「家事は全部ほっぽり出して遊びに行くわよー!!」
と宣言し、その通り実行しました。
一人で。
前によいこぐまさんと三浦で遊んだ時、
「お出かけの記事って、いつもDさんと一緒なのかと思ってた」
というようなことを言われたのですが、違います。
文中、特にDについて触れてなければ、たいていそれは一人です。
結婚後の方が「お一人様」で行動する機会が多くなった気がする。
Dちゃんは忙しい上に出不精だからね。
まあもともと一人っ子のせいか、一人で何かするのに抵抗は全く無いのですが。
ラーメン屋だって定食屋だって入るよ。
身軽で気楽で大変よろしい。
さて今日のテーマは「写真を見る」
思えば今年は、写真にハマり、写真に狂った一年でしたね。
その締めくくりのようなものです。
まずは銀座「RING CUBE」の「Secret〜心で感じる写真展〜」へ。
これは、
「撮影者の名前にこだわらず、写真そのものをしっかり見ようじゃないか」
という趣旨の催し。
39人の写真家が一枚ずつ出品し、誰の作品なのか分からないよう無記名で展示しています。
菅原一剛やハービー・山口も出展しているはずなので行ったのですが、二人の作品がどれか、ビシッと当てられなかったな。
「これかな〜?」
みたいなのはあったけど(予想:菅→1 山→8)
女性的な淡い色彩のものや(20番と30番。引っかけかもしれない)教科書のカラー口絵のようなの(17番)わざと構図や印刷を絵画っぽくしたもの(15番)など、
「写真って、撮る人によってほんと全然違うものになるんだな」
というのをまざまざと感じさせて、面白かった。
私が一番気に入ったのは、写真家エリオット・アーウィットを撮影したもの(8番)
人柄を感じさせる表情がちゃんと写っていて、素晴らしい。
ずーっと見ていたい、と感じるのはこの一枚だけだった。
ま、単に私がおじいさん好きなだけかもしれないが……
他に良かったのは、
11番 牛さんの頭。触ったらゴワゴワしそう。
26番 青に黒の椰子の葉のシルエットがとても綺麗。影絵みたい。
31番 おそらく小学校の、普通の遊具に、普通の家。
大勢の子供たちの靴。普段っぽさが良い。
32番 消防士さんたち。浅田か?! これも引っかけ?!
地べたに寝転がっている人もいたりして、なかなか良い。
作者名は写真展終了後にWEBで公開するそうです。
新たな写真家との出会いとなるかな……?
その後、恵比寿へ移動し「東京都写真美術館」へ。
写真展の前にまずは腹ごしらえ。
1階にあるカフェ「シャンブル クレール」に入る。
↑スモークサーモンのオープンサンド
↑チーズ二種
手前のがマンステール、奥がキュレナンテ、だったと思う。
どちらも臭くて美味かった。
チーズの世界はまさに「くさいはうまい」(小泉武夫)だ!
この二切れで何枚でもパンが食える、という感じの味。
というかこの店、本当はベルギービールの専門店なのですよ。
成城石井でも見かけない珍しい種類が色々。あああ。
(ずっと探しているゾットはないのだけど)
さらに、こんなつまみみたいなもの食べたら……
飲みたい! 飲みたいよ!!
でも私、一本を一人で飲みきれないんだよね。
ああ、何故私を下戸に産んだのですか、母さん!
自分は飲んべえのくせに!!
それに合わせて舌は飲んべえになっちゃったんだよ、もー。
仕方なくアイスコーヒーをちゅるちゅる飲んで、店を出る。
あ、コーヒーも美味しかったんですよ。
頭の中はベルギービールでいっぱいだったけどね。
さてさて、今日の一番の目的である、
「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン
東洋と西洋のまなざし」展
の会場へ移動。
木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソンは、ともに20世紀の重要で偉大な写真家……らしいのですが、実は私、作品をきちんと見たことがありませんでした。
名前はあちこちで耳にしていましたが、そう、例えるなら、
「有名だけど読んだことのない文豪」
ですね。宇野浩二とかサルトルとか。
何故この二人を挙げたかというと、今回の展示の中に写真があったから。
宇野浩二、なんか、ヨロっとしたおじいさんでしたよ。
谷崎潤一郎がえらいふてぶてしいのと対照的。
上村松園が女だと初めて知ってびっくりしたり!
