2012年05月15日

東京ドーム1個分

 私の通っていた大学は、後楽園駅のすぐそばにある。
 一年生の時は水道橋駅を使っていたので、毎日、東京ドームの横を通った。
(水道橋駅→東京ドーム→後楽園駅→大学 で徒歩15分くらいかな)

 東京ドームは、裏側にも通路があるのをご存知ですか。
 表の広場みたいな道ではなく、小石川後楽園に接している方。
 細くて人があまりいないので、彼氏(Dちゃんではない)と歩く時はよくそちらを選んだ。
 途中で体を触られたり、抱き合ったり、それをクラスの男子に目撃されたり。
 若いねぇ。

 そんな風に仲良しだった彼氏との関係も、秋の終わりくらいからだんだん雲行きが怪しくなってきた。
 些細なことですぐ喧嘩になるのだ。

 季節はもう冬だったと思う。
 後楽園の駅ビルに入っているマクドナルドで、彼氏は私の「食べ方が気に食わない」と文句を言い始めた。
 確かに私の食事の仕方は全然上品じゃない。

 いったいどんな食べ方をしたら納得してもらえるのだろう。
 なるべく口を大きく開けないようにしたり、あまりもぐもぐしないよう気を付けたり。
 そのうち食べ物の味がよく分からなくなってきた。

 私はその場にいるのに耐えられなくなり、彼氏がゴミを捨てに行っている隙に走り出した。
 とりあえず水道橋駅へ。
 裏道に行く理由もないので、表の道をひた走る。

 その日、東京ドームは閑散としていた。
 邪魔するものは何もないので全力疾走。 
 勝手に涙がポロポロこぼれて、気が付くとエーンエーンと大声上げて泣いていた。

 彼氏は私を追いかけてきてつかまえた。
 一人で帰ってしまうつもりだったのに。
 幼稚園児みたいになっている自分がひどくみじめだった。
 なんで私たちは一緒にいるんだろう?

「▲▲はどうして私を好きになったの」
「のりちゃんと一緒にいたら楽しいだろうな、って思ったから」

 東京ドーム半周を泣きながら全力疾走するなんて、なかなか楽しい女じゃないか!
 と思えるのは別れて18年経った今だから。
 こんな泣いてばかりの女と一緒にいても全然楽しくないよね。
 文句を言う彼氏が悪いのか、文句を言われてしまう私が悪いのか、ついに最後まで分からなかったけど。

「東京ドーム○○個分」
 という言い回しを聞くたびに、私は微笑んでしまう。
 それ得意。ばっちり分かる。
 裏の道も表の道も、ちゃんと体で測ったからね。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:43| 思い出 | 更新情報をチェックする