恋人同士がやり取りする和歌に注目して、源氏物語を読みといてゆく、古典エッセイ。
源氏物語の解説本が多くある中、これはけっこう珍しい視点なんじゃなかろうか。
中学生の頃、平安貴族が何かというと和歌を贈るのを知って、
「面倒臭いことをしてたんだな〜」
と思った。
でも、携帯電話でメールを送るのが当たり前になった現在、彼らの感覚は逆に身近になった気がする。
後朝の文なんて、まさにそうだよね。デートの後のメールにそっくり。
ようやく我々も平安貴族なみのゆとりを手に入れたということか……?(あんまりそうは思えませんが)
言葉の壁(古語)は、万智先生がひょいっとうまく乗り越えさせてくれるので、いっそう共感しやすい。
和歌の肝が純粋に伝わってきます。
光源氏や薫(源氏物語後半の主人公)を批判的に描いている点も良かった。
今時の女の人には許せないと思うんだよね。
プンプン腹を立てながら読んだっていいんだ! と気が楽になりました。
いつもとはちょっと違う読み方がしてみたい、という源氏物語マニアの方も楽しめる本なんじゃないかしら。
源氏物語全体の流れをつかみたい、という初心者の方にもおすすめです。
ぜひどうぞ。
2011年01月06日
俵万智「愛する源氏物語」
posted by 柳屋文芸堂 at 01:06| 読書
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