2012年11月23日

冨田勲「イーハトーヴ」交響曲世界初演(出演・初音ミク)感想

 ミクが出る、というだけでそそくさとS席を取ってしまったD&私。
 冨田勲さんのことなんて全く知りませんでした。すみません。
 現代音楽の作曲家ということで、
「ドンガラガッシャーン!」
 みたいな曲だったら嫌だなぁ、と思っていたのですが、映画音楽なども手がけてきた方のようで、ドラマティックで聴きやすい曲ばかりでホッとしました。

 「イーハトーヴ」交響曲は宮沢賢治の作品を元にして作られた、七つの楽章からなる大曲です。
 編成もすごくて、オーケストラに児童合唱・男声合唱・女声合唱が付き、上のスクリーンでミクが歌って踊る!
 児童合唱にかなり泣いた。やっぱり賢治の世界って感じがするからね。
 ミクの声は最初オーケストラの音色に合わないような気がしてヒヤヒヤしたけど、第5楽章「銀河鉄道の夜」あたりになると彼女の幻想的な存在感が、音楽の中に自然に溶けていったように思います。

 ミク(というかボーカロイド)の面白さの一つに、
「作曲家が歌い手のキャラを作れる」
 というのがある。
 同じように初音ミクを使っていても、声質の設定や歌わせ方の違いで、
「わがままなアイドル」
「内気な女の子」
「父親に首を締められている娘」
 などなど、色んな「何か」になれるのだ。

 冨田さんの話で興味深かったのが、
「初音ミクに、トシのイメージを重ねた」
 というもの。「永訣の朝」などに出てくる、若くして亡くなった賢治の妹ですね。

「人間の声から作られた電子音」
 である初音ミクの声が、
「片足を死の世界に置いている者」
 のささやきになるのだ。

 初音ミクそのものは、何者でもない。
 作曲家は初音ミクという井戸を覗き込み、何かを見つける。
 その「何か」をみんなに伝えたくなる。
 オーケストラを使って。
 ニコニコ動画を使って。
 大御所も無名の学生もその気持ちは同じだと思うと、微笑ましいですね。

 しかしまあ、80歳を越えてミクの魅力を理解し、あんな大曲を仕上げてしまうエネルギー!
 ご本人も会場にいらしていて、席も近かった(さすがのS席)
「おじいちゃん、超良かったよ〜!!」
 と言って抱きしめたかったなぁ(無礼者)
posted by 柳屋文芸堂 at 23:35| 音楽 | 更新情報をチェックする