2015年07月26日

月の光、和太鼓の音

 夜空の下、紅白のちょうちんが揺れる。
 やぐらを囲む踊りの輪。

 同級生たちはTシャツにキュロット姿で、綿あめやあんずあめを舐めている。
 おしゃれなアユミちゃんは花柄の黄色い浴衣。
 みんな遊びに来ている。

 あたしは毎年ハッピしか着ない。
 あたしにとって、夏祭りはもっと真剣なものなんだ。

「なっちもスイカ食べな〜」
「いらない!」
 子供会のおばさんが勧めるのをきっぱりと断って、あたしはやぐらに駆け登る。

 ほら、予想通り。
 大好きな炭坑節がかかった。

 月が出た出た 月が出た
 どどんがどん タカタッタ!

 スイカは明日だって明後日だって食べられる。
 けれども小五の夏祭りは、一生に一度しかない。

 一曲でも多く、誰よりも大きな音で打つんだ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:21| ショートストーリー | 更新情報をチェックする