2016年12月31日

冬の京都旅行(比叡山延暦寺編)

この記事の続き)

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↑ケーブル延暦寺駅から見た琵琶湖

 鯖ずしを食べている間ずっと、ゴーン、ゴーンと頻繁に寺の鐘が鳴っていた。
 延暦寺に近付いていくと、鐘の音も大きくなる。

 延暦寺は大きな本堂の周囲に小さな建物が並ぶ、という一般的な様式の寺ではない。
 東塔、西塔、横川という三つの地域に分かれおり、○○堂、○○塔、○○院などの名を持つ大きな建物が全部で20ほどある。
 総合大学の巨大なキャンパスを思い浮かべてもらうと近い。
 法然や親鸞もここで学んだというから、中世には東大みたいなものだったのだろう。

 巡拝料700円を払って東塔地域に入る。
(同じ券で西塔地域、横川地域にも入ることが出来るが、比叡山内シャトルバスが運休していたのでそちらには足を伸ばさなかった)

 まずは気になっていた鐘のところへ。

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↑鐘楼

 お賽銭箱に50円入れれば一回打って良いらしい。
 金額が明示されているのでやりやすい。
 高過ぎず安過ぎず、適切な価格設定だと思う。
 みんなゴンゴン打つ訳だ。

 私も50円玉を投げ入れ、力いっぱい縄を引っぱり丸太を鐘に打ちつけた。

 ゴ〜〜ン!

 よし、なかなか良い音で鳴らせたぞ。
 勢いづいた丸太は振り子のようになり、再び鐘に突進している。
 いやいや連打しちゃマズい。慌てて縄をつかんで丸太の動きを止めた。
 お坊さんも毎回こんな風にやっているのだろうか。

 Dちゃんはスマホで私を撮影していた。
 見せてもらうと、鐘を打った後の私は満足そうで、晴れ晴れとした顔をしている。
 確かにすっきりした。
 鐘の音とともに、心にわだかまっていたものが消え去った気がする。

 この日はクリスマスイブ。一足先にゆく年くる年だ。

 総本堂である根本中堂が工事中だったので、坂を上がって阿弥陀堂の方に行ってみた。
 場違いな赤い矢印があり、説明はない。

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「何だろう、これ」
 近付いてみると、
「あっ! 音!」

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 水琴窟(すいきんくつ)だー!
 地中に空洞を作って水音を響かせる仕掛け。
 「水琴窟」というタイトルの素敵な小説を読んだことがあり(作者は武田若千さん)名前は知っていたのだが、実物を見るのは初めて。
 いやまあ、地中だから見えないのだけど。

 耳を澄ますと優しいガムランのような音色が聴こえる。
 水が奏でる自然の音楽。心安らぐ。

 小さな音なので注意していないと通り過ぎてしまう。
 矢印があるのはなかなか親切だ。

 木々の間をのんびり散歩して、ケーブル延暦寺駅で次の発車を待つ。
 時間があったので望遠鏡にお金を入れて覗いてみた。

 遠くからだと風景は静止して見えるのに、拡大するとその中で車やトラックが動いているのが分かる。
 何だか顕微鏡で微生物を観察しているみたいな気持ち。
 みんな生きて活動しているんだなぁ。

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 坂本ケーブルは工事中に多くの石仏が発掘されたという。
 比叡山焼き討ちの犠牲者を慰めるために作られたものらしい。
 ケーブルカーで右側に座ったら、山を降りる途中、この石仏が安置されている霊窟が見えた。
 ずらりと並んだ赤い布の色彩が目に焼き付き、すぐに葉の闇に隠れ、消えた。

「京都のお漬物編」に続く)
posted by 柳屋文芸堂 at 23:34| 旅行・お出かけ | 更新情報をチェックする

2016年12月30日

冬の京都旅行(贅沢昼ごはん編)

この記事の続き)

 夕飯を食べて日帰りにすると家に着くのが深夜になるので、ホテルに泊まることにした。
 二日目は何をしようかという話になり、私は、
「比叡山に行きたい」
 と希望を述べた。

「焼き討ち体験がしたいの?」
「いや…… Dちゃんにとっては比叡山と言えば焼き討ちなんだね」
「他に何が出来るの?」
「よく知らない……」

 うちの実家の宗派が天台宗なので、その総本山である比叡山延暦寺を一度見てみたかった。
 「山」だから京都中心部の観光地より自然豊かなのではないかという期待もあった。

