2017年08月31日

映画「築地ワンダーランド」感想



 仲卸(卸会社から仕入れた品物を、市場内の店舗で販売する人たち)を中心に、彼らから海産物を買う料理人、マグロやウニの競りの様子などを追ったドキュメンタリー。

 築地の研究をしているアメリカの文化人類学者、テオドル・ベスターの視点で進んでゆく。
 外国人が語ることで、知らない国の不思議な光景を紹介しているように感じられるのが面白い。
 身近な東京にあるせいで分かっているような気になるが、築地は特殊で特別な場所なのだ。

 消費者が魚を、生で(←ここがポイント!)美味しく食べるために存在する、世界最大のシステム。
 魚市場は世界中にある。しかし生で食べることを基準にして動いているのは日本の市場だけだろう。

 築地市場で最も重視されているのは金儲けではない。
「商品である魚を、最高の状態でお客さんの口元まで届け、美味しく味わってもらうこと」
 寿司職人などの料理人がより良い食材を探す場所であるだけでなく、仲卸は自分の店の品物を最大限活かしてくれる人を捜し求めているように見える。

 フランス出身のシェフ、リオネル・ベカは言う。
「仲卸の人たちはほぼ全員お店に食べに来てくれた。
 僕たちがどんな仕事をしているか理解するためにわざわざ来たのだ」

 豊洲移転問題で腹を立てている人も多いと思う。
 映画ではそのことには触れず、湿っぽくならず、築地で働く人々の日々を坦々と見せているのが良かった。

 あと、拾得物掲示板の「しいたけ」「なす」に笑った。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:21| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年08月26日

明日も、今日も、尼崎文学だらけ(あまぶん)!

 いよいよ明日、8月27日(日)11:00〜16:00に文芸誌・創作文学同人誌の展示即売会「尼崎文学だらけ(あまぶん)」が開催されます〜!
 会場の尼崎市中小企業センターは、阪神尼崎駅から徒歩5分とのこと。
 主催者さんのブログ記事(こちら)に写真入りの詳しい行き方の説明があるので、事前に見ておけば迷わない、はず。

 私の小説が載っている「ヒトガタリ」が参加しますので、みなさまよろしくお願いします。
 いただいた推薦文はこちら
 おそらく入口すぐのところにある委託販売コーナーに置かれるんじゃないかな。

 本日、8月26日(土)11:00〜16:00には同じ会場で見本誌試し読み会も行われるそうです。
 私の小説「別世界」は短いので、立ち読みで最後まで読めると思います。
 ぜひどうぞ!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:41| 同人活動 | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

映画「星を追う子ども」感想

 新海誠監督のファンタジー作品。
 ジブリっぽいところは思わず笑っちゃうんですが(ごめん)色彩が美しい自然の風景、光と影の効果的な使い方、やや観念的なセリフ、運命の人を求める恋愛、遠いどこかに焦がれる気持ちなどは、唯一無二の新海誠の世界。

 大切な者の死をどう受け入れるかの物語で、いくつもの死が描かれる。
 それはただ観客を悲しませるためにあるのではなく、心で考えさせるような場面になっており、私も家族のこれまでの死・これからの死を思いながら見た。

 「君の名は。」は「とりかえばや物語」と「古今和歌集」の小野小町の歌が元になっていましたが、なんと今回は、古事記!!
 死者に会えるという地下世界が舞台なのです。
 イザナミは黄泉の国の食べ物を食べてしまったために地上に戻れなくなったので、主人公が地下世界の芋を食い始めた時には、
「大丈夫かー?!」
 とメチャクチャ心配になりました。

 神話や民話など、長く伝えられてきた物語には強い力がある。
 私も遠慮せず取り入れていきたい。
 ジブリは、ちょっと、早過ぎたんだ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:10| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

母と高校野球

 花咲徳栄が強かったためか、母はこの夏、高校野球をずっと見ていたようで、しかし肝心の決勝戦はデイサービスに行く日。
 残念だったな、と思っていたら、デイサービス施設でもテレビをつけて、みんなで試合を楽しんだらしい。

「こんなに応援してるんだから、60歳以上の人にお金をくれたって良いのに」←何故?
「息子が出てたらわんわん泣いてたわ〜」←孫ではないのか
 などと意味不明の軽口をたたきながら……

