2011年02月27日

檀一雄「檀流クッキング」

 あー、やっぱりこの人の文章、好きだ〜!!
 これは「料理エッセイ」というより「レシピ本」です。
 それでもやっぱり、文章が魅力的なのだ。

 今度の日曜日は、「東坡肉」つくりで、一日を棒に振ってみるがよろしいだろう。

 梅干だの、ラッキョウだの、何だか、むずかしい、七めんどうくさい、神々しい、神がかりでなくっちゃとてもできっこない、というようなことを勿体ぶって申し述べる先生方のいうことを、一切聞くな。檀のいうことを聞け。

 お互いに、人生を十二分に生き抜きたい同士だから、夏バテなどしてはいられない。

 ソーメンをサラサラすすり込むだけでは、ノド元は涼しかろうが、夏バテがやってくるに相違なく、自分の体がソーメンのようになるだろう。


「七めんどうくさい、神々しい、神がかりでなくっちゃとてもできっこない」
 この「神々しい」という単語による転換。
 全体のリズム。
 素晴らしいなぁ〜
 音読すると本当に気持ちいい。ラップみたい。

 檀一雄は「最後の無頼派」と言われたそうで、太宰治や坂口安吾との交流の話もよく出てきます。
 でも、檀一雄の文章からは、この二人みたいな暗さや皮肉っぽさを感じない。
 この人が人生で最も大切にしたのは、
「愉快であること」
 なのではなかろうか。

 楽しさ、喜び、美味しさ。
 そういった明るくキラキラしたものを得るために、全力を尽くしている。
 まあ、その過程で周りに迷惑をかけまくるのが、無頼派らしい所なのかもしれない。

 この本には、手間と時間のかかる料理も色々載っている。
「これはちょっと大変そう」
 とつい思ってしまうのだけど、そうやって手間を惜しんで、時間を省いて、私は料理以外の「何を」やろうというのだろう。
 下ごしらえの手間。
 グツグツと煮込む時間。
 その一瞬一瞬が積み重なって「充実した人生」になるというのに。

 美味しいものを愛する人は、ぜひ読んでみてください。
 肉を使った料理が多いし、男性の料理好きに一番すすめたいです。
 レシピはそれほど細かくないので、全くの初心者がこの本だけ見て料理を作るのはちとキツイかな。
 そういう方は、読みものとして楽しめば問題なし。

 夏になったら、川上弘美も毎日食べたという「オクラのおろし和え」が作りたい。
 他にも試してみたい料理がいっぱいあって、また付箋まみれに。
 最高の文芸にして、最高のレシピ。
 これって、前衛的かも……
posted by 柳屋文芸堂 at 23:14| 読書 | 更新情報をチェックする