 和久傳を出てから近くの本屋へ寄ると、さすがに京都のガイドブックが充実している。
 しかしどれを見ても比叡山の情報は少ない。
 今回初めて知ったが比叡山は京都府と滋賀県の県境にあり、延暦寺の住所は滋賀県なのだ。
 それではと滋賀県の旅行ガイドを探したが見つからない。

 ネット検索をしてみるが、この情報も分かりにくい。
 比叡山に限らず観光地のサイトはどこも、地元の交通の説明が下手だ。
 そこに住んでいる人たちは使い慣れていて、初めて来る人が何に困るか想像出来ないのだろう。

「冬の間は京都側のロープウェイが運休するから、琵琶湖の方に回らないといけないみたいだよ」
 とDちゃん。
「時間かかるのかな」
「京都駅から一時間くらいらしい」

 Dちゃんは比叡山に全く興味がなく、とにかく美味しい昼ごはんが食べたいと言う。
「京都市内ならともかく、山の方に美味しいお店なんてあるかなぁ」
「朽木旭屋(くつきあさひや)の鯖ずしを買おう」

 京都に美味しい寿司屋はないか調べたところ、グルメ情報サイトで評価が高かったのがこの店だという。
 伊勢丹の地下に入っているというので、下見することにした。

 朽木旭屋はテイクアウト専門の店だ。
 筒状の容れ物に入った鯖ずしが並んでいる。
「これは切れているんですか?」
「はい」
 と店員さん。見ると値札に4切、8切などと書いてある。

「これを買ってお弁当にして比叡山で食べれば良いね。賞味期限はいつまでですか?」
「明日です」
「じゃあ今のうちに買っておこうか」
「明日行く前に買えば」
「伊勢丹が開店した後で京都駅を出発したら遅くなっちゃうんじゃない?」

 比叡山に向かう電車の乗り継ぎが悪かったら、と考えると不安だった。
「大丈夫だよ」
「明日の開店は何時ですか?」
「10時です」
「10時か〜」
「ホテルで出かける準備してたらすぐそのくらいの時間になっちゃうよ」

 店の前でさんざん大騒ぎして、その日は買わずにそのままホテルに向かった。

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↑ニンジャが出てきそう

 ツインの部屋だったのでDちゃんにくっついて眠ることが出来ず辛かった(ダブルにして欲しかった……)

 次の日の朝、身じたくを済ませて朝食を食べ、ちょこっと散歩をしたら、

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↑東本願寺の入り口

 10時過ぎてた……
 Dちゃんの言う通りだった。

 散歩の途中で見た、京都駅前のバス乗り場が激混みで驚いた。
 長い行列が出来ていて、特に清水寺行きは、
「最後尾の人たちは、一体いつバスに乗れるのだろう」
 と心配になるくらいだった。

 清水の舞台から飛び下りる覚悟がないと、清水寺には行けないんだな……

 ホテルをチェックアウトし、朽木旭屋へ行くと、店員さんは私たちを見て、
「来てくださったんですね。ありがとうございます!」
 とにっこり。覚えられてる……

「普通のとあぶりを買って食べ比べたい」
 とDちゃんが言うので、それぞれ4切ずつ購入。
 お箸ももらった。

 11時過ぎ、JR湖西線に乗った。

(この時点では分かっていなかったが、時間のかかるルートを選んでしまったので、電車好きの人以外はマネしないように)

 大津京駅で降りるはずが山科駅で降りてしまい、京津線の京阪山科駅に乗り換えた。
 この線は途中から路面電車になるのが面白い。
 浜大津駅で石山坂本線に乗り換え。これも一部路面電車だった。
 乗った電車が近江神宮前駅止まりだったため、そこで下車。

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↑ヒマだったので反対側の電車を撮影

 10分ほど待ち、坂本駅行きに乗車。
 この路線には「穴太(あのお)」という駅があり、
「あのお〜 あのお〜」
 というアナウンスに呼ばれているような気がして、楽しかった。

 坂本駅から10分ほど歩き、比叡山のケーブルカー乗り場である「ケーブル坂本駅」に到着。

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 着いてから気付く。
 JR湖西線で比叡山坂本駅まで行き、そこからバスに乗るのが一番近かったのではないか……?
 まあ遠回りも旅のうち、だ。

