2015年07月21日

英雄ポロネーズ

 パスタ屋でウェイトレスをしていた頃の話。

 店のそばには音大附属の高校があり、ここの生徒がいたずら好きでまいった。
 注文の中に、さりげなくおかしなものを混ぜるのだ。

「森のサラダと、英雄ポロネーズと……」
「英雄ポロネーズ? そんなメニューねーよ!」
 ヤクザより怖いコックの哲さんに大声で怒鳴られる。

 青ざめたままテーブルに確認しに行くと、
「そんなの頼んでないですよ?」
 ドリンクバーのジュースを飲みながら全員しれっとしている。

 何年も後になって「英雄ポロネーズ」はピアノ曲の題名だと分かった。
 悪ガキどもめ。

 あの子たちももう社会人。
 みんな音楽の仕事をしているのだろうか。

 私は母親になり、哲さんは台所で離乳食を作っている。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 15:23| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2015年07月20日

愛知県産 職人仕上げ(雑記)

 休みの日はDちゃんと一緒に買い物出来るのが嬉しい。
 スーパーの魚売り場で、

「愛知県産 職人仕上げ」

 と書かれたうなぎを見かけた。

D「へえ、これ、愛知県産の職人が作ったんだ」
私「見てください、この新鮮な愛知県産の職人!
  みゃあみゃあ言ってますよ!
  乗ってる車だってトヨタですよ!」
D「そんなに話を膨らませなくても! ボケに食いつき過ぎ」

 脳がショートストーリー用になっているらしく、つい話を展開してしまう……

 ちなみにこのうなぎ、加工地は東京都でした。
 あっ、あれっ?(一瞬混乱した)
 
posted by 柳屋文芸堂 at 14:03| 与太話 | 更新情報をチェックする

2015年07月19日

青ネギとがんものみそ汁(自分用メモ)

 ここのところショートストーリーが続いていましたが、今回の記事はいつもの雑記、というか覚え書きです。

【作り方】
1、具のないみそ汁を作る。
2、青ネギを刻む。
3、がんもをオーブントースターで焼き、大きい場合は切る。
4、みそ汁をお椀に注ぎ、青ネギとがんもを入れる。

 今日の夕飯に作ったら、簡単で美味しかったので。
 またやりたい。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:01| 料理・食べ物 | 更新情報をチェックする

2XXX年目黒のさんま

「さんまは目黒に限る」
 介護施設に慰問に来てくれた落語家がそう言っておじぎをすると、おじいちゃん、おばあちゃんたちのすすり泣く声は一層激しくなった。

「さんまってそんなに美味しいの?」
 昔、魚はありふれた食べ物だったらしいけど、今では全て絶滅危惧種に指定され、捕獲が禁止されている。

「そりゃあ……」
 おじいちゃんは涙をぬぐう。
「焼き立てのところに、大根おろしと醤油をかけて、ご飯と一緒に……」

「ダイコンオロシって何?」
 僕は生まれてこの方、栄養補給用のビスケットしか食べたことがない。

「今日のビスケットはツナ味だよ! これも魚だって教えてくれたよね」
 おじいちゃんは虚ろな目をして、包装をぺりぺりむき始めた。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:05| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2015年07月18日

魔女カレー

 魔女のカレーが大評判だ。

 客の好みと体調に合わせてスパイスを調合して作ってくれる。
 美味しい上に体にも良い。

 けれども若い男は怖がって誰も行かない。
 魔女は気に入った男のカレーに惚れ薬を入れ、一生しもべにするというのだ。

 引き止める友人を振りきって、僕はカレー屋にやってきた。

 魔女は八百年生きているらしいが、見た目はずっと十八歳だ。
 猫そっくりのつり目が可愛い。

 彼女は僕を見ると幸福そうに目を細め、棚から小さな瓶を取り出し、その粉をカレーにさらさら振りかけた。

 立ち昇る湯気をかぐだけで汗が出るような辛い香り。
 ぎゅうと鳴る僕のお腹。
 魔女はこちらを見つめて頬を赤らめる。

 ご飯とカレーを載せたスプーンを、僕は……
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:50| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

おばさんの玉ねぎと卵のみそ汁

 俺の親父は悪徳商法の支店長をしていた
 売上げが良かった奴だけ呼ばれるパーティーに俺も連れてゆき
 ローストビーフとか生ハムメロンとか
 生まれて初めてのものをずいぶん食べた

