2018年02月09日

頭木弘樹(編訳)「絶望名人カフカの人生論」感想

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫) -
絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫) -

 社会的に成功したり、お金持ちになったりするのもきっと大変だろうけど(私はなってないから想像するだけ)「ただ生きる」だけでもずいぶん大変だよなぁ、と常々感じていた。
 それは錯覚ではなかった。
 同じような重たさを、一生感じ続けた人がいた!

 それは小説家のカフカ。
 この「絶望名人カフカの人生論」は、彼のネガティブな名言ばかりを集めた本です。
「分かる! 分かるよ、カフカ〜」
 と叫びながらあちこち付箋だらけにして読みました。

 社会的な責任をどれだけ少なくしても(私は親でも会社員でもない)責任が0になることはない。
 この、何を捨てても残ってしまうぼんやりとした重たさは、
「私として生きなければいけない責任」
 なのだと分かった。

 カフカはその繊細な性質のせいで、この重みを意識し過ぎた。
 この責任から逃れるには、死ぬよりほかない。
 しかしカフカは自殺もしなかった。

「内面生活の描写以外、他のどんなことも、ぼくを満足させられないのだ」

 私が一番共感した文章。
 いやほんと、なんでなんでしょうね?
 内面生活の描写をしている時のあの喜びは他では絶対に得られないもので、あの瞬間だけ私は孤独でなくなる気がする。
 そこにあるのは私の内面と、その内面を表す文字だけで、実際には世界から切り離されているというのに。
 だからこそ、だろうか。

 世の中には、ポジティブな考え方や、順調に生きているように見える人々があふれている。
 けれども実際は、そういうものに押しつぶされそうになっている人の方が多いのではないか。
 カフカの言葉は暗くて真面目で、そのせいでかえって可笑しい、というものが多いし、全ての言葉に頭木さんの解説が入っていて読みやすい。

 冬の寒さと現代社会に疲れている皆さん、ぜひどうぞ。
 誰にも気がねせずに、ガンガン絶望しようぜ……!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:48| 読書 | 更新情報をチェックする