2013年05月17日

スチュアート・ウッズ「警察署長」感想

 桜庭一樹が「赤朽葉家の伝説」を書く時に参考にしたという、スチュアート・ウッズの「警察署長」を読んでみました。
 村といっても良いような田舎町で、異常な死体が発見される。
 設定だけ見ると横溝正史みたいだが、驚くほど似ていない。
 名探偵がいないのだ。

 するとどうなるか。
 40年以上にわたって40人以上の人間が同じ方法で殺され続けちゃうのである。
 おいおいおい……
 
 犯人探しはそれほど難しくない、のだが、まず警察署長があんまり優秀じゃない。
 一話目の主人公である初代署長は農場主から転職したばかりで手際が悪く、二話目の主人公(三代目署長)はアホ過ぎて本人が暴力沙汰を起こす。
 三話目の主人公(五代目くらいか)は切れ者だが、黒人であるため差別により捜査を阻まれる。

 物語の舞台になっているのは1920年〜1960年代のアメリカ南部。
 第二次世界大戦を挟んで黒人の立場が大きく変化していった時代。
 生活苦と病気で錯乱した黒人が白人を殺したり、地位が向上し裕福になった黒人を白人が殺したり、妊娠中の若奥さまが散弾銃でKKK(クー・クラックス・クラン)を追っ払ったり(なかなか痛快)みんな日常の中の暴力や殺人だけで手一杯。
 非日常的な猟奇殺人に注意を払う余裕なんてないのだ。

 でもさあ、40年以上40人以上放置は困るよ。
 名探偵は謎を解くだけで殺人を防ぐことは出来ない、なんて思ってたけど、予防効果あるんだね。
 いないと困る。
 世の中には未解決事件がごまんとある訳で、「警察署長」の世界の方が現実なんだろうなぁ。

 ストップ、連続殺人!
 全ての市区町村に名探偵を!!
posted by 柳屋文芸堂 at 02:08| 読書 | 更新情報をチェックする