 比叡山山頂に向かう坂本ケーブル、「坂本ですが?」のあの人

坂本ですが? 1 (ビームコミックス) -
坂本ですが? 1 (ビームコミックス) -

 が経営しているイメージが離れない。

 新しくて乗りやすい普通のケーブルカーだった。
 一号車に「縁号」二号車に「福号」と名前が付いているのが寺らしさを感じさせる。

 終点のケーブル延暦寺駅に着いたのは12時半過ぎ。
 京都駅からだいたい1時間半だ。
(最短ルートなら1時間かからないはず)

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 駅の横が展望台になっており、比叡山の緑と琵琶湖を眺めることが出来る。
 美しく清々しい。
 ベンチもあるのでこの景色を見ながら鯖ずしを食べることにした。

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 まずはあぶりではない、普通のタイプ。
 サバが分厚く、とろりとクリーミー。
 魚とこんぶのうまみがかけ算になって、どんどん口に運んでしまう。

 一応醤油も付いているのだが、サバとこんぶと酢飯だけで味が完成しているので、かける必要を感じない。
「うま〜!」

 あっという間に食べ終わり、Dちゃんがあぶりの方の包装を解く。
「まだ! 待て!」
「何でそんな犬を叱るような言い方するの」
「のりが犬みたいに鯖ずしを突つこうとするからだよ」
「え〜」

 無自覚だったがそう見えたらしい。
 そうなっても仕方ないほど、もっと食べたくてたまらなかった。

 あぶりの方はこんぶで巻かれていない。
 クリーミーさに焼き魚の香ばしさが加わって、こちらも甲乙つけがたい絶品。
「うまま〜!!」

 朽木旭屋の鯖ずしはかつて味わったことがないほどサバの品質が良く、酢飯も魚に合う絶妙な酸っぱさだ。
 全体の味のバランスが素晴らしい。
「私、鯖ずしって食べたことなかったんだけど、最初に最高のものを食べちゃった気がする。これより美味しい鯖ずしに出会うのは難しいんじゃないかな」

 今後私は朽木旭屋以外の鯖ずしの文句を言い続けることになるだろう。
 この予言から逃れることは出来ない……

「比叡山延暦寺編」に続く)
posted by 柳屋文芸堂 at 00:39| 旅行・お出かけ | 更新情報をチェックする

2016年12月27日

映画「帰ってきたヒトラー」感想

 ヒトラーが現代によみがえったら、というコメディ映画。
 途中「これ演技なの? え? え?」となるところがあって、後で調べてみたらドキュメンタリーの手法を取り入れていたことが分かった。
 ヒトラー役の人がヒトラーの格好・人格のままで、街の人々や政治活動をしている人たちと会って話す。
 その部分はおおむねアドリブであるらしい。

 現代人というのは、独裁者だろうと噴火してる火山だろうと、とりあえずスマホを向けるんですね。
 危険かどうか考える前に、いつもと違う特別なものがあったら撮らずにはいられない。

 みな口々に移民への不満を述べ、ヒトラーを大歓迎しちゃう人もけっこういて、これ演技じゃないんだ、と思うとニュースの向こう側が見えたようでゾッとした。
 何百万人死んでいようと、他人の死は痛くも苦しくもない。
 他人の死に共感出来るのは、余裕のある人が良心的な想像をした時だけだ。

 そして今、世界には、余裕のない人々があふれ返っている。
 自分が言えないことを言ってくれて、やれないことをやってくれる人を切実に求めている。

 余裕のない人を増やさないよう社会を変えてゆくのは簡単ではなく、何かやっても効果が見えにくい。
 勇ましいことを言ったり、そういう人を支持したりする方がラクだ。
 それでも、どんなにささやかであっても、自分で出来ることを探さなければいけないのだと思う。

 さもなければ、ヒトラーは何度でもよみがえる。


 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:30| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

冬の京都旅行(贅沢夕ごはん編)

 私への誕生日プレゼントということで、Dちゃんが京都旅行に連れていってくれた。

 私は新幹線に乗るたび車窓から見える景色を楽しみにしているのに、Dちゃんは全然興味を示さない。
「富士山だよ」
「あるだろうね。滅んだという話は聞かない」
 顔も上げずにスマホでゲームをしている。

「こっちにも山があるよ。見ないの?」
「また今度」
 仕方ないので現れては消えてゆく山や雲を一人でぼんやり眺めた。
 青空の綺麗な日で、名古屋を出て少ししたら夕焼けになり、山の向こうがうっすら赤くなった。

