2018年08月22日

星野ルネ「まんが アフリカ少年が日本で育った結果」感想

まんが アフリカ少年が日本で育った結果
まんが アフリカ少年が日本で育った結果

 ネットで見かけた漫画がほのぼのしていて良いなぁと思い、書籍版を楽しみにしていました。
 ルネさんは見た目100%アフリカ(カメルーン)人、4歳直前に来日し兵庫県姫路市で育ったので、日本語(関西弁)がほぼ母国語。
 カメルーン人が日本人の集団の中で暮らす、という特異な状況に対して、ルネさん御本人や周囲の人が「関西弁でツッコミを入れる」
 この「異文化の接触」と「関西弁」の相性が良いんだな。
 いっぱい笑った!

 人間というのは「イメージ」によってこの世界を把握している。
 「外国人」のイメージ→日本語を話せない。日本のことをよく知らない。英語を話す。
 関西弁とフランス語を話し(日本で育ったから当たり前に)日本のことを知っているルネさんは、周囲の人々の「イメージ」を飛び越えてしまう。

 ルネさんは戸惑う人々を批判しない。
 あまりに度々でうんざりもしているだろうけど、あきれつつ怒らないでツッコミを入れてネタにして楽しんでいる。

 人間は何故ここまで「イメージ」に囚われるのか。
 今、目の前にある世界を「全く知らない状況」として毎回一から把握していくのは大変だ。
 「イメージ」によって世界を単純化すると、考えたり想像したりする回数を減らせる。
 そうやって無意識に思考や時間を節約しているのだろう。
 「イメージ」に合わない人を犠牲にすれば済むだけだ。

 人間の脳にはあるがままの世界を受け入れる力があると、私は信じている。
 たくさん考えたり想像したりすれば良いのだ。
 漫画や小説のような「物語」は、イメージを作りもするし、壊しもする。
 ルネさんの漫画は良いイメージを作り、狭いイメージを壊している。

 関西の人が描く「おかん」って素敵ですね(これもイメージだ)
 又吉直樹やダウンタウンの松ちゃんがエッセイの中で描くおかんを思い出す。
 民族衣装を着て入学式に来て、カメルーンのピリ辛スープをお弁当に持たせたりする「おかん」
 お母さんというのはおおむね素晴らしいものなのだろうけど、イタリア人と関西人は躊躇せずに母への愛を表現する。

 ルネさんの漫画は色彩が明るく鮮やかで美しい。
 本の三分の一くらいがフルカラーなのが嬉しかった。
 ヤシの木やパンの実など、日本では馴染みのない植物、食べ物の紹介も興味深かった。



 これは私がルネさんを知るきっかけになったツイート。
 最近の作品のようで、今回の本には入っていない。
 続刊を楽しみにしています♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:32| 読書 | 更新情報をチェックする

2018年03月20日

鶴谷香央理「メタモルフォーゼの縁側」感想

 ここのところ母親が体調を崩していて、それを心配するあまり自分も心身の調子を崩す、という困った状態になっています。
 心配したって母親の体が治るわけでもないのにほんとムダ、と思うのだけど、愛する家族が苦しがっていると、それをそのまま引っかぶってしまう脆弱な私なのでした。
 元気に助けに行かなきゃいけないのに、もう……

 そんな辛い時間、「メタモルフォーゼの縁側」という漫画にずいぶん救われました。
 75歳のおばあちゃんと高校生の女の子がBLを通じて仲良くなる、というお話。
 遠慮したり悶々としたりしながらも、着実に近付いてゆく二人がすごーく可愛い。

 おばあちゃんにも高校生にも「生きてゆくしんどさ」があって、それがじわーっと伝わってくる。
 泣きわめくような激しい描き方ではなく、ささやかな、誰にでもあるような一瞬。
 そういうキツさを、二人はBLの優しい世界に支えられながら乗り切ってゆく。

