その人たちを登場人物にして小説を書く訳だけれど、小説の材料にするために彼らを作ったのではない。
彼らがいるから、彼らを外に出すために小説を書くのだ。
私は彼らの世界と現実の世界、半々で生きているので、100%現実で生きている人たちに比べると、かなりぼんやりしているのではないかと思う。
こういうのって精神病の一種だろうかと、時々不安になる。
しかし彼らが私に害を与えたことは一度もないのだ。
現実の人間は私を傷付けたり、悩ませたり、困惑させたり、不愉快にしたり、嫌なことを色々してくる。
けれども架空の人物たちは、絶対私にそんなことしない。
私が喜んでいると一緒に喜んだり、私が悲しんでいると一緒に泣いたりする。
彼らがいるおかげでずいぶん心が楽になっている気がする。
まあ、そっちの世界に行っちゃって家事がおろそかになったりするのは少し困るかな。
へそから金貨が出る病気がもしあったとしたら、それを治すべきだろうか。
確かに異常事態だ。
でも治してしまったら、金貨が出てこなくなる。
私のへそからは残念ながら(?)金貨は出てこない。
しかし頭の中には次々に実在しない誰かがやって来て、何年も住み続け、お互いに知り合って社会を築いている。
彼らを描いた小説はあんまりお金にならない(ほんと、残念ながら……)
けれどもお金以上の何かを私にくれる。
私はこの不思議な病気を、大切に守ろうと決めている。