 今回の旅の一番の目的は、京都にある日本料理のお店「和久傳」で一緒に食事をすること。
 二年前に私は一人で行ったのだけど(その時のレポートはこちら)食べているうちにどんどん寂しい気持ちになった。
 あまりにも美味しくて、その感激を誰にも伝えられないまま、黙ってモグモグしているのに耐えられなくなったのだ。

 京都駅の改札を出た後、方向が分からず少々焦った。
 右に左にウロウロし、どうにか予約時間ぴったりに到着。
 暮れてゆく京都の街を見下ろしながら、和久傳のコースが始まる。

 最初は漬けブリ。

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 刻んだ紅大根や水菜が下に敷かれており、さっぱりしている。
 お酒が飲みたくなる味だが、私は空きっ腹にアルコールを入れると倒れてしまうので、まだ飲めない。
 悔しい。

 続いて、白みそで煮た海老芋と白菜。

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 ゆずの香りが利いている。
 黒っぽいのは真ん中が空洞になっている謎の野菜。
 初めて食べた。

(この旅行記を書くために調べてみたところ「堀川ごぼう」ではないかと。
 京都の伝統野菜だそうで、味はごぼうより芋に近い気がした)

 次は、さわらの西京焼き。

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 添えられているセロリのバター炒めが、甘めの魚の味によく合っている。
 組み合わせとして勉強になった。
 家でも真似してみたい、と思ったが自分では上手く出来ないかなぁ。

 Dちゃんは別のコースで、鯛の松葉焼きを食べている。
「香りがすごく良い」
 松の葉にはそんな効果があるのかと感心した。

 せりと長芋のおひたし。

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 長芋と思って食べたものが柔らかくて、
「これが京都の長芋か……!」
 と驚いたが、味わってみるとそれはホタテだった。

 Dちゃんからフグの白子の天ぷらをもらった。

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 ふわとろ〜
 これは日本酒を飲まなければいけない味だ!
 とウェルカムドリンク的にいただいた竹の盃を見ると、あれ? 空っぽ。
 いつの間に飲んじゃったんだ?

「お酒分けてあげようか?」
 とDちゃん。
「どうして私が日本酒飲みたがってること分かったの?」
「そりゃそんながっかりした顔で『入ってない〜』って盃を覗き込んでたら、ねえ」

 Dちゃんが頼んだ京都のお酒は澄んだ味で、予想通り白子との相性は最高だった。

 次は大根と焼き白子。

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 白みそ苦手なのに、何故か私だけ白みそ責め。
 体ではなく舌がホカホカして、冬の料理だなぁ、という感じがする。
 白みそにだんだん慣れてきた。
 大根と白子の味もよく合っている。

 この後、牡蠣雑炊(写真撮り忘れた)
 具が牡蠣というだけでごく普通の雑炊、かと思いきや、一緒に出された漬け物を合わせたら味が完成!
 漬け物は奈良漬けと味噌漬けの間くらいの甘じょっぱさだった。

 デザート、私は白あんの挟んである煎餅のようなお菓子だけだったが、

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 Dちゃんには抹茶で点てたお茶と、黒豆と果物の和三盆寄せが。

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 周りに黒蜜がかかっているそうで、Dちゃんは、
「美味なり……」
 とつぶやいていた。

「贅沢昼ごはん編」に続く)
posted by 柳屋文芸堂 at 09:49| 旅行・お出かけ | 更新情報をチェックする

2016年12月25日

寂しい二匹の子犬(「怒り」二次創作)

「また乱暴にやると思った?」
 満足させたつもりだったが返事はなかった。
 乱れた前髪からのぞく瞳は物言いたげで、何を言いたいのかはまるで分からない。

「犬みたいだな」
 頭を撫でると目を瞑る。
 こんな風に大きくておとなしい動物を飼いたかったのかもしれないと、ふと思う。

「少し休んだらメシ食いに行こう」
「うん」

 長く一緒にいれば欠点ばかり目について、互いにうんざりする、はずだった。

「直人?」
 ガランとした部屋には。
「直人?」
 寂しい動物の気配だけを残して。
「直人?」
 寂しかったのは。
「直人?」

 懐いていたのは。
 離れようとしなかったのは。
 信じていたのは。
 依存していたのは。

 どうして全てが分かるのは、全て終わった後なのだろう。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 01:29| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2016年12月23日