 二人がBLに救われているように、私も二人に救われて、何だか作中世界と自分の暮らしがつながっているようで、物語は日々を生き抜くためにあるのだと、改めて強く感じた。

 75歳のおばあちゃんに萌えながら、81歳のおばあちゃん(=母)の介護、頑張りますね。
 スマホの壁紙もこれにしましたよ。見るたび心がちょっと軽くなる。

 ネットで無料で読めますのでぜひどうぞ〜(こちら
 本にもなるみたいで、発売が楽しみ〜♪

メタモルフォーゼの縁側(1) -
メタモルフォーゼの縁側(1) -
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:38| 読書 | 更新情報をチェックする

2018年02月09日

頭木弘樹(編訳)「絶望名人カフカの人生論」感想

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫) -
絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫) -

 社会的に成功したり、お金持ちになったりするのもきっと大変だろうけど(私はなってないから想像するだけ)「ただ生きる」だけでもずいぶん大変だよなぁ、と常々感じていた。
 それは錯覚ではなかった。
 同じような重たさを、一生感じ続けた人がいた!

 それは小説家のカフカ。
 この「絶望名人カフカの人生論」は、彼のネガティブな名言ばかりを集めた本です。
「分かる! 分かるよ、カフカ〜」
 と叫びながらあちこち付箋だらけにして読みました。

 社会的な責任をどれだけ少なくしても(私は親でも会社員でもない)責任が0になることはない。
 この、何を捨てても残ってしまうぼんやりとした重たさは、
「私として生きなければいけない責任」
 なのだと分かった。

 カフカはその繊細な性質のせいで、この重みを意識し過ぎた。
 この責任から逃れるには、死ぬよりほかない。
 しかしカフカは自殺もしなかった。

「内面生活の描写以外、他のどんなことも、ぼくを満足させられないのだ」

 私が一番共感した文章。
 いやほんと、なんでなんでしょうね?
 内面生活の描写をしている時のあの喜びは他では絶対に得られないもので、あの瞬間だけ私は孤独でなくなる気がする。
 そこにあるのは私の内面と、その内面を表す文字だけで、実際には世界から切り離されているというのに。
 だからこそ、だろうか。

 世の中には、ポジティブな考え方や、順調に生きているように見える人々があふれている。
 けれども実際は、そういうものに押しつぶされそうになっている人の方が多いのではないか。
 カフカの言葉は暗くて真面目で、そのせいでかえって可笑しい、というものが多いし、全ての言葉に頭木さんの解説が入っていて読みやすい。

 冬の寒さと現代社会に疲れている皆さん、ぜひどうぞ。
 誰にも気がねせずに、ガンガン絶望しようぜ……!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 10:48| 読書 | 更新情報をチェックする

2018年01月30日

山口仲美「100分de名著ブックス 清少納言 枕草子」感想

NHK「100分de名著」ブックス 清少納言 枕草子 -
NHK「100分de名著」ブックス 清少納言 枕草子 -

 『犬は「びよ」と鳴いていた』の山口仲美先生が担当している、ということで読んでみました。
 擬音語・擬態語の研究者というイメージでしたが、古典文学の内容の紹介もお上手なんですね。
 解説が堅苦しくなく、現代語訳がちょっときゃぴきゃぴしていて、
「言葉と文学がとにかく大好き!!」
 というのが伝わってきます。

 一番可笑しかったのは、清少納言の元夫の話。
 脳みそ筋肉のタイプだったらしく、今昔物語集にも武勇伝が残っているそう。
 枕草子には「ワカメ事件」の顛末が書かれている。
 悪い人じゃないんだけど、どうにも野暮で、清少納言と長く付き合うのは無理だよなぁ。

 100分de名著は、放送に合わせて発売されるムック版の方が安く、注が本文の下に付いていて便利。
(ブックス版は注が章の最後にまとまっている)
 その代わり、ブックス版にはムック版にはない特別章が追加されている。
 清少納言と紫式部と和泉式部の文体の違いを実際に例を挙げながら見ていくというもので、これが面白かった!

