2010年11月16日

「物」について思うこと

 10年ほど前に、お店をやっている人から聞いた話。

 ある時、馴染み客のおじいちゃんが、暗い顔をしてやってきた。
 何があったのか尋ねると、
「私は嫁の教育を失敗しました」
 との答え。
 そのお嫁さんは、おじいちゃんが贈った贈り物を、全て送り返してきたという。
 良かれと思ってやったことなのに。
 おじいちゃんには、ものすごくショックな出来事だったのだ。

「可哀想にねぇ。お嫁さんもニコニコして受け取って、送り返さずに捨てちゃえば良かったのに」
 という風にこの話は結ばれたのだが。
 私はえらいびっくりした。
 捨てちゃうのが、正解なの〜?!

 実を言うと、私はそのお嫁さんにかなり同情していた。
 自分の好みではないものが次々と送られて来るのって、恐怖ですよ。
 物は大事にしたいから、捨てることも出来ない。
 さんざん悩み苦しんだ末に「送り返す」という手段に出たのではないか。

 「捨てる」「断捨離」ブームについて見聞きするたび、このおじいちゃんとお嫁さんのことを思い出す。
 かつて日本が貧しかった頃は、物なら何でもありがたかったのだろうか。
 いやでも、戦前生まれのうちの伯母(大)は、
「そんな物、金もらったっていらないね!」
 が口癖だ。
 どんな時代でも、要らない物は要らないよね。
 単に、売る人の都合で物が増殖したような気がする。

 この間、引き出しの整理をしていて思ったのだけど、現代日本では、外から勝手に入ってくる物が異常に多い。
 景品に、贈答文化。それぞれの包装。チラシ、説明書。
 置いておけば場所を取り、片付けるには時間と労力がかかる。
 捨てることばかり推奨しても、ゴミが増えるばかり。

「物を渡すことは、迷惑行為になり得る」
 という意識を、国民全員が持つべきなのではないか。

 贈り物をする時は、何が良いか先に聞く。
(予期せぬ贈り物で人を喜ばせられるのは、優れたセンスを持つ人だけだ)

 景品は、断る自由を確保する。
(勝手に送りつけるのやめて!)

 チラシは無理に配らない。
(同人誌即売会でやりまくってます。すみませんすみません)

 せっかくのブームなんだし、この機会にみんながしっかり考えれば、物との良い関係が築けるんじゃないかな。

 ちなみに私が最も喜ぶ贈り物は、現金です。
 子供の頃から、誕生日プレゼントは現金でした。
 ……という話をすると、けっこう驚かれます。
 そのお金でショートホームステイをしたり、習い事をしたり、有効に使いましたよ。

 そうそう、物を増やさないための一番のコツは、
「お金を物ではなく『経験』のために使う」
 ではないかしら。
 旅行に行く、演劇を見る、演奏会に行く、美術を鑑賞する、勉強する、等々。
 油断しているとボールペンとかパンフとか、物も増えちゃうので気を付けて。

 読書は「物」と「経験」半々くらいだよね。
 図書館で借りられるし、買っても売りやすいし。

 食事は?
 物だけど、食べたら無くなっちゃう!
 だから大好き!(腹の脂肪はどうするの)

 お金って、稼ぐことも大事だけど、どう使うかも大事だ。
 くれぐれも、誰も喜ばない「物」のために使ったりしないように。
 他人のためではなく、自分のために生きるのが、案外、世のため人のためになるのかもしれない。

 つくづく日本って、屈折した変な国だねぇ……
posted by 柳屋文芸堂 at 18:08| 社会 | 更新情報をチェックする