「円城塔」という作家がいることは知っていたけれど、
「難解な小説を書く人」
というイメージが強くて、本を開いたことはなかった。
それが、この間の芥川賞。
インタビューでその姿を初めて見て、驚いた。
「何この普通っぽい人! ほとんどサラリーマンじゃん!!」
もっととんがった人だと勝手に想像していたのです。
インタビューでさらにびっくり。
「読めないという方がいらっしゃるのは、本当に私の力不足としかいいようがなくて」
ええーっ
「読めない奴は読まなきゃいい」
って本当は思ってるんじゃないの?
それとも本気で謙虚なの?
何だかものすごく興味をひかれて本屋に走り、一番安かった(文庫だから)
「Self-Reference ENGINE」
を読んでみました。
ど…… どこが難解なの?
めちゃくちゃ面白いじゃんかーっ!!
100回くらい笑いましたよ。ほんと。
この本を理解する条件は二つ。
1、物理学科を出ていること
2、前衛文学に親しんでいること
ってそんな奴、私以外で会ったことないよ!
どっちも世間ではマイノリティだもの。
マイノリティの中のマイノリティ。
という訳で、
「まるで私のために書かれたみたいな小説〜♪」
と叫び続けました。
なんという幸福。
私の支離滅裂な人生も、
「円城塔を読むためにあったのだ」
と思えば報われます。
しかし「物理学科出身の前衛文学マニア」だけのための小説だったら、プロとして活動出来る訳がない。
Amazonのレビューでも、
「分からないけど面白い」
と書いている人が多い。
この本を楽しむ条件は、もう少しゆるいのだろう。
1、科学や数学に関心、もしくは憧れがある(得意でなくても大丈夫)
2、荒唐無稽な物語に抵抗がない(「荒川アンダーザブリッジ」が読めればOK)
たぶん円城塔は、全力で分かりやすく書いているのだと思う。
たとえ話を豊富に出すところとか、教え方の上手かった大学の先生を思い出す。
でも残念ながら、物理の思考法はどうやったって、慣れてない人には難解なのだ。
屁理屈みたいのが続いた後に、絶対に文章でしかたどり着けない美しい場面がさっと出てきたりして、そこは読む人みんなが(理解した人も、楽しんだ人も)共通して感動するのだと思う。
素敵ですね。
「物理学科出身の前衛文学マニア」がもしここを見ていて円城塔を読んでいなかったら、今すぐ買いなさい!
ああもう、なんで今まで読まなかったんだ。
バカバカバカ〜
2012年01月24日
円城塔「Self-Reference ENGINE」
posted by 柳屋文芸堂 at 01:36| 読書
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