 和泉式部の歌にはレトリック(枕詞や引き歌などの技法)がほとんど使われていない、というのに「なるほど!」と。
 だから現代人も表現の壁を感じずに共感出来るんですね。

 それに較べると紫式部の歌は恐ろしく技巧的で、散文にも歌語を使ったりする。
 源氏物語の世界は、彼女が選ぶ言葉によってきらびやかになっていたんだな、と。 

 山口先生は清少納言を「感動型ではなく観察型」と表現していて、あっと思った。
 私は感動を求めて生きていないのです。
 「物語」は感動至上主義なところがあって、ずっと違和感を感じていた。
 感動するより、新たな価値観を発見したり、意外なエピソードに笑ったりしたい。
 そんな気持ちから、自分で小説を書くくせに、読むのはエッセイの方が多かった。

 私も清少納言のように「観察型」を目指すべきなのかもしれない。
 観察力ないけど、観察するように心がけることなら出来るはず。

 感動と観察だけでなく、韻文(和歌)と散文(エッセイや物語)を書く時の心の持ち方の違いなど、文学に親しむたびにぼんやりと感じていた境界が、しっかり見えてきた気がする。

 エッセイが好きな人はもちろん、和歌や短歌が好きな人にもおすすめしたい。
 古典が苦手でも問題なく読めますので、ぜひどうぞ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 12:56| 読書 | 更新情報をチェックする

2018年01月05日

読んだ漫画2017(自分用メモ)

1
九井諒子
ダンジョン飯4
KADOKAWA
ライオスがレッドドラゴンについて語るおまけ漫画が可笑しかった。

2
九井諒子
ダンジョン飯5
KADOKAWA
マルシルの石化が可笑しかった。

3
オノ・ナツメ
ACCA13区監察課6
スクウェア・エニックス
最終巻。美味しい策略漫画、というのが新鮮で面白かった。対立より文化(特に食文化)の多様性を描くことに重点を置いており、現在に相応しく感じた。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:14| 読書 | 更新情報をチェックする

読んだ本2017(自分用メモ)

1
唐橋史
さんた・るちやによる十三秒間の福音
史文庫〜ふひとふみくら〜
近世初期のキリシタン弾圧の話で、メインとなるのは斬首刑の場面。ジョージ・オーウェルの「絞首刑」という文章を思い出した。オーウェルは若い頃、警察官をしていたから、主人公である同心・孫四郎と仕事が似ている。タイトルにある「十三秒間」というのは首を切られてから死ぬまでの時間。この十三秒間に何が起き、それによって周囲の人々にどんな変化が起きたかは克明に描かれているが、十三秒間の意義についての説明はない。解釈は読者に委ねられている。るちやがもたらした十三秒間は、人々に死の本質を教えたのではなかろうか。理屈ではなく、体に感じる震えとして。自分とは無関係であったはずのキリシタンが、まさに自分の人生の先にある死の体現者として迫ってくる。その世界を一変させるような恐怖。生きている者はいつか必ず死ぬ。その運命からは誰も逃れることが出来ない。にもかかわらず、死が本当のところどんなものなのか、誰も知ることは出来ない。知った瞬間にそれについて語れなくなる、それが死だ。全ての人にとって謎であり、全ての人が辿り着く「死」は、どれだけ時代が変わっても、物語を生み出す最大の源泉であり続けるだろう。孫四郎はその後どんな人生を送ったのか…… 短編集で、表題作の他に二編入っている。ぼんやりしているけど優しい「のろ八」が、幕末の壊れてゆく江戸を右往左往する「smile」も切なくて良かった。