 事務所には化粧の濃いパートのおばさんがいて
 片親で育つ俺を憐れんだのか
 お湯を沸かすための小さなコンロで
 玉ねぎと卵のみそ汁を作ってくれた

 柔らかい甘い玉ねぎ

 おばさんは旦那も子供もいるのに
 俺の親父とも出来ていた

 騙すつもりが騙されて
 親父は自己破産し俺は親戚に預けられ
 それ以上は話したくない

 思い出すのはみそ汁の味と
 親父はあのおばさんに本気だったんじゃないかという事

 確かめようにも親父はまだ生きているのか
 何十年も音信不通で
 俺は心底ホッとしているのだけど
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:20| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2015年07月16日

埼玉戦記〜千葉軍によるピーナッツ一斉掃射〜

 千葉軍によるピーナッツ一斉掃射は衰えを見せない。

「くっそぉ…… あいつらどんだけピーナッツを持ってやがるんだ」
 とっておきの草加せんべいを敵の工作員に割られてから、埼玉軍は日に日に追い詰められていた。

「仕方がない。最終兵器を出そう」
「まさか」
「隊長!」

 隊長と呼ばれた男は、誰とも目を合わさずにつぶやく。
「十勝甘納豆本舗の栗甘納糖だ」

 説明しよう!
 この栗甘納糖は大粒で形の良い実だけを厳選し、栗の歯ごたえを残して作られているのだ!

「そんな高級なお菓子で戦うなんて」
 狂気にかられ、ピーナッツの嵐の中に躍り出る一人の兵士。
「宮原ぁぁ!」


 ピーナッツと草加せんべいと栗甘納糖は、撮影の後に美味しくいただきました。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:13| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

小学生女子の困った愛情

 大分土産で柚子胡椒をもらった。

 子供の頃、大分に住んだことがある。
 新しい学校に馴染んだと思ったら、妙な事件が起きた。

 俺の物が次々に消えたのだ。
 イジメかと思ってビビった。
 でも友達の様子はいつも通りだ。

 隣の女子が俺の鉛筆を使っていた。
 リコーダーも下敷きもそいつの机の中にあった。

 ブチ切れて責め立てたら、
「好いちょん」
 とボタボタ涙をこぼし、まるで俺が悪いみたいに。

 大分の言葉にももう慣れて、それが「好きだ」という意味なのは分かったけど。
 何で好きな奴に迷惑かけんだよ。

 柚子胡椒を付け過ぎて辛くなってしまった鍋の白菜を食べながら、
「何事も、ほどほどは難しい」
 なんて。

 小学生男子に理解出来るわけないだろ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:07| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

良い豚肉の選び方

「良い豚肉の選び方は分かるか」
「さあ……」

 おでこに五本も皺がある伯母は、家に代々伝わる呪文を教えるように厳かに言った。

「白いところのない豚肉が良いんだよ」
「あぁ、脂が少ないのね」

 皺の影がかすかに深まる。

「そんな豚肉はどこにもないんだよ……」
「なけりゃ買えないよ!」

 伯母はああ言っていたけれど、脂身のない豚肉のパックも時々スーパーで売られている。
 これを茹でて豚しゃぶにして、にんにくとしょうがと青ねぎで作った中華風のたれであえ、トマトと焼きなすと青じそを入れる。
 夏の最強の料理。

 焼きなすはふたをして蒸し焼きにした方が美味しいと、教えてくれたのも伯母だ。
 ささやかで大切な工夫ほど、本には載っていないもの。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:02| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

カテゴリ追加

 「ショートストーリー」というカテゴリを増やしたよ。
 ここ数日で書いた300字のものと、昔書いたクリスマスBLを、カテゴリ変更してここに入れました。

 文字数制限のある文章を書くのは苦手だと思っていたけど、やってみたらハマっちゃって大変!
 シャワー浴びながら、
「あ、このネタで一個書けるかも」
 とか考えて、出てきたらメモしたり。

 楽しい 楽しすぎる 300字SS!

 生活も、三味線練習も(ヤバイ)ちゃんとやらねば……
 
posted by 柳屋文芸堂 at 09:25| 更新のお知らせ | 更新情報をチェックする