2019年09月22日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その5

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その4の続き)

「僕も山頂ムリだ。膝が笑ってる」
 アブをまくために速度を上げたのが足の負担になったらしく、太ももが震えている。
「助けてくれてありがとう」
「いやいや」

 しかしアブがこんなにしつこく一人を狙ってくるものとは知らなかった。後で調べてみたところ、アブは温度が高く、二酸化炭素を多く排出するものに近付く習性があるという。他の登山者よりオーバーヒートして、ハァハァしっぱなしだったのが、狙われた原因かもしれない。
 アブ除けにはハッカ油が効くという。次に山へ入る時には忘れないようにしよう。



 アブ・いも虫事件を抜きにしても、登りは本当に辛かった。ヨレヨレのフラフラになってどうにか5合目を過ぎ、行者谷別れで今度は急な階段を降りてゆくことになる。ルパン三世のように駆け抜けたらラクそうに見えるが、実際にやったら大ケガだ。



 転落しないよう慎重に進む。息は登りほど苦しくない。鳥や虫の声を楽しむ余裕も出てきた。
 ふと視界が開けた。白い石が敷き詰められた、木のない場所に出た。河原に似ているが、川はないようだ。



 ここでホテルにお願いした登山弁当を食べることにした。時刻は1:00過ぎ。3時間ほど歩いていたのか。

「あっ、ほら!」
「大きい!!」

 黒くて太いトンボが飛び回っている。おそらくオニヤンマだろう。これほど力強く美しいトンボを見るのは初めてだ。
「アブをやっつけてくれないだろうか……」

 白い石の谷を抜けると、またひたすら下り階段が続く。1時間ほど歩いたところで、寺か神社のような古い建物が見えた。



(鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その6に続く予定)
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2019年09月21日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その4

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その3の続き)

2019年8月9日
 早起きしたので近所を散歩してみたら、少し坂道を登るだけで息が切れる。こんな状態で山登りなんて出来るのかしらと不安になった。

 朝食の時にホテルの人が登山弁当を持ってきてくれた。保冷剤付き。ありがたいサービスだ。
 10:00頃、フロントに登山届けを提出し、出発。大山寺の門前町を5分ほど歩いて、登山口に着いた。
 登山客は他にも大勢いる。丸太で作られた階段を登り続けなければならず、一段一段がけっこう急だ。「山歩き」ではなく「登山」なのだと思い知る。



 案の定すぐ息が苦しくなった。
「山頂まで行くのは難しそうだね」
 とDちゃんに言われた。

「行者谷別れで行者コースに進んでも良い?」
「良いよ」
「ごめんね」

 山頂の手前で下山し始めるルートである。それでも行者谷別れのある5合目の先までは登り切らなければいけない。故障を起こしたのにどうしても棄権出来ないマラソン選手のような速度で、一歩一歩上がっていった。日頃の運動不足に加え、湿度が恐ろしく高く、汗が全く蒸発しない。体に熱が籠もり、全身びしょ濡れの状態で動くのはものすごく辛かった。山の神よ、ひ弱な私を、どうか無事に……

「ギャーッ!」
 大きなアブがズボンのひざあたりにくっついている。ハチとハエのあいの子みたいな見た目の、ハチやハエよりデカい昆虫だ。
 刺されたら大変なので、攻撃していると思われないよう、そっとズボンの布を振るってみる。一応飛び立つものの、ブーン、ブーンと私の周りを回ってまた戻ってくる。何度やってもその繰り返し。全然離れてくれない。

「ふぇぇぇん、嫌だよう〜」
 独り言のつもりだったのに、山じゅうに響く大声だったらしく、先に進んでいたDちゃんが下りて来てくれた。
「パーカーを着た方が良いんじゃない?」
 あまりの暑さに脱いで仕舞っていたパーカーを取り出そうと、リュックを背中から下ろす。
「うわぁぁ、こっちにはいも虫がぁぁ!」