(これらは木村伊兵衛撮影)
他には、いかにも生意気そうなトルーマン・カポーティとか。
アンリ・マティスが鳩をわしづかみしたまま絵を描いていたり。
ココ・シャネルは切ないマダムで、映画以上に映画みたい。
(こっちはアンリ・カルティエ=ブレッソン撮影)
有名な人の写真だけでなく、街の庶民の写真もいっぱい。
こちらの方が、二人の違いがくっきり出ていた気がする。
木村伊兵衛の写真は、ドキュメンタリー。
芸術作品というより、記録に近い。
だからといって、芸術としての価値が低い訳ではない。
写真を撮るにしても、小説を書くにしても、まずはこういう真っ直ぐな視線で現実を見なければいけないのだと思う。
それをやらずに中途半端な個性を出したって、何の意味もない。
アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真は、フィクション。
写真がフィクションな訳ないだろ! と言われるかもしれないけど、個人が現実を切り取る以上、そこには必ず偏りが生まれ、「創作」の要素が入る。
シュルレアリスムに傾倒した時期があったそうだけど、なるほどなーと感じる作品だ。
柵のラインや、物の影、人の形など、全てのものを絵として最も面白くなる方向から撮っている。
今回の展覧会で一番グッと来たのは、
「木村伊兵衛が撮影した、アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真」と、
「アンリ・カルティエ=ブレッソンが撮影した、木村伊兵衛の写真」だ。
この二枚だけ、二人の作品の特色が交差する。
アンリ・カルティエ=ブレッソンが写っている写真は、木村伊兵衛が撮ったのに、茶目っ気たっぷりだ。
木村伊兵衛が写っている写真は、アンリ・カルティエ=ブレッソンが撮ったのに、生真面目な記録になっている。
つまりそれぞれの特長をしっかりとらえた良い写真、ということだ。
コンタクトシート(フィルムをそのまま印刷したもので、小さい写真が撮影した順に並んでいる)の比較も興味深かった。
木村伊兵衛は、人を追うように撮影している。
女の子が振り向いて立ち上がる様子とか、まるで漫画のコマみたいだ。
その人の魅力が出るシーンをずっと求めている。
アンリ・カルティエ=ブレッソンは、構図を探りながら撮影している。
縦にしたり、横にしたり、近付いたり。
一番効果的なのはどれか。
納得のいく絵になるまで、苦心しているのが分かる。
「甘くはないが滋養たっぷり」
な展覧会でした。
あー、行って良かった!
その後、美術館内にある図書館へ。
ここも素晴らしいですよ〜
展覧会のチケットを買わなくても、無料で入れて、写真集が読み放題!!
パソコンの検索システムで見たい本の情報を印刷し、カウンターに出すと、司書さんが閉架書庫から持ってきてくれます。
私は前から興味のあった浅田政志「浅田家」と、今日知ったばかりのエリオット・アーウィットの写真展カタログをお願いしました。
「浅田家」は、浅田家の父・母・兄・弟が色んな職業やシチュエーションになり切る写真集。
消防士とか、病人とか、医者とか、ヤクザとか、泥棒とか。
とにかくみんな、ものすごく楽しそう!
「こんなに手間をかけて、当たらなかったらどうするつもりだったんだろう?」
と思ったけど、
「ま、それはそれで楽しかったからOK!」
なのかもしれない。
森村泰昌のようにバリバリに変身するのではなく、ちょっと素人っぽい浮いた感じが「遊んでいる」感じで良い。
その中で、お父さんだけが妙に何をやってもハマっていて、画面を引き締めているのが可笑しい。
中村光が、
「私のマンガが好きな人ならきっと好きなんじゃないかな」
と紹介していたのが分かる気がする。
アホらしいんだけど、妙なあたたかさと、切なさがあって。
エリオット・アーウィットの写真は、古い喜劇映画のようなシーン満載でした。
ちょっとふざけてて、洒落てる。
楽屋裏で大口開けて目薬をさす女優(踊り子かな?)とか。
若い頃に映画の仕事をしていたそうで、シルエットが動きを感じさせる。
人だけでなく動物も、みんな演劇風の表情。
面白かった。
展示も図書館も楽しいので、写真が好きな方はぜひ写真美術館へ!
この後はずっと買い物。
まず、美術館のミュージアムショップ「ナディッフ バイテン」でDちゃんへのクリスマスプレゼントを
次に「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」という長い名前のパン屋でパンを
最後は成城石井でプレジデントのカマンベールチーズとクリスマス限定ベルギービールを
それぞれ購入。
満喫し過ぎて帰宅が遅くなってしまいました。
かなりご飯待たせちゃった。
Dちゃんごめん。
実は最近、落ち込み気味だったのですが、写真を沢山見たらすっかり元気になりました。
毎日を元気に過ごすためには、美味しい食べ物と芸術をバクバク食べないとね!
みなさまもこの年末年始、心身を満腹にしてくださいませ♪
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