2015年09月20日

憧れの松茸

 松茸というキノコは、すごく高くて、すごく香りが良いらしい。
「食べてみたい!」
 小学生の私がそう言うと、伯母はその日のうちに買ってきてくれた。

 電熱器に焼き網をのせ、手で縦に裂いた松茸を置く。
「もう良いだろう」
 伯母の合図で小皿に移し、鼻を近付けて匂いをかいでみた。

「ロッキーの臭いだーっ!」

 ロッキーというのは当時飼っていたマルチーズの名前である。
 マルチーズと言ったって、チーズではなく犬だ。
 毛まみれで獣臭い。

 これが良い香りなの……?
 いや、ロッキーのことは大好きなんだけど。

 あの時の松茸がイマイチなものだったのか。
 それとも元々松茸というのは犬臭いものなのか。

 それを確認するためだけに買うには、松茸は高過ぎる。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:11| ショートストーリー | 更新情報をチェックする