 黄みどり色の可愛いやつがリュックの上を元気よく歩いている。どこかから落ちてきたのだろう。リュックを木の葉に近付けてみるが、なかなかそちらに移ってくれない。いも虫は歩き続け、アブは私の周りをブーンブーンと回り続け、いやなんで君たちそんなに私から離れようとしないの……

 別の木の葉にリュックを近付けたところ、好みの葉だったのかようやくいも虫は移動してくれた。しかしアブは場所を変えてもずーっと私だけを狙い続けている。なんで! 他の登山者たちがどんどん私を追い抜かしてゆくのに、どうしてそちらには行かないの……
「ふぇぇぇん、怖いよう、嫌だよう! ふぇぇぇん」

 半泣きの私を見かねてDちゃんがアブを地図ではたき、アブの注意を自分の方に向けさせ、だだだっと山を登っていった。どうやらアブはDちゃんについていったようで、私の周りからはいなくなった。

 ゆっくりゆっくり登ってゆき、しばらく経った後にDちゃんと合流した。アブに刺されなかったと分かりホッとした。

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その5に続く)
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2019年09月20日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その3

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その2の続き)

 ガンバリウスでタクシーを呼んでもらい、ホテル大山しろがねへ。チェックインの時、登山に持ってゆくお弁当を頼めるか尋ねたところ、大丈夫ですとの答え。前日までなら注文を受けてくれるらしい(当日にお願いして買うことは出来ない)

 事前予約なしでも星空観察会に参加出来ると分かり、慌てて部屋に荷物を置いて集合場所へ向かった。Dちゃんはけっこう酔っていたので部屋で休むことにし、私一人での参加。親子連れなど20人ほどが集まった。

 まず星を天井に映す装置を使い、ホテルの入り口を簡易プラネタリウムにして、お兄さんが今夜見える星座を教えてくれた。その後みんなでマイクロバスに乗り込み、近くのスキー場へ移動。木がないので空を広々見渡せる。しかし半月ながら月の光がものすごく強くて、北斗七星のような有名なものは判別できたものの、暗めの星や天の川は見えなかった。天体観測をするには場所だけでなく、新月の日を選ぶのが大事だと学んだ。

「この月の明るさを逆手に取って、月を見ちゃいましょう」
 お兄さんはそう言いながら、月の表面に焦点を合わせた望遠鏡を覗かせてくれた。これまでに写真や映像で何度も見た通りにクレーターがいっぱいあって、何だか冗談みたいだった。土星にも「土星のイラスト」のような輪がある。
「望遠鏡に土星のシールを貼っている訳じゃないですからね〜」

 解説役のお兄さんを含め、ついてきてくれたホテルの人たちはみな親切だった。寝転がって星を眺められるように、敷物が配られた。横になり、体の力を抜いて、夜空をぼんやり見つめ続ける。シンプルで、心の静まる素敵な時間だった。

 お兄さんは地平線のあたりに散らばる無数の光を指さし、
「あれは街のあかりではなく漁火(いさりび)です。今は一生懸命イカを獲ってます」
 えー!! あれ船なの?! 私にとっては星より珍しく、驚いた。

 星と漁火を充分に堪能し、1時間ほどでホテルに戻った。
 部屋は和風で古めかしく、ベッドではなく布団で寝る。トイレは新しいものに改装してあり快適だった。

 テレビもネットも見ないで早めに寝た。
 おやすみなさい。

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その4に続く)
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2019年09月19日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その2

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その1の続き)

 ガンバリウスは地ビール「大山Gビール」直営のレストランだ。DちゃんはGビールセットを頼み、ヴァイツェン、ピルスナー、ペールエール、スタウト、限定ビール(ベルジャンブラウンを選択)が100mlずつやって来た。小さなグラスが五つ並べられ、可愛い。


↑ヴァイツェンだけ飲んだ後ですね……

 ソーセージ盛り合わせ、あじのエスカベッシュ、カニクリームコロッケ、ハタハタの唐揚げを二人で食べた。



 Dちゃんのビールを少しいただく。あじやハタハタとスタウトがよく合う! スタウトはこくのある黒いビールで、油っこいものとの相性が良いのだと思う。中華料理を食べながら飲むプーアル茶のように美味い。ヴァイツェンも優しい味だった。

