2013年10月03日

五百羅漢に会いに行く

 2012年2月10日(金)に埼玉県川越市の喜多院へ行きました。
 その時の記録です。

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 川越に「五百羅漢」というのがあるという。羅漢というのは仏教の世界の聖者で、その像が五百体そろっているのが五百羅漢。
 何だか凄そうなので行ってみることにした。

 川越駅西口から出ている「小江戸巡回バス」に乗る。これは川越市内を回っている観光路線バスだ。運転手さんが市内の歴史や伝説をしゃべりながら進んでゆく。運転に集中出来ないのでは? と、ちと不安。
 五百羅漢のある喜多院が近付くと、こんな話をしてくれた。

「夜中に羅漢様の頭を一体ずつ撫でていった人がいるそうです。すると一つだけ、人肌の羅漢様がいて、顔を見ると亡くなった親だったという……」

 何それ、ホラー? ちょっと良い話?
 想像すると、やわらかくあたたかい感触が手に伝わってくるんですが。

 奇妙な気持ちのまま、「喜多院」というバス停で下りる。入り口の目の前という訳ではないようだ。少し歩くと「紋蔵庵」というお菓子屋さんがあった。

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 目的地に着いてもいないのに茶をしばく私。でもこの「つばさかりん」は美味しいのだ。いもまんじゅうみたいなものなのだが(さつまいもは川越の名物)外側がかりん糖っぽくなっていて香ばしい。前に川越の友人からもらって、よく覚えていた。

 紋蔵庵から山門はすぐだ。喜多院の中の土産物屋で、
「五百羅漢が見たいのですが」
 と尋ねると、券の売り場を教えてくれた。本堂の中や五百羅漢を見るには四百円かかる。

 お金を払って戻ったら、土産物屋が券を切って五百羅漢の所に通してくれた。この人たちはただ土産物を売っているだけでなく、五百羅漢を守っているのだな。

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 それほど広くない場所に、羅漢様たちはギュウギュウと立ったり座ったりしている。
 入った途端、そのざわめきに圧倒された。

「おお小娘、よく来たね」
「写真かい? そんなの慣れてるよ」
「俺を選ぶなんてシブいな」
「良いの撮れたかい?」

 バカバカしい、と言われるかもしれない。しかし本当に声が聞こえる気がするのだ。恐ろしさも感じるのだけど、全体的に歓迎してくれている雰囲気がある。カメラのレンズを向けると、ポーズを取っている気配さえしたりした。

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 平日だったこともあり、入場者は私の他に二、三人だけだ。その人たちもすぐに出て行ってしまったので、ほぼ私一人が「五百羅漢、独り占め」である(ハーレム?)

 とり憑かれたようにバシャバシャ写真を撮っていると、門の外側から外国人の声が聞こえた。全部の顔がdifferentだとか何とか言って、柵の隙間からカメラのレンズを差し入れている。

 せっかくなんだから近くで見ていきなさいよ、と思い、
「You can enter.」
 と話しかけたら、
「あー、知ってます。つい張り付いちゃって」
 と同行の日本人の人に返された。

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↑寝ている羅漢様もいます。

 私は全く信心深い人間ではないのだけれど、この場に満ちる宗教的な幸福感はとても否定出来ない。宗教に抵抗がある人には、
「像を作った人と、像を守ってきた人の思いの力」
 と言えば納得してもらえるだろうか。

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 帰りに再び「紋蔵庵」に寄る。行きに食べた「つばさかりん」を土産にしようと思ったのに、
「本日分のつばさかりんは終了しました」
 という板がケースの上に立っている。
「あー! やられたー」
 と思わず大声出しちゃったわ。

 バス停に行くと次のバスまで時間がある。何しろ二月の夕方、極寒である。風邪をひいてはかなわないと、バス停前のカフェ「アンティ」に入る。

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 ランチが終わってディナーになる前の中途半端な時間だったので、お茶とお菓子だけだろうと思っていた。でも一応、
「食事は出来ますか?」
 と尋ねてみたところ、カレーを出せるという。わーい!

 カレーはタイ風グリーンカレーで、口に入れると体がポカポカしてきた。思いのほか体が冷えていたみたいだ。ああ、助かった。このお店の人も羅漢様なのね……
 来てすぐさまガツガツ食ったから、カレーの写真は無し!

 あたたかくなった体と心で五百羅漢を思い出すと、涙が出てきた。もちろん悲しいからではなく、幸せで。あそこ、好きだわ〜

 バスの時刻が迫ってきたので、デザートのドーナツはテイクアウトにしてもらい、バス停で食べていた。するとお店の女性がエプロンのまま道を渡って追いかけてきた。

「どのバスを待ってます?」
「ええと、四時五十八分のです」
「あれ、おかしい…… あっ、一月にダイヤが改正されてる!」

 彼女は古い方の時刻表を見て、
「この時間はバスが無いじゃない!」
 と心配して、私の所に来てくれたそう。なんて親切な。
 バスは時刻表通りすぐ来た。

 帰りのバスでも運転手さんが色んな話をしてくれた。川越城内にある三芳野神社が童謡「通りゃんせ」発祥の地である(スパイと間違えられて帰って来ない人がいた)とか、映画「ウォーターボーイズ」のモデルになったのは川越高校の水泳部だとか、川越にはまだまだ行くべき場所が沢山あるようだ。

 川越は普通のバスの路線も充実しているので、必ず「小江戸巡回バス」に乗らなければいけない訳ではないが、説明が面白かったので乗って良かったと思った。

 川越駅前に到着し、
「お話、楽しかったです〜♪」
 と言いながら、金を払わずにバスを降りそうになった(アホだ)

 ついでに、
「運転手さんが川越で一番オススメなのはどこですか?」
 と聞いてみた。

「喜多院、中院ですね」
「あ〜 喜多院は今日行って来ました。五百羅漢がすごく良かったです」
「あと一月半くらいで枝垂れ桜が満開になりますので」
「その頃また来ます!」

 楽しみですね。

(五百羅漢に会いに行く 終わり)

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posted by 柳屋文芸堂 at 00:32| 地元(千葉・埼玉)ネタ | 更新情報をチェックする