2013年03月09日

福島香織「中国絶望工場の若者たち」感想

 Twitterで福島香織さんを知り、文章が好みだな〜 と思って読んでみました。
 元新聞記者のジャーナリストの方なのですが、若い頃から小説をいっぱい読んできたような感じがするのだ。
 政治や経済への興味からジャーナリズムに向かったのではなく、
「人間を描写したい」
 という欲求がまず根底にあり、そこから記者になったんじゃなかろうか。

 この本でも、取材対象の人々が活き活きと描かれています。
 期待通りで嬉しい。

 テーマになっているのは「第二代農民工」と呼ばれる中国の若い労働者たち。
 中国には「農村戸籍」と「都市戸籍」という戸籍上の差別があって、都市で生まれても、都市で暮らしていても、農民の親から生まれれば「農村戸籍」となる。
 「第二代農民工」は実質的には農業をやっていない、農村戸籍を持った都市民。
 安い賃金で、日系企業の工場や、アップル社製品を作っているフォックスコンの工場等でも働いている。

 本業が農業だった親世代の「老一代農民工」と違って、その子供世代に当たる第二代農民工は高校や大学を出ていることが多く、携帯電話やパソコンが使え、情報は都市民と同じだけ持っている。
 にも関わらず差別は厳然としてあり、非人間的な労働を強いる工場で働かされ、希望を失ってゆく。
 時には不満がストライキやデモや暴動として噴出する。

 この本には第二代農民工へのインタビューがいくつも出てくる。
 その中の一人の言葉、
「もっと私たちのこと、よく見て、心がある人間として扱って」
 が、全ての第二代農民工に共通する叫びのように感じた。

 過酷な労働の話ばかりではなく、夢を持って活動している第二代農民工も出てきて、ホッとします。
 ブログを書くのが日課で、物書きを目指している事務職の男性が他人と思えなかったな。

 出張で中国へ行ったり、中国で商売をしたり、中国人と関わる可能性のある人はぜひ読んでみて下さい。
 中国社会の闇と力が伝わって来ると思いますよ。
posted by 柳屋文芸堂 at 21:52| 読書 | 更新情報をチェックする