2015年07月13日

僕たちは五家宝(ごかぼ)を食べながら、永遠にファミコンをやるつもりでいた

「食べたことないな」

 転校生のタツヤくんは五家宝を知らなかった。
 やわらかいおこしにきな粉をまぶしたお菓子で、ほんのり甘い。
 これを二つ口に頬張り、タツヤくんはスーパーマリオを始めた。

 横顔を見ると、唇がきな粉まみれだった。
 ペロッと舐めてしまいたいと思った。
 僕はひどく幼くて、きな粉が好きなのかタツヤくんが好きなのか、区別がついていなかった。

「うわーっ!」
 マリオが画面の外に落ちてゆく。
 タツヤくんはTシャツの袖で口をこすった。

「周ちゃんの番!」
「うん」

 僕たちは五家宝を食べながら、永遠にファミコンをやるつもりでいた。
 僕がタツヤくんを愛し、タツヤくんが女の子を愛する日が来るなんて、想像もせずに。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 15:33| ショートストーリー | 更新情報をチェックする

2014年12月13日

クリスマスBL

 恋人と過ごす毎日はどんなかなって、前はよく考えてた。
 きっとあったかくて幸せで、明日が来るのが楽しみで仕方ない、そういう夢のような日々が訪れるのだと、無邪気に信じていた。

 恋人が出来て初めてのクリスマス。
 キラキラ輝くイルミネーションとは反対に、僕の心は暗く沈んでいる。
 彼氏とうまくいってない訳じゃない。
 メールの返事はいつも優しいし、会いに行くと、本当に嬉しそうな笑顔で僕を迎えてくれる。

 でもそれは、付き合って間もないせいかもしれない。
 僕たちはまだ一度もケンカをしていない。
 長く一緒にいれば、きっとどこかで意見がぶつかるはずだ。

 僕たちはそれを乗り越えられるだろうか。
 言うつもりのない酷い言葉で傷付けて、二度と関係を修復出来なかったらどうしよう。

 失うのが怖くて、悪い結末ばかり考えてしまう。
 来年のクリスマスには、イルミネーションを一人で見ることになったら……

 僕は頭をぶんぶん振って考えを変える。
 これが最後だって良いじゃないか。
 今日のデートを、今の優しさを心に刻み込んだら、それだって僕には十分過ぎる宝物になるのだから。

 ツリーの形をした白い光の中で、黒い影絵になった彼氏が大きく手を振る。
 表情は見えないけど、どんな顔をしているか、僕にははっきり分かる。

 毎年おなじみのクリスマスソングがシャンシャン響き、何も心配せずに浮かれなさい、と言われているような気がした。

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 私はクリスマスが苦手です。
 目がチカチカするイルミネーションに、アホみたいに繰り返されるクリスマスソング。
 毎年ほんとうんざり。
 上記のようなたわいないBLを妄想してどうにか乗り切ってます。
posted by 柳屋文芸堂 at 15:21| ショートストーリー | 更新情報をチェックする