 母はここ数年、何かに興味を持ったり、楽しんだりすることが少なくなっていたので、地元である埼玉代表が優勝してくれてありがたかった。
 70歳くらいまでは本当にアクティブな人だったんだ。
 体が衰えると心の力も弱まってしまうのだなぁと、切なく感じている。

 母は、
「のり子と一緒に行くんだ!」
 と言って、私の子供の頃の写真がプリントされているバッグを持ってデイサービスに通っている。
 そういう恐ろしいものが我が家にはあるんですよ……

 「贋オカマと他人の恋愛」に出てくる「息子大好き」な七瀬の母のようだ。
 まあ自作なので影響を受けているのは当然のことながら、
「実際にやっちゃうんだ」
 と驚いたよ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 09:40| 家族 | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

映画「パルプ・フィクション」感想

 主題曲の「Misirlou」が格好良いな〜 と前から思っていたので見てみました。



 不思議な映画だった。
「そんなことしたら危ないよ! 死んじゃうよ!」
 とハラハラさせる人は死ななくて、
「えっ、そこで?!」
 と驚くような場所でサクサクっと重要な人物が死んだりする。

 時間の流れの編集が凝っており(単純に過去→未来とは進まない)最初に見た時にはよく分からなかった部分が、二回目で意味が分かってプッと笑ったり。
 意図的に徹底的に馬鹿馬鹿しい話を積み上げていて、ブッチの金時計の来歴が特に可笑しかった。
 そんなくだらないものに対して真剣になるブッチの様子も。

 色んなことが起こるのだけど、バタバタした感じはしない。
 最近の映画は上映時間を短くするためにエピソード一つ一つを出来る限り詰めたようなのが多くて、これくらいのゆったり感が許される世界であって欲しいなぁと思った。
 何かが起きる瞬間だけでなく、何も起きない間の動きも、映画にとっては大事な気がするんだ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 19:28| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年08月20日

シュークルットの同志よ……!

 フランス料理屋でシュークルットのキャベツ部分だけ増量してください、と頼んだら、
「別の店の話をするのもあれなんですが……」
 と言いながら、店員さんがシュークルットの美味しいアルザス料理の店を教えてくれた!

 マニアックなレコード屋で、
「それ、うちにはないけど○○駅の△△って店にならあると思うよ」
 と言われたような気分。

 私とDちゃんと店員さんの三人で、しばしシュークルット談義。
 自分の店のシュークルットと、その店のものの違いを語る店員さん。

 おそらく三人とも、
「シュークルットの素晴らしさを分かってくれる人が現れた!!」
 という喜びに満ちていた。

 同志よ……!

 おすすめされたお店にもそのうち行きたいと思います。
 ま、自分で作ったやつが一番美味しいのだけどね。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:38| 料理・食べ物 | 更新情報をチェックする

2017年08月15日

アルクトゥールスとスピカ(「怒り」二次創作)

「アルクトゥールスという星は、一等星のスピカに向かって秒速125キロで動いているんだって」
 直人が昼間見たという科学番組の話を始めた。いつになく熱心な口ぶりだった。
「1秒で125キロ進むってすごい速さだな」
「そう。だから5万年後にはアルクトゥールスとスピカはすぐそばに並ぶんだ」
 まるで5時間後に5万年後がやってくるかのように、嬉しそうに言う。
「それでね」
 直人は下を向き、小さな声で付け足した。
「アルクトゥールスは陽に焼けたような色で、スピカは白いんだ」
「東京でも見えるのかな、その星」
 一等星なら街の明るさにも負けないかもしれない。直人は顔を上げて微笑んだ。
「今度探してみようよ」

* * * * * * * * *

 永田美絵「楽しい星空入門」を読んでいたら、
「うしかい座のアルクトゥールスとおとめ座のスピカを合わせて日本では「夫婦星」と呼びます。陽に焼けたように見えるアルクトゥールスと色白のスピカはとてもお似合いのカップルです」
 という文章があり「優直!」と思って書きました。

 アルクトゥールスの速度やスピカへの最接近の時期はネットで調べると何種類か出て来てどれが正しいのか分かりません。すでに古代ギリシャの頃とは違う位置になっているそうです。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:32| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2017年08月13日

