2019年08月15日

アニメ「響け!ユーフォニアム」感想

 dアニメストアで、京都アニメーション制作の、
「響け!ユーフォニアム」「響け!ユーフォニアム2」
 を見ました。
 中学・高校と吹奏楽部に所属していたので、共感を超え、心が学生時代に戻ってしまいました。

 熱心にやりたい部員とぬるく楽しみたい部員の対立。
 誰がソロを吹くか問題。
 もめるトランペット、平和なバスパート、やめさせる訳にはいかないオーボエ。

 日本全国の吹奏楽部員たちは、みな同じことで悩んでいたのか?!

私「どの子の気持ちも分かる、分かるぞ! うお〜!!」
D「やかましい!」

 登場人物の描き方が一面的でないのも良かった。
 最初、お調子者なのかな? と思っていたあすか先輩が、ずるい部分もあり、誰にも言わずにいた重い感情もあると分かり、最終的に、厚みを持った一人の人間として受け止められるようになる。

 主人公の、つい本音が口に出てしまうクセや、気になる他人の行動を放っておけないところ、幼なじみや家族には無愛想になる性格も、高校生の女の子として非常に自然に感じた。

 登場人物たちの気持ちの揺れ、上手くなってゆく演奏、季節の移り変わりに合わせて変化する光や空気の色合いなど、丁寧に表現されている。
 秋になって日が短くなり、帰宅風景が「夕方」ではなく「夜」になる(おそらく時刻は同じ)
 自分の部活で経験したことだから、設定の正確さがよく分かる。

 一番感動したのは、駅ビルコンサートであすか先輩が戻ってきて「宝島」が始まる場面。
 演奏したことのある曲だと余計に「うわー!」となりますね。

 滝先生の声が「ジョジョ」で岸辺露伴を演じていた櫻井孝宏さんだった。
「いつ『ヘブンズ・ドアー』が出るのか?!」
 と初めのうちはおびえましたが、見終わってみると、滝先生の人柄が心にしっかり残りました。
 櫻井孝宏さん、一見優しいけど、一筋縄ではいかない男の役がすごく合いますね!
 ますます好きになりました。

 高校時代、私はこうやって吹奏楽を通して、自分とは違う「他者」の存在を理解していったんだな……
 過去の意味を知るような体験でした。

 劇場版の続編もあるようなので、そちらも見てみたいです。

↓「響け!ユーフォニアム」プロモーションビデオ


↓劇場版の続編「リズと青い鳥」プロモーションビデオ

 
posted by 柳屋文芸堂 at 20:49| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2019年08月07日

映画「天気の子」感想(小ネタ編)

 メインストーリーへの感想の続き、小ネタ編です。
 ネタバレありなので鑑賞後に読んでくださいね。

 物語の前半に、占い師のおばあさんが出てくる。
 口調に特徴があって、やたら胡散臭いのに、突然、話の核心をつくようなことを言い出したりする。
 端役にしては妙に印象に残るキャラだったな…… と思いつつエンドロールの出演者を見ていたら、

 占いおババ  野沢雅子

 うわー! と叫びそうになった。なんて贅沢!!
 他には島本須美さん(風の谷のナウシカ)も出演されてましたね。
 新海誠監督は私と同世代。同じようなアニメを見て育ったんだな…… としみじみした。

 今回、主人公の帆高くんの無力っぷりがかなり現実寄りだった。
 みっともなくもがく姿は心を打つ(自分が一番年上だと知る場面が特に良かった)のだけど、さすがにそれだけだと見ている側はつらくなると考えたのか、夢と憧れを担う「凪」という男の子が出てくる。モテモテの小学生で、凛々しく、機転が利き「ぼくのかんがえた最強の弟」という感じだった。
 彼とガールフレンドたちの活躍は、フィクションならではの楽しさに満ちていた。

 晴れ女の仕事の依頼人にコスプレイヤーがいて、コミケの場面が!
 馴染みのある場所が出てくると嬉しいですね。
 メインの舞台である新宿も、Dちゃんとよく歩いた街。
 歌舞伎町のゴチャゴチャした雰囲気が味わい深く描かれていた。

 「言の葉の庭」「君の名は。」「天気の子」どの作品にも新宿が出てくる。でも注目する場所や見え方は作品ごとに違い、これは「登場人物の視線がとらえた新宿」なんだなぁ、と。
 私が一番好きなのは「君の名は。」で三葉が見る南口のバスタのあたりです。

 都会にあまり来たことがない人にとっての都会。
 三葉にとってはキラキラ明るく、帆高にとっては情報が過剰な暗い街。
 受け取るものは人の気持ちで変わる。

 「天気の子」には「君の名は。」の登場人物たちの姿も。
 瀧と三葉は分かったのに、大好きなテッシーに気付かなかったよ……
 もう一度見る時、しっかり確認しよう。

 あちこちに村上春樹要素が…… というのはファンの気のせいかな。
 家出少年、面倒見の良いお姉さん、空から降る魚→海辺のカフカ 銃→1Q84 村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は予告にも登場し、天気の子をきっかけに読み始めている人もいるらしい。



