2016年09月26日

残忍な殺人より、優馬が直人の◯◯◯◯を◯◯◯ことの方が許せない(映画「怒り」感想)

(※犯人が誰かは書いていませんが、優馬(妻夫木聡)と直人(綾野剛)の話の展開には触れているので、どんなネタバレもイヤ! という人は映画鑑賞後に読んでください)


 同棲していた直人が突然姿を消し、警察から優馬のところに、
「大西直人さんをご存知ですか?」
 と電話がかかってくる。

 直人は逃亡中の殺人犯なのではないかという疑いを強めた優馬は、直人の持ち物を捨ててゆく。
 洗面台に並ぶ歯ブラシ。直人がいつも着ていた服。
 殺人犯をかくまった証拠を隠滅するための行為は、優馬の暮らしの中に直人の存在がいかに深く入り込んでいたかを細やかに見せてゆく。

 半狂乱になって直人を愛した日々を消そうとする優馬の姿は痛々しく、心打たれ、またそこから犯人が狂気を露わにする場面につながっていくのが見事、なんだけど。

 映画館からの帰り、私は延々、
「くっそぉ〜 優馬めぇ〜! 直人の歯ブラシを捨てやがってぇ〜!!」
 と腹を立てまくった。

「好きな人が使ったり、身につけたりしていた物」
 というのはすでにただの物ではない。
 そこには好きな人の魂が乗り移っている。体の一部のようなものだ。

 原作の優馬は直人の物を捨てたりしないんですよ。
 文章と映像では表現出来るものが違うから、直訳するようにそのまま映像化すると印象が薄くなる。
 言葉による心情の吐露で表されていた優馬の愛の苦しみが、映像では「物を捨てる」という「行動」に置き換わっていて、優馬の酷さと直人への愛情が原作より三割増しに感じられた。
 本当に素晴らしい。素晴らしいのだけど。

 直人の歯ブラシっ……!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:27| 映画・映像 | 更新情報をチェックする