2015年03月28日

村上春樹の性描写

 村上春樹が好き、と言うと、
「性描写が多いから苦手」
 と返されることがたびたびあり、不思議に思っていた。

 確かにまあ性描写はあるけれど、食べ物描写や音楽描写だって多いし、そもそも村上春樹の性描写は性を表現することを第一に考えている訳じゃない気がして、あれを単純に性描写と言って良いのだろうか。

  期間限定サイト「村上さんのところ」で村上春樹はこんな風に書いている。

「僕は小説家として性というものを、魂と魂を結びつける通路のひとつとして捉え、そのように描いています。しかしもちろん性だけがその通路ではありません。ほかにいろんな通路があります。というか、性はその通路のひとつのメタファーに過ぎないかもしれません」

 性的に興奮したり、美味しいご飯を食べたり、美しい音楽を聴いたりする時、頭の中がいつもと違う状態になる。
 常日頃人間をまともにし、縛り付けている常識や現実が、一瞬緩む。
 村上春樹はその隙間を狙って、非現実的な物語を読者の心に注ぎ込むのだと思う。

 性も食べ物も音楽も、飾りではなく扉なのだ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:57| 読書 | 更新情報をチェックする