ジャラルッディーン、そして彼らをこの上なく魅力的に描いてくれた並木陽さんに感謝する。

80
凪野基
ヴェイパートレイル
灰青
「雲曳きの配達人」の終わり、ドラマチックな展開になるのかな? と思いきやメグはクールに帰ろうとして、ルイがあ、う、となるところにクスッとなった。一番好きなのは「ピートの葬送」機械っぽさと人間っぽさの混ぜ具合が巧いなぁと。当たり前のこととして人間の心を持っているのではなく、業務のために本当の優しさを機能として獲得している感じが。AIものはいつか挑戦してみたいな……

81
杉背よい 柳田のり子 匹津なのり 西乃まりも
ヒトガタリ
ひとがたり巫女子会
本文レイアウト作業の時に三回ずつくらい読んだ。よいさんが「、」の後に改行したこと(詩人らしい原稿だと思った。そのままにした)なのりさんの文章チェック中「誤字かな」と思って辞書を引くと全部古語で「本物の文系すげー!」とゾクゾクしたこと。まりもさんから何度も訂正の連絡が来て、その数の多さに笑ってしまったこと。やってる時は大変だったけど、すごく良い思い出。どの作品も奇跡的に綾野剛読み出来るんだよね。特に玉蓉を演じているところを想像すると興奮するなぁ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:36| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年02月17日

並木陽「斜陽の国のルスダン」感想

斜陽の国のルスダン -
斜陽の国のルスダン -
↑Amazonでも購入出来ます。表紙も素晴らしい。


 これは本当に濃密な物語で、様々な角度から読み解くことが出来る分、どこに重点を置いて感想を書いたら良いか分からず数ヶ月間ウンウンうなっていたのですが、ようやく決めました。

「愛する妻を守るために、帝王の寵愛を受け入れた美しい王子」

 について書きます!

 最初に読み終えた時、
「ジャラルッディーン×ディミトリの薄い本ください」
 って真っ先に思ったんだよ。
 邪心丸出しで恥ずかしくても、自分の第一印象は大事にしよう。

 物語の舞台は13世紀のグルジア。
 キリスト教国でありながらローマからは遠く離れ、強大なイスラム文化圏と境を接している。
 女王ルスダンの夫となったのはイスラム教国ルーム・セルジュークの王子、ディミトリ。

 チンギス・ハンが率いるモンゴルや、イスラム教国であるホラズムの攻撃を受け、グルジアはかつての栄光を失いつつあった。
 ホラズムに機密を漏らしているのではないかとディミトリを疑い続ける廷臣たち。
 何を言われようとディミトリをかばい続けるルスダン。
 苦難の中にあってもルスダンとディミトリは深く愛し合っていた、はずだった。

 ディミトリはルスダンの命を守るため、ホラズムとの和平の道を探っていた。
 ディミトリと間者の会話を聞いてしまったルスダンは裏切られたと思い込み、ディミトリを幽閉する。

 ホラズムの帝王ジャラルッディーンはグルジアの王都トビリシ攻略の際、ディミトリに一目惚れする(※ここから腐女子目線です)
 その場面が本当に素敵なので引用しますね!

「神よ、讃えられてあれ」
 ジャラルッディーンは感動したように言った。
「貴公こそ、まさに自然が造りたもうた天然の芸術品だ。ルーム・セルジュークの王子、エルズルム公の第四子よ。美貌の噂はかねがね聞いていたが、今、目の前にいる貴公の姿は想像を超えている」
 帝王(スルタン)は手ずからディミトリを助け起こすと、彼の手を取って言った。
「いろいろと苦労されたようだが、もう何も案ずることは無いぞ。美しい王子、ジャラルッディーンの名の下に貴公に平安(アマン)を約束しよう」


 アラブBL? 石油王?
「極上……」
 ってつぶやいて生唾飲み込んでしまうよ。

 あとがきによると、ディミトリがジャラルッディーンの寵愛を受けたのは史実らしく、

「ジャラルッディーンはこの王子を自ら割礼を施した息子ででもあるかのように深く愛したということです」

 意味深ですね!

 かつて敵であったにもかかわらず、ディミトリはジャラルッディーンを憎まない。
 自分にはない強さや統率力に憧れ、彼の立場で許される限りの誠意を尽くす。

 ディミトリは身を落とす原因となったルスダンのことも恨まない。
 最後には伝書鳩を使ってホラズム側の情報をルスダンに伝え、自害する。

 私は以前、歴史小説に苦手意識を持っていた。
 それはおそらく、そういった話のメインキャラになりがちな、
「野心に燃える男たち」
 にうまく共感出来ないせいだ。

 ディミトリにも野心はあるが、それはルスダンと、彼女が愛した都を守るための優しさから生じたもの。
 複雑な事情を抱えた国で、複雑な境遇に置かれた王子は、自分の良心に従って精一杯生きた。
 彼の利己心からではない奮闘が、この物語を読みやすく、あたたかいものにしている。

 現在のグルジアがどうなっているかも知らないのに、私は13世紀のトビリシの王宮のリラの花の香りをかいだ。
 どこかファンタジー小説にも似た、決して辿り着けない場所への郷愁。

 勇ましい戦史を元にしていても、歴史小説は甘みのある切なさも表現出来る。
 そのことを教えてくれた、ルスダン、ディミトリ、ジャラルッディーン、そして彼らをこの上なく魅力的に描いてくれた並木陽さんに感謝します。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 12:02| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年02月14日

「LOVE〜写真家レスリー・キーの世界」感想

 下の記事に書いたような部分があって、撮影や編集の工夫でもう少し深みのある作品に出来たんじゃないかと残念に感じた。
 映画ではなくどこかで放送された番組だったみたいだから、仕方ないのかなぁ。

 若い頃に働いていたシンガポールの日系企業で日本文化に憧れ、山口小夜子に見出されたというレスリー・キーの経歴は面白いと思った。
 またどこかで写真を見る機会もあるかもしれないから、名前を覚えておこう。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 15:41| 映画・映像 | 更新情報をチェックする