2016年12月23日

神様、どうか今夜だけは(「怒り」二次創作)

 都合の良い相手だと思っていた。
 男を取っ替え引っ替えしている遊び人に、身の上話をする必要はない。
 欲望だけでつながって、飽きられるまで家に泊まらせてもらえば、貯金を減らさずに済む。

 優馬の真剣な視線に気付いたのはいつだったろう。
 いっそこれが自惚れなら。
 自分から家を出れば優馬の傷は浅くなるのかもしれないが、生きている限り一緒にいたかった。
 優馬はお母さんを亡くしたばかりだというのに。

 優馬からメールが届く。
『俺が帰るまでメシ食うな』
 なんでだよ。再びの着信音。
『ローストチキン買ったから』

 この幸せが永遠に続くと信じている男の笑顔が浮かび、じっと目を閉じる。
 神様、どうか今夜だけは、俺の心臓を止めないでください。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:27| ショートストーリー | 更新情報をチェックする