 D「追加の注文で、カニクリームコロッケを」
店員「カニクリームコロッケ? 先ほども……」
 D「ええ、だから追加で」
店員「そんなにも?!」
 私「カニ度が高かったんでしょ?(←Dちゃんが全部食べてしまったので味を知らない)」
店員「作った人に特長を訊いたら『カニがいっぱい入ってる。とにかくカニがいっぱい入ってる』しか言わないんですよ」
 私「関東のカニクリームコロッケはそんなにカニ入ってないんで、ここならではですね!」

 鬼太郎の「建国!?魔猫の大鳥取帝国」という話にも、境港のカニが出てきた。さっきのタクシーの運転手さんもこの店員さんも嬉しそうに地元の話をしてくれて、さすが大鳥取帝国。

 追加で来たカニクリームコロッケを食べてみた。
「カニクリームコロッケというより、カニコロッケだ!!」
 ちゃんとクリーミーなのだけど、カニ味が強かったので。関東のカニクリームコロッケは、カニ風味クリームコロッケなのではないか……

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その3に続く)
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鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その1

2019年8月8日
「キャー!」
「怖い〜!!」
 周りは子供だらけで、離陸の瞬間、いっせいに叫び声を上げた。Dちゃん(ダンナ)は秋になってから夏休みを取ることが多いので、お盆近くに国内線の飛行機に乗るのは初めてかもしれない。こんなに賑やかになるのか。

 高度が上がるにつれ、カバンに入れて持ってきた万年筆が気になり始めた。気圧の変化で耳がポコポコしている、つまり万年筆の中の空気も膨張し、インクが吹き出しているかもしれない。ベルト着用サインが消えたので、おそるおそるキャップを開けると、全く汚れていない、いつも通りのペン先が出てきた。セーラー万年筆バンザイ! さっそくノートを開いてこの旅行記のためのメモを取り始めた。

 飛行機が向かう先は、鳥取県にある米子鬼太郎空港。もともと水木しげるの大ファンで、現在放送中のアニメ「ゲゲゲの鬼太郎(第6期)」にもハマったため、二度目の聖地巡礼である。前回はまだ雪の残る春先に、大山(だいせん)と境港を駆け足で巡ったが、今回は大山で夏山登山をする予定だ。

 羽田から米子までは1時間20分。あっという間に着いた。米子鬼太郎空港はその名の通り、あちこちに鬼太郎たちのイラストやオブジェが飾られている。しかしバスの出発時刻が迫っており、あまり写真は撮れなかった。


↑荷物を受け取る所の目玉おやじだけ撮った。スーツケースと一緒にずっとぐるぐる回っている。

 米子鬼太郎空港発、米子駅行きのバスに乗る。空港出口の目の前に乗り場があって便利だった。このバスも鬼太郎キャラでラッピングされていて可愛い。わーわーと慌てて乗ってしまい、外側から写真を撮れなかったため、内側からぬりかべの目だけを撮影した。



 鳥取に行けば避暑になるのではと期待していたが、空港周辺の気温は東京とそれほど変わらず、暑い。山に登れば少しは涼しくなるだろうか……

 米子駅からはタクシー。運転手さんは大山にまつわる神話を話してくれた。高天原(たかまがはら)、天照大神(あまてらすおおみかみ)なんて単語が次々出てくる。出雲大社も近いし、このあたりは古事記に描かれた世界なのだなぁ、としみじみ思った。

 市街地を抜けると風景が開け、眼前に大きな山が。大山だ。すぐそばまで来た気がするのに、走れども走れども山は動かず遠いまま。距離の感覚がいつもと違うので面白い。横を見ると、道の両側に田んぼが広がり、青々とした葉が風になびいていた。

 ガンバリウスに着き車から降りると、木と草の香りにむわっと包まれた。山だー!

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その2に続く)
posted by 柳屋文芸堂 at 10:41| 旅行・お出かけ | 更新情報をチェックする