RADWIMPS「君の名は。」感想

 「君の名は。」を見た後すぐにサントラを購入。
 RADWIMPSは「フランケンシュタインの恋」の主題歌「棒人間」がすごく良かったし、映画を見る前から「前前前世」の「前前前世から僕は君を探し始めたよ」という歌詞が気になっていたので。
「前世と前前世には会えなかったのか……?」

 映画「君の名は。」はストーリーと音楽の距離感が神がかっていたと思う。
 登場人物の心情を表してはいるけれど、合い過ぎてはいない。
「ちょうど良い曲が偶然あったので使ってみました」
 としれっと言いそうな雰囲気(実際は20回も修正入れて作らせているのに!)

 感動する映画は苦手だと思っていた。
 でも「君の名は。」はパチンとスイッチが入るみたいに、音楽に乗って物語世界に没入出来た。
 ある種のミュージカルなのではないかと思う。

 「前前前世」がオープニング曲でもエンディング曲でもないことを知った時の驚き。
 この曲が流れるシーンは映画の中で一番楽しいですよね。

 「スパークル」が好きなんですよ〜
 瀧と三葉の曲であるだけでなく、前半はテッシーのことを歌っているような気がして。
「やったれやー!」
 と脳内で叫びながら聴いている。

 テッシーの、現状に不満を持ちつつどう変えたら良いのか分からないという感覚は、私が子供の頃からずっと持ち続けている気持ちによく似ている。
 特に思い入れのある登場人物だ(どの子も好きだけど)

 エンディング曲の「なんでもないや」の、
「君のいない世界など夏休みのない八月のよう」
 という歌詞、「君のいない世界」なんて「夏休みのない八月」くらい酷い、あり得ないと強く否定するための比喩なのだろうけど、
「割と簡単に実現しちゃうよね、夏休みのない八月……」
 と過労サラリーマンとその妻は力なく笑っております。

 「デート」「飛騨探訪」のような歌詞なしの曲も可愛くて心地好い。
 日常の中で自然に楽しみつつ、元気になったりじーんとしたり。
 この夏を乗り切るためのアルバムになりそうです。

君の名は。(通常盤) - RADWIMPS
君の名は。(通常盤) - RADWIMPS
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:31| 音楽 | 更新情報をチェックする

2017年08月11日

「君の名は。公式ビジュアルガイド」感想

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド -
新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド -

 瀧役の神木隆之介と三葉役の上白石萌音の対談や、新海誠監督、キャラクターデザインの田中将賀、作画監督の安藤雅司、音楽担当のRADWIMPSへのインタビューなどが載っている。
 「ビジュアル」ガイドにしては文字情報が多く、
「『君の名は。』を作った人たちの話が聞きたーい!!」
 と思っていた私は大満足。

 私が新海誠監督のことを知ったのは、日本アカデミー賞授賞式を伝える映像とラジオ番組だった。
 宮崎駿・庵野秀明・押井守など、一目見ただけで一筋縄ではいかないと分かるアニメ映画の監督たちに比べると、ごく普通の、穏やかそうな人に見えた。
 しかしRADWIMPSが作った映画用の音楽に対し、長い褒め言葉と「でも」ここを直して欲しい、という注文のメールを何度も送った、という話を聞き、
「この人にはこの人の面倒臭さがあるな。映画監督なんてそうでもなきゃ出来ないよな」
 と興味深く感じた。

 この公式ビジュアルガイドにはそのエピソードが細かく書かれていて、RADWIMPSとのメールのやり取りは20往復ほども続いたという。
 よく降りなかったな、RADWIMPS……
 「君の名は。」は映像と音楽の合い方が神がかっていて、あれは監督の粘り勝ちだったのだとよく分かった。

 ロサンゼルスで行われたワールドプレミア(世界最初の試写会)では、映画の最後の方で観客たちが歓声を上げたり叫んだりしたという。
 日本の映画館ではそんなあからさまな反応する人いないよね。
 バンドのライブみたいで楽しそうだ。

 安藤雅司の、
「人はこういうものだっていう記号的なところに落とし込まないようにしよう」
 という言葉はアニメキャラの描き方についての話ながら、小説書きにも言えることだと思った。

