「つごもり」は(陰暦で)月末。「月隠(つきごもり)」のつづまったもの(岩波国語辞典より)
大つごもりは大晦日です。
途中までは人情話で、ふーんという感じでしたが、ラストが洒落てる。
○○だったかもしれないし、△△だったかもしれない、と二つの可能性を提示し、
「後の事しりたや」
で〆る。電車の中で「へー!」ってつぶやいちゃった。私も後の事しりたや!
悲惨なストーリーも、ほんわか展開も思い浮かぶぞ。
「小松菜はゆでて置いたか、数の子は洗つたか」
なんて文章もあって、今と変わらない東京の大晦日。
20年前よりも、19世紀の小説が身近で切実なものになってきた気がする。
作品の中で描かれる人々の苦しみや格差、貧しさが、過ぎ去った時代の悲しい出来事ではなく、自分にも降りかかってくるかもしれない不幸に感じられる。
自分の顔がお金になっていることを知ったら、樋口一葉はどんな気持ちになるだろう。
笑いながら泣くんじゃないか。
あんなにお金で苦労した人を、お札に印刷するなんて。
時々、胸が痛くなる。

にごりえ・たけくらべ (新潮文庫) -
↑この本に入ってます。