2015年07月13日

僕たちは五家宝(ごかぼ)を食べながら、永遠にファミコンをやるつもりでいた

「食べたことないな」

 転校生のタツヤくんは五家宝を知らなかった。
 やわらかいおこしにきな粉をまぶしたお菓子で、ほんのり甘い。
 これを二つ口に頬張り、タツヤくんはスーパーマリオを始めた。

 横顔を見ると、唇がきな粉まみれだった。
 ペロッと舐めてしまいたいと思った。
 僕はひどく幼くて、きな粉が好きなのかタツヤくんが好きなのか、区別がついていなかった。

「うわーっ!」
 マリオが画面の外に落ちてゆく。
 タツヤくんはTシャツの袖で口をこすった。

「周ちゃんの番!」
「うん」

 僕たちは五家宝を食べながら、永遠にファミコンをやるつもりでいた。
 僕がタツヤくんを愛し、タツヤくんが女の子を愛する日が来るなんて、想像もせずに。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 15:33| ショートストーリー | 更新情報をチェックする