神様、どうか今夜だけは(「怒り」二次創作)

 都合の良い相手だと思っていた。
 男を取っ替え引っ替えしている遊び人に、身の上話をする必要はない。
 欲望だけでつながって、飽きられるまで家に泊まらせてもらえば、貯金を減らさずに済む。

 優馬の真剣な視線に気付いたのはいつだったろう。
 いっそこれが自惚れなら。
 自分から家を出れば優馬の傷は浅くなるのかもしれないが、生きている限り一緒にいたかった。
 優馬はお母さんを亡くしたばかりだというのに。

 優馬からメールが届く。
『俺が帰るまでメシ食うな』
 なんでだよ。再びの着信音。
『ローストチキン買ったから』

 この幸せが永遠に続くと信じている男の笑顔が浮かび、じっと目を閉じる。
 神様、どうか今夜だけは、俺の心臓を止めないでください。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:27| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

映画「イヴの時間」感想

 人間とアンドロイドを区別しない、というルールを掲げた喫茶店が舞台の、近未来SF。
 論理的に話さないと納得してくれない旧型のアンドロイドがDちゃんみたいでウケた。
 他のアンドロイドたちはあまりにも人間的で、ちょっと私の好みじゃなかったかな。
 みんな優しくてあたたかくて可愛かったけど。

 私も人の話に矛盾が見つかると思考が止まったりするので、我々はアンドロイドよりアンドロイドな夫婦なのかもしれない。


 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:00| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

又吉直樹「第2図書係補佐」感想

 映画の感想本を作った時に、
「まずあらすじを述べて、ネタバレを避ける、という物語紹介の暗黙のルールって意味あるのかな」
 と疑問に感じた。
 ストーリーとオチって、そんなに大事なものだろうか。
 少なくとも私が映画や小説に求めているのは、そんなものじゃない。

 「第2図書係補佐」を読んで、
「そうそう、これだよ、これ!」
 と嬉しくなった。

「僕は自分の生活の傍らに本という存在があることを書こうと思いました」

 一応本の紹介本の形式で書かれているのだけど(本のタイトル、例えば「尾崎放哉全句集」が章のタイトルになっていて、その後に文章が続く)一般的な書評本とは違う。
 本の感想でも評論でもなく、その本を読んだ時の自分の状況、その本を読んで思い出した子供の頃のことなどが、いかにも文学と笑いを愛する人らしい(つまり私にとって非常に馴染みやすい)言葉で綴られている。

 ジャンルとしては日常エッセイに近いと思う。
 よくこんなに細かいことまで覚えているな〜 と驚く。
 又吉さんの「覚えている力」はもちろんすごいけれど、もしかしたら本というものが持つ「思い出させる力」もすごいのかもしれない。

 本好きならきっとニコニコしちゃう本だと思います。

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫) -
第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫) -
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:39| 読書 | 更新情報をチェックする

映画「この世界の片隅に」感想(続き)

 リンさんの出番が少なくなっていたせいで、周作さんが一途な人みたいになってたね。
 原作を読んだ時に私は、
「リンさんのことで悩んだ周作が、子供の頃に自分を助けてくれた女の子なら再び自分を救ってくれるに違いない、と考え、すずさんを探し出した」
 という風に解釈していた。
 映画の描き方だと「子供の頃からずっとすずさんを思い続けていた」ように受け取れるよね。

 それもあって、周作さんがすずさんを説得する場面は、原作より映画の方が情熱的に見えた。
 この作品に限らず、心情の描写は漫画や小説の方が細やか、映画の方がドラマチックになることが多いように感じる。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 09:24| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年12月12日

映画「この世界の片隅に」感想

 原作の全部のエピソードを入れるのはムリだったか〜
 リンさんの話が少なくなっていたのが残念でしたね(楠木公も……)
 独特の筆致や登場人物たちの性格が丁寧に再現されていたのは良かった。

 原作が好き過ぎて、漫画と映画を比較する感想しか言えない。
 これから何が起こるか分かるから、最初から泣きっぱなしで、周作さんが広島に帰りたがるすずさんを説得する場面で一番大泣きだった。

 原作を読んでない人の、純粋な感想が聞きたいです。
(私が前に書いた漫画版への感想はこちらこちら


 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:19| 映画・映像 | 更新情報をチェックする