2
又吉直樹×堀本裕樹
芸人と俳人
集英社
お笑いと俳句の視点から言葉について語り合うような本なのかな、と思って買ってみたら、けっこう本格的な俳句の入門書で、勉強にもなったし、何より面白かった。俳人の堀本裕樹が、芸人である又吉直樹に俳句を基礎から教えてゆく。この堀本さんの態度が素晴らしい。相手が有名な芸能人だからと卑屈になることなく、ごく自然に「先生」として振る舞う。色んなことを勝手に気にしてどんどん疲れていくタイプの又吉直樹を気遣いながら、彼独自の感性を生かせるように俳句の技を伝授していく。堀本裕樹が又吉直樹に対する挨拶句として作った、
 なつかしき男と仰ぐ帰燕かな
 解説を読む前から、なつかしき男というのは又吉直樹のことだと分かった。無頼派マニアで自意識が強く、文学的な陰鬱の気配を常にまとっている。私も彼に懐かしさを感じたし、若い頃「自分には言葉しかない」と思いつめていた堀本にとってはなおさらそうだったろうと思う。又吉直樹の気質や才能に対する、堀本裕樹の愛情。堀本裕樹の知識や技術に対する、又吉直樹の敬意。どちらも本当にあたたかくて、もうこれはBLとして読んでも良いのでは。怒られるかな…… 最後の方、吟行で又吉直樹が作った、
 蟻進み参拝後だと悟りけり
 という句を堀本裕樹が添削して完成した、
 参拝を終へたる蟻かすれ違ふ
 という句は二人のコラボのようで、心打たれた。俳句の教科書としても分かりやすく、読みやすい。私はこれまで俳句や短歌をただただ感覚で解釈してきてしまったな〜 と反省した。思わず歳時記アプリを購入。これを使って今後はもう少し丁寧に読み解いていきたい。歳時記に例句がいっぱい載っている水原秋桜子、桜子(さくらこ)ちゃんか、可愛い♪ と思っていたら読みは「みずはらしゅうおうし」で、おじさんのイラストと共に紹介されていてショックだった…… 句会や吟行、やってみたいな〜

3
綾野剛(他多数)
日本で一番悪い奴らDVDプレミアム・エディション 特典ブックレット
「日本で一番悪い奴ら」製作委員会
映画のパンフそのままの部分も多かったけど、ロケ地マップが充実していた。

4
又吉直樹
東京百景
ヨシモトブックス
又吉直樹というのは、本当に、愛おしい人だ。子供が無理して大人のふりをして、東京という街を必死に生き抜いているようで、そんな彼を見過ごせずに助けてくれる人が沢山出てくる。最も切ないのが「池尻大橋の小さな部屋」に出てくる青い実の女の子。優しく明るくて、又吉の闇を吸い取るように体調を崩し、東京に居られなくなってしまう。
「仕事も稼ぎも無く、何の取り柄も無い最低な男と、その人はどういう気持ちで一緒にいたのだろう。変なことを言っても笑ってくれたし、もっと変な僕の言動を求めているふしさえあった。迷惑をかけておいて失礼だけど、その人の方こそ狂ってたんじゃないかと疑っている」
 という文章を読んで、
「バカバカ、あなたを、愛していたんだよ!」
 と泣いてしまった。さすがに芸人さんだけあって、笑える場面も多い。後輩の児玉とのやり取りが可笑しい。一緒に銭湯に行ったり、通行人の魂を吸う遊びをしたり。アホ男子的な話が出てくるたび、ニコニコしながら読んだ。楽しさを共有して欲しくて、声を出して笑った部分はDちゃんにも音読して聞かせた。時々出てくるオカンの描写も愛情が自然にあふれ出ていて素敵だ。
「偉人を育てた母親以外は全員ただのオカンに過ぎないかもしれない。だけど誰かにとって最高のオカンでもあったりするのと同じように、売れない若手芸人も誰かにとって最高だったりするのだ」
 これを読んで「私にとって最高」の同人作家を思い浮かべ、深くうなずいた。みんな大好き「蒲田の文学フリマ」の章も良かった♪ 私、あの時会場にいたっけかな〜

5
庭鳥
明日香風、吹く
庭鳥草紙
清らかでゆったりとした、けれども病に対して出来ることが少なく死が身近な、この時代の空気を感じられた。万葉集読みたい。

6
らし
pokkari Vol.01 りゅうのおなかの町
おとといあさって
小さな本に詰まった大きな物語。目覚めたりゅうが見たのはどんな世界だったのだろう。最後のリサイクルマークにウケた。

7
中山純(他多数)
まいにちドイツ語 2017年1月号
NHK出版
聴くのサボっちゃったな〜

8
STUDIO UNI(Direction&Design)
2017 Valentine's Day Chocolate Book
伊勢丹新宿
フルカラー132ページのガイドブックを無料で配っていて気合入ってるな〜と。ドイツのメーカーはホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ(ふだんはバウムクーヘンがメインの店らしい)とローエンシュタイン(チョコのデザインが野暮ったかった……)買えば良かったなぁ。

