2015年01月09日

Kさんのこと

 人との縁は不思議だ。
 Kさんは中学時代の知り合いなのだけど、クラスも部活も別で、特別親しく話したことはなかった。

 関係としては「友だちの友だち」
 物静かな人で、大勢で集まった時にもしゃしゃり出て騒いだりせずに、端の方で穏やかに微笑んでいる。
 ユリやバラではなく、すみれかれんげのような可愛らしい女の子だった。

 中三の時だったと思う。友人たちは原稿を持ち寄って同人誌を作った。
 何か一つのテーマがあった訳ではなく、それぞれが好きなものを書いたように記憶している。

 白眉は友人Tの「夏の葬列」を元にした四コマ漫画。
 教科書に載っている小説をパロディ化しているのがパンクな感じで、小気味好かった。

 その本に、Kさんの作品も載っていた。
 イラスト数点で、最も心に残ったのが、ハンプティ・ダンプティ。
 周りがみな漫画的な絵を描く中、彼女の絵は絵画的だった。
 筆使いに特徴があり、中学生女子とは思えないほど作り出す画面が渋い。

 Kさんの印象と、彼女のイラストの印象がずいぶん違っていたので驚いた。
 そしてデッサン力の高さや、流行に流されない彼女の姿勢に打たれた。

 友人Tも彼女には一目置いていたようで、
「Kさんの絵が何とも言えず良いんだよね」
「私も好き〜!」
 と盛り上がった。

 さてその後、友人Tとは交流を続け、同人活動にも巻き込んだりしたが
(私の小説「鳥のいる場所」「大賢者大森賢五郎」などに挿絵を入れてくれました)
 Kさんと会うことはなかった。

 もともと仲が良かった訳ではないから(悪かった訳でもないけど)連絡の取りようがない。
 それでも何となく彼女のことが忘れられなくて、結婚して引っ越した年だったろうか、図々しく年賀状を出してみた。

 すると、返事が来たのである。
 次の年も。次の年も。
 私はファンレターを送るような気持ちで友人ではない友人に年賀状を送り続け、彼女は律儀に返事を返してくれた。
 彼女の真面目さに甘えているようで申し訳なく思いながらも、彼女の存在を感じられるのが嬉しかった。

 今年も彼女からハガキが届いた。
 喪中だったようで寒中見舞いだったけれど、文章は優しくあたたかかった。

「のり子さんからの年賀状、毎年楽しく拝読させてもらっています。
 私もパワーをもらえているんですよ!」

 30代になった彼女はどんな風に微笑んでいるのだろう。
 決して才能をひけらかすことのなかった可憐な少女が、私の心の陽だまりにいる。
posted by 柳屋文芸堂 at 16:30| 友達 | 更新情報をチェックする