2016年05月26日

「谷崎潤一郎文学の着物を見る」感想

 小説書き仲間のみなさんと、弥生美術館で開催中の、
「耽美 華麗 悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る〜アンティーク着物と挿絵の饗宴〜」
 という展示を見てきました(公式サイトはこちら

 Twitterでは頻繁に交流しているものの、同人誌即売会以外の場所で小説を書く方たちと会うことはほとんどないのです。
 しかも一緒に谷崎、ですよ!
 こんなチャンスめったにないよな〜 とワクワクドキドキでした。

 谷崎潤一郎は文章のリズムが好きで「細雪」「春琴抄」「卍」あたりは読んでいるのですが、全作制覇している訳ではない。
 特に今回の展示で中心になりそうな「痴人の愛」が未読で、大丈夫かな〜 と心配していたら、全く問題なかった。
 読んでいなくても「痴人の愛」の凄まじい内容がよ〜く分かるようになっていた!

 自分で育て上げた少女「ナオミ」がすっかり小悪魔になってしまい、最初は腹を立てていたものの、最終的には喜んで奴隷になった譲治のお話。
 まず、ナオミが着ていた大胆な着物の再現が楽しい。
 ただ派手なのではなく、狂乱を感じさせる艶やかさ。
 衣装と肉体と精神はほぼイコールでつながっているんじゃないかと思った。

 そして一番素晴らしかったのは、譲治に馬乗りになるナオミを描いた挿絵。
 「痴人の愛」には実際にそういう場面があるのです。
 絵柄がリアルな上に、カラー。

 ちゃんと原作を読んでいるSさんは、
「譲治が格好良すぎる気がするけど、これはこれであり!」
 もっと情けない男が美少女にハマるイメージらしい。

 Sさんの谷崎イチオシは「鍵」で、私は一緒に紹介されていた「瘋癲(ふうてん)老人日記」を読んでみたいと思った。
 どちらも老人の性を扱った作品。
 息子のお嫁さんにかまってもらいたくて泣き出す爺さんとか、痛々しいのか可笑しいのか。

 特別な事件ではなく卑近な日常を描くことで、人間というのがどんなものなのか浮かび上がらせる谷崎の手法。
 知らず知らず影響を受けていたのかも、なんてことも思った。

 着物の布や柄についての文章もかなり細かく、だからこそ今回の展示のような着物の再現が出来た。
 私も登場人物の衣装をきちんと描けるようになりたいなー
 何度も書き直されて真っ黒になっている生原稿にも心を打たれました。

 気に入った文章を一つ引用。
「恋というものは一つの芝居なんだから、筋を考えなければ駄目よ」
 (「黒白」より)

 谷崎潤一郎や着物が好きな人はもちろん、人間の本性に興味のある方ならきっと楽しめるはず。

 弥生美術館は根津駅から徒歩7分。
 この展示は6月26日まで。
 秋には山岸凉子展をやるみたいよ……!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:38| 美術 | 更新情報をチェックする