2015年07月30日

残雪「かつて描かれたことのない境地」感想

 残雪(ツァンシュエ)は1953年生まれの中国の女性作家。
 この本は短篇集で、どれも不思議な話ばかりだ。
 他の作家にはない、彼女の作品を読んだ時にしか味わえない感触。

 残雪の小説は、夜見る夢に似ている。
「自分が見た夢について語っている」
 というのではない。
 残雪の本を読むことが、そのまま「夢を見ている」状態になる。

 夜見る夢というのは奇妙だ。
 現実とも、映画やドラマのように作られた物語とも違う。
 おばあさんがライオンになったり、全然知らない人と知り合いであるかのように延々と会話したり、明らかに何かがおかしいのに、妙に説得力がある。
 「変だな」とうすうす感じたとしても、夢を見ている間は抵抗もせずに受け入れてしまう。

 残雪が生きたこの60年、中国では文化大革命や経済の急成長など、追いつけないほどのスピードで価値観が変化した。
 大量の夢を見続けなければ、心をまともに保つことは出来なかっただろう。
 夢は逃避ではなく、無意識も含めた記憶の整理だ。

 解釈などせずに、ただ彼女とともに夢を見るように読んだ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:18| 読書 | 更新情報をチェックする