9
E.H.ゴンブリッチ
美術の物語
ファイドン
ふわぁぁぁ! ついに読み終わった! 永遠に読み続けるような気がしていたよ。美術への愛情、その作品が作られた状況の理解、時代についての知識、作り手たちへの寄り添い方。本当に素晴らしい本だった。

10
高梨來
MY SHOOTING STAR ージェミニとほうき星2ー
午前三時の音楽
やっぱり忍くん可愛いな。相変わらず(と言ってもこっちの方が先に出た本なんだけど)服もおしゃれ。「お父さん海吏はもっと慎みのある子だと思ってました」というセリフにウケた。

11
秋野有紀(他多数)
まいにちドイツ語 2016年9月号
NHK出版
ドイツ人は出身地について尋ねる時、人口や距離など細かい数値まで聞いてくるらしい。会話を正確に深めようとするお国柄。

12
中山純(他多数)
まいにちドイツ語 2016年10月号
NHK出版
池内紀が紹介してくれたシュティフターの「水晶」という小説を読んでみたくなった。

13
奈良美智
SELF-SELECTED WORKSーPAINTINGS
青幻舎
池袋の梟書茶房で見た画集。奈良美智の最近の画風を知ることが出来て良かった。瞳の描き込みが細かくなって宝石みたいだった。

14
新海誠(他多数)
君の名は。公式ビジュアルガイド
KADOKAWA
新海監督やRADWIMPSのインタビューなど充実した内容で満足。

15
世津路章
グロリア・リリィの庭
こんぽた。
梅雨が続いているかのような蒸し暑い空気のせいで、現実と本の世界が混ざり、逃げ切ったはずの遠い日々に捕まえられた気分で、うわぁぁ、となった。今思えば私たちは同じような苦しみを抱えながら、その苦しみでつながることは出来ずに、誤魔化したり誤魔化し切れなかったり時々憎しみでつながったりしていたのかもしれない。砂奈を見てやっと気付いた気がする。見えない鎖でがんじがらめになっている砂奈より、肉体の痛みを得ている優理の方が楽なんじゃないか。優理の傷口から砂奈の黒いものが流れ出ていくような印象を持った。自由になりたい。読み終えた時、十代の頃と同じだけの強さでそう思った。

16
高橋香理(編)
るるぶ熊本 応援版
JTBパブリッシング
いつ行けるのかな、熊本……

17
島貫朗生(編)
くまもと本
エイムック
熊本って意外とおしゃれなんだなぁと。

18
田口亜紀(監修)
旅するフランス語 2017年9月号
NHK出版
アルザス地方特集だったので買ってみた。街並み、食事、民族衣装などにドイツ的なものを感じる。しかし言語に関しては複雑な事情があるようなので、行くならフランス語を覚えた方が良さそう。

19
オカワダアキナ
人魚とオピネル
ザネリ
ダーマトグラフで絵を描いてみたくなった。色鉛筆とクレヨンのアイノコの線、という部分を読んで「わー!」と。百子ちゃんはきっと色々なことが苦しいのだけど、それが具体的に文章になっていないところが、すごく正確だと感じた。おそらく彼女は苦しさを言葉に出来ていないはずで、それもまた苦しさの一部で、それを作者が言語化してしまったら嘘になる。リンダも出てくるし、これは「水ギョーザとの交接」の終わりあたりに重なるお話なのかな、だとしたらめぐちゃんの死が本当みたいで寂しいな。でも百子ちゃんの傷が治ってゆく明るい話でもあると思う。どちらも夏と水の物語。夏の終わりに読むことが出来て良かった。

20
藤沢周(他多数)
映画「武曲」パンフレット
東京テアトル株式会社
おかさんと見に行けたのが嬉しかった。完成台本が載っていて、ブログに感想を書く時に大変助かった。

21
内藤由美+井上健語+ジャムハウス編集部
学んで作る!一太郎2017使いこなしガイド
株式会社ジャムハウス
一太郎で同人誌を作ることになったので買ってみた。とりあえずWordに比べるとずっと使いやすい。次に本を作る時にもう一度見直してみよう。