 廃ビルの鳥居のそばにはつやつやしたナスが。
 この物語の黒幕はきっとあいつだ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:05| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2019年08月03日

RADWIMPS「天気の子」感想

 サントラも買いました!「天気の子」の世界を満喫してますね〜

 映画「君の名は。」を見た時、
「すごい! 日本人向けのミュージカルだ!!」
 と感激した。

 日本のアニメの、どこから見ても日本人と思われる登場人物が、ディズニー映画のように歌い出す場面を想像してみてください。
 上手く演出するのはなかなか難しいのではないかと思う。

 インド映画を見ても感じますが、登場人物が「歌ってOK 踊ってOK」となる瞬間は国ごと、文化ごとに違う。
 アメリカ人やインド人だって日常生活では感情が高ぶっても、歌や踊りで本心を吐露する訳ではないのに、映画だとOKになるのが興味深い。
 日本人は普段から感情表現が激しくないので、歌や踊りに変換すると「やり過ぎ」に見えてしまう。

 「君の名は。」では登場人物が歌う代わりにRADWIMPSの曲が流れる。
 映画の内容からほんの少しだけ距離を取った歌詞が絶妙だった。
 セリフの代弁だったら「やり過ぎ」になる。
 日本人の心を「愛してる」の方向に盛り上げるのって大変だな……

 さてさて前振りが長くなってしまった。
 今回の「天気の子」も「君の名は。」のミュージカル要素を踏襲し、感情をしっかり増幅させていました。
 特に好きなのは、予告でも使われている「グランドエスケープ」



 作詞・作曲は野田洋次郎さんで、三浦透子さんが歌っています。
 手拍子と合唱に恍惚としますね。
 「大丈夫」の歌詞も切なくて、聴くたびじーんとする。

 歌詞なしの劇伴も、コミカルなのが多くて、家事をしながら聴くと気持ちが明るくなって良い。
 「占秘館へようこそ」とか。笛が可愛い。
 映画を見ている時はストーリーを追うのに夢中だったから、サントラを聴いてようやく、
「こんな曲が流れてたのか〜」
 と驚いたりした。

 この夏はアルバム「天気の子」を繰り返し聴いて過ごします。
 元気に乗り切れますように。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:14| 音楽 | 更新情報をチェックする

2019年08月02日

映画「天気の子」感想

私「天気の子、みんなけっこう見に行ってて、ネタバレツイートをよけるのが大変になってきた〜!」
D「(ネット検索……)近所の映画館でもやってるみたいだね」
私「今日これから行くというのはどう?」

 という訳で、レイトショーで見てきました!
 午後8時以降の上映は1300円になると今回初めて知った(TOHOシネマズ)昼間より600円も安い! と思わず券売機の前で踊ってしまったよ。

 ネタバレしまくりの感想です。鑑賞後に読んでくださいね。



 雨の降り続く東京で、天気を操る能力を持つ少女・陽菜と、家出少年・帆高が、客の依頼を受けて空を晴れにする商売を始める。
 灰色の雲の下で暗くくすんだ、フリーマーケット会場、下町の民家の庭、都心の高層ビル群などが、陽菜の祈りによってみるみる日差しに包まれ、輝き出す。
 新海誠監督の真骨頂とも言うべき爽快な場面なのだけど、私はここが一番怖かった。

 努力ではなく神に与えられた不思議な力を使い、金銭を得る。
 これ、落語「死神」と同じ展開だ……!
 何の犠牲もなしに何かを得ることは出来ない。物語の中で登場人物たちの「収支」は合ってしまうだろう。
 予想通り、陽菜の肉体は失われる。

 しかし、そもそも陽菜の人生の収支は合っていたのか?
 彼女は何も悪くないのに、親を失い、貧しくなった(=生活のために晴れ女の仕事をしなければいけなくなった)
 現実の人生の収支はもともと「合わない」ものなのだ。
 物語の中で収支が合いがちなのは「そうあって欲しい」という人々の願いの表れに過ぎない。
 この世界は最初から、基本的に不条理だ。

 予告にも使われている、
「世界の形を変えてしまった」
 というセリフ。実際は、
「気候が変わってしまった世界を『直せたけど直さなかった』」
 というだけで、主人公たちが世界を変えた訳ではない。

 世界の形を変えたのは、森林伐採をし、排気ガスを出し、エアコンを使う私たちだ。
 急に反省してエアコンを止めたりしないで欲しい(熱中症で死ぬから)
 生き物には環境を変える力があり、人間のその力は特に強い。
 良い悪いではなく、そういう存在であるのを自覚して、私たちは生きていく必要がある。

 数千年前まで埼玉には「海辺」があった(縄文海進)
 あの結末はそれほど荒唐無稽なものではないと思う。

 私たちは限られた自然条件の中で、ほんの一刹那、生を許されているに過ぎない。
 そこで何を大事にするか。何を選ぶべきか。
 おのずと考えさせられるラストだった。

 ここまでがメインストーリーへの感想。
 「天気の子」は小ネタ満載で、そこも楽しかった。
 そちらの感想は別記事にしますね。

 続く!→この記事
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:21| 映画・映像 | 更新情報をチェックする
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