2013年08月08日

「ひろしま―石内都・遺されたものたち」感想

 3つ前の記事に書いた映画の話。
 ダイオウイカをくれた友人が誘ってくれたのだけど、正直、最初に題名を見た時には、
「重そうだなぁ……」
 と恐れるような気持ちになった。
 しかし想像していたよりずっと冷静で、見やすい映画でした。

 石内都さんという写真家が、広島の遺品を撮影し、カナダのバンクーバーで写真展を行う。
 石内都さん本人や、会場で写真を見た人、学芸員へのインタビューが映像のメイン。
 人の話す言葉、そこにある沢山の「思い」がこの映画の主人公だ。

 石内都さんは「ひろしま」の前に自分の母親の遺品を撮影した「Mother's」という作品集がある。
 これについて、
「個的な母が、作品になって見られることで『みんなの母』になる」
 という内容のことを言っていて、芸術の基本だなぁ、と思った。
 普通の人が撮影したら、「自分の母」は「自分の母」で終わってしまうのだ。

 他にも、
「念力をこめて撮ってる。写ってね、って」
「写真にひとり歩きして欲しい」
 など印象的な言葉が多くありました。

 会場で写真を見た男の子の、
「痛かっただろう」
 という感想も、大人たちのやや頭でっかちな意見より本質的で良かった。
 撃たれた相手の痛みを理解して撃つ人間なんて一人もいない。
 少年よ、ここはとんでもない世界なんだ。
 
 カナダの学芸員の、
「彼女の作品には、美と痛みがある」
 という解説。
 良心の強い人のようで、そのことに戸惑いを感じているようだった。
 戦争の、しかも傷ついた(そして亡くなった)人の物を美しく感じて良いのかと。

 広島平和記念資料館の学芸員は、
「もんぺの下に可愛いワンピースを着ていたのを、石内さんと発見したんです」
 と嬉しそうに語った。
 戦時中の女性たちは美しいものを禁じられて、せめて内側だけでもとおしゃれしていたのだ。
 8月なのに重ね着……!

 両方とも、美を扱うことの多い学芸員らしい言葉だ。
 「美しさ」は何故、不謹慎とされるのだろうか。
 世界のどこでも尊ばれるものなのに。

 この映画のテーマは戦争や原爆ではなく、
「作品を作り、それを通して何かを伝えること」
 ではないかと思った。
 そう感じたのは、私が「何か伝えたい」と常々考えている人間だからかもしれないけれど。

 映画鑑賞後に思い出して書いたので、上のセリフは正確な引用ではありません。
 ご容赦を。

 神保町の岩波ホールで、8月16日(金)まで上映。
 映画の公式サイトはこちら
 他の劇場でも公開されるようです。
 
 写真好きの方に特におすすめしたい。
 気負わずどうぞ。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:30| 映画・映像 | 更新情報をチェックする