2013年07月15日

枡野浩一「石川くん」感想

 石川啄木のダメ男っぷりを、いびるように描いたエッセイ集。
 噂には聞いてましたが、ここまでダメだったんですねぇ。
 
 一度でも俺に頭を下げさせた
 やつら全員
 死にますように

 (現代語訳)

 一度でも我に頭を下げさせし
 人みな死ねと
 いのりてしこと

 (原文)

 現代語訳すごい、と思ったら、ほとんど原文そのままなのに気付いて戦慄。

 友達の自慢話に
 相づちをうつ
 ボランティアしてる気持ちで

 (現代語訳)

 うぬ惚るる友に
 合槌うちてゐぬ
 施輿(ほどこし)をするごとき心に

 (原文)

 これなんか、原文の方が性格の悪さがよりいっそう強く伝わってくる気がしませんか?
 短歌だけでなく、本人の日記に出て来る女遊びの様子なども紹介されています。
 同じダメ男でも太宰治は、
「一緒に心中したい!」
 と思うくらい素敵に感じるんだけど、石川啄木に手首を突っ込まれたいとは思えないなー(どこに突っ込むか知りたい人は「石川くん」を読んでね!)

 金田一(京助)くんが人生のありとあらゆる場面で石川くんを助けてくれる。
 金を貸したり、家族のトラブルを解決したり、死後に全集を出したり(←これが大ヒット)
 何でこんな親切にしたのだろう。
 同郷だから? 才能を信じていたから?

 Wikipediaの「石川啄木」のページには、

 京助は啄木のために家財を売って用立てていたため、当時の春彦はその様子をみて幼心に「石川啄木は石川五右衛門の子孫ではないか」と疑ったことがあったという

 なんて文章があるよ。
 理由は全然分からないけど、そういう周囲の人たちの努力のおかげで石川くんの作品は後世に残り、人々の心を慰め続けている。
 どんな立派な言葉より、ダメさの方が永遠を勝ち取る。
 聖人君子は存在せず、みんなどこかしら必ずダメ人間だから。

 夏の「何もしたくなーい」暑いダルい午後に、寝転んで読むのにぴったりの本です。
 集英社文庫の「ナツイチ」フェアに入っているので、本屋の目立つところに置いてあるはず。
 イラストも可愛いし、ぜひ見てみてください♪
posted by 柳屋文芸堂 at 00:51| 読書 | 更新情報をチェックする