2012年11月21日

柳屋文芸堂の文学フリマレポート(長くてすみません)

 文学フリマ前日、本の荷造りをしていたら、
「そのカバンには夢がいっぱい詰まってるの?」
 とDちゃんにからかわれた。
 そうさ、売れないと分かっていても、つい、たくさん持って行こうとしちゃうのさ……

 当日は浜松町で売り子のちかさんにばったり会った。
 モノレール内で漫画の特装版の話になり、
「テルマエ・ロマエのおち○ちん持ってるよー」
 と大声で叫んでしまった。

 自宅の鍵に付けているティンティナブラム(あの形の魔除けのお守り)をぶらぶらさせつつハッとする。
 公共の場で言って良い単語じゃなかったな。
 一人の心ないおばさんの行動が文学フリマの品位を下げたかもしれない。
 すみません。
 
 会場で売り場作りを済ませると、事務局代表の望月さんの挨拶が。
 注意事項の、
「ヱヴァのネタバレをしない」
 が良かったですね。

 望月さんの落ち着いた姿を見るたび、
「この人、四つも年下なんだよなー」
 とショックを受けます。
 何故私はアホな小学生の頭のまんま、歳だけ食ってしまったのか。
 
 開場してしばらくすると、上得意のHさんが来てくれました。
 何年も前から、新刊が出るたび必ず買ってくれるのである。
 名前を知る前は本当に神様の使いなんじゃないかと疑っていた。
「鳴かず飛ばずでもめげずに頑張れよ」
 というメッセージを届けてくれているのだと。
 個人的におしゃべりもするようになり、相手が人間だと分かった今も、どうしてこんな風に応援してくれるのか、分からない。

 人間は神様ではない。
 でも体の一部分だけが神様、ということはあり得るのだろう。
 その神様の面を私に向けてくれているのだ。
 うん、どう解釈しても奇跡だわ。

 今回、お隣のサークルさんとはほとんどお話しなかったのですが(ひっきりなしにお客さんが来て忙しそうだった)うちのポスターがはがれた時にガムテープを貸してくれたり、とても親切な方でした。
 オタクおばちゃん二人がうるさくしてすみません。
 スペースでカレーを食べて、あたり一帯の空気をスパイシーにしたりな……

 文学フリマ名物ターリー屋のカレー、ご飯の横に付いている刻んだキムチみたいなのが気に入っている。
 妙にカレーに合う。あれは何なんだろう。
 今回、遅く行ったのがいけなかったのか冷えていたのが残念で、
「温かければ三倍美味しくなるのに…… 誰かレンジでチンして……」
 と(脳内で)泣きながら食べました。

 食べている途中でサークル「温泉卵と黙黙大根」の武田さんが来てくれた。
 本を買ってもらい(うっかりカレーが付いちゃったかも……)色々お話しした。
 サークル名の由来を聞けたのが嬉しかったなぁ。

 武田若千さんと高橋百三さんの二人サークルなのですが、
「温泉卵でーす!」
「黙黙大根でーす!」
「二人合わせて『温泉卵と黙黙大根』!」
 というものでは全くないそうです。

 武田さんの木漏れ日のようなあたたかい文章と、高橋さんの月影のようなひやりとする物語が、組み合わせとして素晴らしい。
 もっと話題になっていいのにー
 といつも思っている。
  
 積読本が減ってきたので、買う気満々で他のスペースを見て回った。
 本を試し読みしている間、その本にかける熱い思いを語る人が多くて参った。
 こっちは結婚相手を選ぶくらいの集中力で文章を読んでいるのだ。
 邪魔しないで。

 電子書籍を売っているサークルも熱心に説明してくれたなぁ。
「見るための機械を持ってないんで……」
 と断りました。iPadが無いときついと思うんだよね。

 全体的に硬派な文章が多い印象。
 パンフレットを見ると、純文学ジャンルで活動しているサークルが60以上ある。
 私が昔「純文学製造・販売」という看板を掲げてコミケやコミティアに出ていた頃、純文学ジャンルは明らかに少数派だった。
 青臭く文学を追求する人たちに場所が出来たのは、ありがたいことですね。

 まあ私は現在ジャンルを変えて、ラブコメなんぞ書いている訳ですが。
 書きたい内容は自分でどうこう出来るものじゃないから。

 詩・短歌を中心に小説少々、という感じに見ていった結果、知らないサークルで買ったのは一冊だけ。
 サークル「スタジオ本脳寺」の「詐欺師はじめました」
 ジャンルは青春短歌(と勝手に命名)

 きみといた思い出ばかりのこの街は夏の間に爆破しないと

 とかとか。甘酸っぱい……!!

