2014年11月23日

邦楽夜会

 さてさて、昨日の記事で書いた邦楽夜会の話。
 案内役は長唄の唄方(唄う人)である杵屋三七郎さん。

 三七郎さんの声は本当に美しい。
 邦楽界では異質に感じるほど澄んでいて、天までぽーんと飛んでいくんじゃないかと思うような、どこまでもはっきりと伸びる声。

 かと言ってクラシックの声楽的な歌い方では全くない。
 あくまで邦楽なのだけど、一節聴けば、どの音楽ジャンルが好きかに関係なく、
「この人、すげぇ!!」
 ってことが即座に分かるはず。

 そんな三七郎さんと、芸達者な三味線方(三味線を弾く人)、囃子方(太鼓などを打つ人)のみなさんが、邦楽の面白さを伝えてくれる。
 楽しい上に勉強になる会でした。

 一番心に残ったのが、下座音楽の実演。
 下座音楽は歌舞伎のBGMで、その場面の様子を音やメロディで表現します。

 一番想像しやすいのは、お笑い番組のコントのお化け。
「ひゅ〜 ドロドロドロ……」
 っていうのが必ず流れるでしょう。
 ああいうのが、様々な場面ごとに決まっているのです。

「シャラリシャラリシャン♪」
 というメロディが聞こえたら、
「登場人物たちは川のそばにいるんだな〜」
「シャンシャンシャンシャン……♪」
 というメロディが聞こえたら、
「吉原が舞台か……」

 同じ遊郭でも江戸と上方では違うメロディを使うと決まっていたり。
 江戸は歯切れ良く、上方ははんなり。

 文字だと音程が表現出来なくて申し訳ない。
 時代劇で使われることもあるそうなので、聴いたらすぐに、
「あーっ、これね!」
 とうなずく人も多いのかもしれない。

 寺の場面で演奏される「木魚の合方」なんてのもある。
(合方は、楽器のみで演奏するメロディのこと)
「これが流れた後はたいてい良いことは起こらないですね!」
 というコメントが可笑しかった。

 「雪」を表す音楽もある。
 しんしんと降り積もる、本当は音のない、白い世界。
 その「無音」をあえて音で表現する。

 音楽の部の後に落語とお芝居もあったのだけど、そこでこの「雪の音」が大活躍。
 落語は立川志の春さんの「宿屋の仇討」
 普通落語にBGMを付けることは無いそうなのですが、今回は特別に前半の演奏者のみなさんが陰で演奏して、歌舞伎風の演出になっていました。

 印象的な雪の場面があり、雪の音が心に刻まれた。
 雪の中の殺人。血で真っ赤に染まる夜の底。

 他にも俗曲や小唄なども聴けて、邦楽の世界の広さ、深さを改めて感じることが出来ました。
 私は歌舞伎を見に行くと役者を見るより音楽を聴くことに集中してしまうのですが、
「そういうのって邪道なのかな〜」
 とちょっと悩んでいた。
 他の歌舞伎ファンが役者の話で盛り上がっていても入れないしね。

 でも、やっぱり歌舞伎の音楽はすごいよ! 魅力的だよ!!
 BGMだけでもこれだけ豊かなんだもの。
 それ以外にメインの音楽である長唄・義太夫・常磐津・清元なんかもあってさ。

 私は囃子だけの音楽で能のような雰囲気になった後、三味線が入って明るくくだける瞬間が好き。
 ジェットコースターで下降する時のフワッとした気持ちに似てる。
 あれを味わうために劇場に行っていると言っても良い。

 今回の下座音楽講座によって、
「今後も邪道な歌舞伎鑑賞を続けよう!」
 と力づけられました。
 ああ早く、劇の中で雪の音を確かめたい。

 邦楽というのは習わないとなかなか馴染めない世界かもしれませんが、テレビで歌舞伎を見る機会があったら「音楽番組」として「聴いて」みると良いかもしれない。
 きっと歌舞伎という文化が持っている厚みを知ることが出来るはず。

 杵屋三七郎さんのホームページはこちらです。
posted by 柳屋文芸堂 at 22:58| 音楽 | 更新情報をチェックする