2015年03月23日

オノ・ナツメ「子連れ同心」感想

 妻を亡くし、子育てしながら働く同心のお話。
 同心というのは江戸時代の警察官みたいな役職ですね。
 十手を持っていて、
「八丁堀の旦那〜!」
 とか呼ばれたりする……

 そういう設定ですが、特別な事件が起きたりはしません。
 ちょっとしたいざこざを解決している様子はあるけれど、それは背景のようなもの。
 一番詳しく描かれているのは、同心と息子のほのぼのとした日々の暮らし。
 初鰹を食べたり、団子を作ったり。

 オノ・ナツメの別の作品「not simple」を思い出した。
 家族の愛を求め、父、母、姉に会うために放浪を続け、結局全員の心がバラバラになっていることを確認し、死んでしまう主人公。
 「子連れ同心」とは真逆の雰囲気だ。
 その中にこんなセリフがある。

「歩いてると、よく親切な人と出会う。
 今ここにこうしていられるのはその人たちのおかげだと思う。
 あたたかいよね。
 でも、本当に感じたいのは、もっと近くにいる人たちからのぬくもりなのに」


 「子連れ同心」は「近くにいる人たちからのぬくもり」にあふれている。
 2つの作品は真逆のようでいて、裏と表というか、主人公が求めているもの、大事に思っていることは全く一緒だ。

 人が人を想うというのは、なんて優しく切ないのだろう。
 どんな関係であっても。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:49| 読書 | 更新情報をチェックする