 シナリオが載っている訳ではないけれど、細かいストーリー紹介があり、耳で聞くだけでは深く考えられなかったセリフの単語を「読めた」のも良かった。

☆むすび
 漢字では「産霊」と書くんですね。
 広辞苑によると「(奈良時代にはムスヒと清音。「むす」は産・生の意、「ひ」は霊力)天地万物を産み成す霊妙な神霊。むすびのかみ」

☆かくりよ
 漢字では「隠り世」あの世のこと。

☆カタワレ時
 カタワレを辞書で引くと「片割れ月」という関連語が出てくる。半月のこと。
 それで瀧のTシャツがHALF MOONだったのか。
 広辞苑では「あふことは片割れ月の雲がくれおぼろけにやは人の恋しき」なんて「君の名は。」そのものみたいな歌が挙げられていて、新海監督が埋めておいた印を見つけられたような気持ちになり、嬉しくなった。

 何かを好きになって、深く知ろうとして、新しい知識や感覚を得られるのって本当に素晴らしいね。
 11月には国立新美術館で新海誠展が開催されるそうで、今から楽しみです♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:41| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年08月10日

「ジャコメッティ展」感想

 乃木坂の国立新美術館で開催されている「ジャコメッティ展」に行ってきました!
 始まる何ヶ月も前から楽しみにしていて、「歩く男T」の写真が印刷されているチラシを台所の横に貼り毎日見ていたのに、気付けば最終日まで一ヶ月を切っていた。
 おおお、見られなかったら相当がっかりするぞ、と37℃の炎天下出かけることに。

 会場に着いてみると、意外と空いていてびっくり。
 暑いから? 平日だから? ジャコメッティあんまり人気ない?!
 夏の美術館ではよくあることながら、作品保護のための空調で寒く、37℃に合わせて薄着にしなくて本当に良かったと思った(それでも最後は持ってきていたマフラーを巻いた)

 ジャコメッティといえば細長いブロンズ像が有名だが、初期作品のコーナーでは「細長くないジャコメッティ」が見られる。
 キュビスム・シュルレアリスム・アフリカ美術等から影響を受けつつ、自分の作るべきものを模索していた時代。

 16歳の頃の作品「シモン・ベラールの頭部」は写実的な像だ。
 しかし不満そうな、思案するような顔で、そこに「何かがある」のを感じ、離れられない。
 伝統的な技法では表現しきれない「何か」をジャコメッティはすでに抱えていて、それを形に出来ないもどかしさが、像に宿っているのかもしれない。

 その後、像はどんどん小さくなり(45歳頃の作品には3.3×1×1.1センチなんてサイズのものもある)大きくしなければ、と1メートルの像に挑戦したら、今度は細くなった。
 小さくしよう・細くしようと思ってやったのではなく、現実を見てとらえたものを形にしようとした時に、何故か小さく・細くなってゆく。
 これにはいったいどんな意味があるのだろう?

 私は若い頃に行った展示(ブリヂストン美術館だったかな?)でジャコメッティの作品を目にし、一瞬で心を奪われた。
「何でこんなに細いんだよ!」
 とツッコミを入れる楽しさもあったが、その像の姿から、一途さや真剣みを感じ取ったような気がする。
 確かに奇妙な形だ。でもこの人はふざけている訳じゃない。

 ジャコメッティの細長さは、草間彌生の水玉のように切実なものなのだ。

「ひとつの彫刻はひとつのオブジェではない。
 それはひとつの問いかけであり、質問であり、答えである。
 それは完成されることもあり得ず、完全でもあり得ない。」
 (展示室の壁に書かれていた文章を引用)

 彫像は正面からだけではなく、周囲360°あるいはしゃがんで下から見上げることも出来る。
 複数体が並ぶ群像は、特に角度によって見え方がかなり変わる。
 私を含めみんな像の周りをぐーるぐる。
 ジャコメッティ、前から見るか? 横から見るか?

 この展示を見ても、ジャコメッティの細さの秘密が分かる訳ではない。
 ただ彼がそのやり方でしか表現し得なかった「何か」は確実にそこに存在し、私は分からないまま芸術と心の不思議を持ち帰った。

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↑歩く男Tは自由に写真を撮ることが出来る! 最近は撮影可能な展示が多いから、使い慣れたカメラを持っていくようにしないとな。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:43| 美術 | 更新情報をチェックする