 知り合いの作品になるが、ぶりおさんの「デュエルカンパニー」も面白かった。
 小さい絵本で、サラリーマンを使ったカードゲームのパロディ。
「土の属性を持つ同期」
 って何だよ。

 ぶりおさんはうちのスペースにも来てくれたので、
「デュエルカンパニー最高でした!」
 と伝えると、
「僕もなかなか良いと思ってるんです」
 とニコニコ。
 変に謙遜しないところがステキだ。

 彼の驚異のデッサン力を文章でマネするのは不可能だけど、あのおっとりしたストーリー展開には学ぶべき点が多くあると思う。
 どの作品も読み終えた後「えー」とつぶやかずにはいられない。
 作風も本人も大好きだ。

 見本誌コーナーは三分の一ほど見て疲れてやめました。
 読めば読むほど、どれが良いのかよく分からなくなってくる。
 どんな文章が、人の心をつかむのだろう。

 アマチュア文芸で活動している人は基本的に「○○賞受賞」「この△△がすごい第1位」というようなブランドを持っていない。
 本の表紙と文章だけで勝負しなければいけない。
 知らない誰かに見初めてもらうには、川端康成の「眠れる美女」並みに強烈な一行目が必要なのではないか。

 逆に言うと、文学フリマで売れなかったとしても、自分を全否定する必要は全くない。
 あの会場にいる全員が、全部の作品を読んで、良い物を選んでいる訳じゃないんだもの。
 たまたま自分に合う作品と(あるいは自分に合う読者と)出会えなかっただけなのかもしれない。
 もちろん買ってもらうために作品の力を伸ばす努力をするのは大切なことだけれども。

「同人誌を選ぶのって難しいよねー」
 と売り子のちかさんに言うと、
「買って良かった、と心底思えるのは100冊のうち1冊。
 でもその喜びが、普通の本とは比べられないくらい物凄いから」
 うーむ、さすが22年間夏冬コミケほぼ皆勤のオタクである。
 オタク文化を支えているのは、彼女のような「ど根性読み専」なんだと思う。

 彼女を讃えるために、会場の隣のコンビニ(便利!)でヱヴァのポテトチップスを買う。
 おまけのカードを開けて、
「何、この負け戦!!」
 と叫ぶちかさん。
 初号機が使徒にやられている場面でした。
「カヲルくんが欲しかったのに……」←腐女子
 目的のカードのために、人命救助のマット代わりになるくらい買えば良いと思うよ。
(虚構新聞ネタより)

 うちの新刊は、
「オカマ先生の恋愛レッスン」
「オカマ板前と春樹カフェ」
 の二冊。
 表紙を拡大したポスターを机の前に貼ったので「オカマ」「板前」「春樹」あたりの単語に「オッ」となって本を見てくれたお客さんが多かったようだ。

 十年以上サークル活動を続けていると、せっかく即売会で仲良くなったのに、その後会えなくなってしまう人がけっこういる。
 文学フリマで最も再会したかったのは、肉十八さん。
 最後に話したのは秋葉原の会場ではないか。

 彼はいつも、即売会には不釣合いなほど洒落たスーツを着ていた。
 それが全くイヤミに感じない。
 すらりとした美男子で、最初に本を買ってもらった時には、正直ポーッとなった。
「こんな色男に私のふざけた文章を読ませて良いものだろうか……?」

 その後、彼が私なんて足元にも及ばない程ふざけた小説を書く人だということが判明する。
 何しろペンネームが肉十八だもんな。

 あの麗しい外見と、毎度バカバカしい「笑いの文学」
 ああ、肉十八を失ったのは文学フリマにとって大きな損失である。
 っていうか私にとって大損害だ。
 肉さんに会いたい。肉さーん!!
 と騒いでいたら。

 閉会三分前になって、スペースの前に肉十八さんが現れたのだ!
「キャーッ 抱きしめたい!!」
 マジで腕広げてたよね(と、のちにちかさんは語った)
 しかし旦那のいる身なので過ちを犯す訳にもいかず、てのひらをパチンと打ち合って再会を喜ぶ。
 いやはや驚いた。
 急に召喚魔法が使えるようになったのかと思った。

 お仕事で忙しいご様子でしたが、いつか時間が出来たら、また作品を発表して欲しいです。
 ああいう文章を書ける人ってなかなかいないもの。

 そんなこんなで楽しい時間を過ごした文学フリマ。
 売上げは、
「万歳三唱するほどではないが、責任を取って切腹するほどでもない」
 まあボチボチですな。

 読んだ方が満足してくれる作品を作れるように、今後も精進します。
 インパクトのある一行目も考えてみます。

 会場でお会いしたみなさま、ありがとうございましたー!!


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posted by 柳屋文芸堂 at 11:01| 同人活動 | 更新情報をチェックする