2012年03月18日

霧の中の風景

 幼い姉弟が、見たこともない、本当にいるかどうかも分からない父親に会うため、あての無い旅をする、というストーリーの映画。

 子どもが会ったことのない親に恋い焦がれる物語は世の中に沢山あって、私はその全てに共感出来ない。
 何しろ私は父親を知らない私生児で、子どもの頃から一貫して、父親を欲したことがない。
 うちには母に加えて伯母(大)と伯母(小)がおり、時折ふらっとやって来る伯父(小)、家族を築いた伯父(大)に叔父、その奥さんや子どもたちと、はっきり言って血縁・親族のたぐいは母方だけでお腹いっぱいなのである。
 わざわざ苦労してこれを増やしたいと思うかね。

 まあそんな訳で、この映画にもちょっと「乗れない」ところはあったのだけど、前から興味のあったテオ・アンゲロプロス監督の作品だったので、頑張って見てみました。
 突然大人たちが木のように動かなくなったり、ポエトリーリーディングのようなセリフがあったり、映画内で演劇が行われているような不思議な映像。

 映画館(新文芸坐)を出た後、池袋駅の雑踏が、巨大な舞台と俳優たちに見えたのは面白かった。
 それを経験した後、現実の見え方が変わる作品は良い作品、だと私は思う。

 テオ・アンゲロプロス監督は今年一月、交通事故で亡くなったので、追悼上映があちこちであるようです。
 今日も古くからのファンと思われるおじさま達がいっぱい来ていました。
 男性用トイレに行列が出来ていて驚いたよ。
posted by 柳屋文芸堂 at 23:45| 映画・映像 | 更新情報をチェックする