22
綾野剛(他多数)
プラスアクト 2017 Feb. vol.74
ワニブックス
綾野剛のインタビュー記事が載っていたので購入。

23
小松健太郎(編)
InDesignで始める冊子作りのヒント
Adobe
確か文学フリマで無料で配られていた本。どんなソフトを使うかに関係なく文章レイアウトで注意すべき点が書いてあったので、次に本を作る時にもう一度見直したい。

24
オカワダアキナ
昨日のかみさま
ザネリ
祈りのような物語。べつの国みたいな場所に引っ越してしまったくるみちゃん。実態が分からず恐ろしいBB弾のお兄さん。どちらも自分ではどうすることも出来ないのに頭から離れず、日常に空いてしまった黒い穴のよう。私はダンスのことを全く知らないので、社交ダンスの定義というのが面白かった。めぐちゃんかもしれないリボンちゃんと一緒に、アランかもしれない牧師に場所を借り、日常生活の延長としてのダンスを踊る。黒い穴から逃れることは出来ないけれど、我々は抱き合って踊ることが出来る。甥も死んでない。

25
オカワダアキナ
飛ぶ蟹
ザネリ
おかさんの短い作品が集められている。「ジュラ紀」がとにかく大好きで何度も読み直した。子供の頃、じんぼっちゃまみたいな大人がそばにいてくれたら良かったのに。

26
太宰治
津軽
新潮文庫
旅行記。太宰の優しさと面倒くささを満喫した。終わり近くの、少女が口に咥えた切符に少年駅員が鋏を入れる場面が美しい。

27
オカワダアキナ
物語における「おじ」の役割
ザネリ
名言が多過ぎてどうしたら良いか分からない。一つ挙げるなら「コメディが成立するのは、愛ある世界だからこそ」

28
金谷誠一郎(編)
Die Brücke 架け橋 第693号
公益財団法人日独協会
中二病で学ぶドイツ語(だったかな? 正確な講座名を忘れてしまった)の時に購入。タベアさんのエッセイが可愛い。

29
あべありさ(他多数)
PAPERS 02/boy
+ING PRESS PUBLISHERS
建築家ジェフリー・バワの特集が良かった。

30
津村浩(編)
月刊オーケストラ9月・10月合併号
読売日本交響楽団
トリフォノフが出演した演奏会でもらったパンフレット。いくつかの演奏会のパンフがまとめられていて、自分が聴かなかった曲の解説などもあり面白かった。ショスタコーヴィチの交響曲第4番の説明の中にある「ボリショイ劇場で〈ムツェンスク郡のマクベス夫人〉を観たスターリンが途中退席し」という文章、超怖い。ただ私はショスタコーヴィチの作品で「体制迎合している」とされるものの方が心を動かされる気がする。ロマン派の作曲技法が破壊され、クラシック音楽が「心地好いもの」から脱しようとする時代にあって、スターリンはショスタコーヴィチの作風を「大衆向けに繋ぎとめる」役割を担っていたのではないか。虐殺もする川村元気、みたいな(ごめんね、川村元気……)楽団員からのメッセージというコーナーでヴァイオリン奏者の外園彩香さんが、演奏会で若いお客さまが少ないと嘆いている。あちこちで言われていることだけれど、同人誌即売会や小説投稿サイトではいつでも若い人があふれ返っていて、良い場所だなと思った。やはりいつの時代も若者は、受容より発信に力を注ぎたいものなのだろう。

31
村上春樹
騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編
新潮社

32
村上春樹
騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編
新潮社
読み終えてみると、本の内容そのものより「読んでいる間ネットを見なかった」ということの方が大事な経験になった。大きな物語に身を委ねた後にTwitterを開くと、細かい、一貫性のない意見や情報が大量に流れては消えていって、私は毎日こんなものに時間を使っていたのかと驚いた。まあそんな感慨もあっという間に消え去り、再びTwitter中毒の日々に戻ってそれはそれでけっこう楽しいのだけど、ネット上の言葉の特性を見直す機会は定期的に持った方が良いと思った。長編小説を本で一気に読む、というのは私の知る限り最も反ネット的行為であるように感じる。そこには視界を邪魔し気を散らすものはなく、目は一本の線のような文章をひたすらに追い続け、ネットとは違う「やめられない」がある。もちろん面白い小説だからこそ出来ること。

33
中山純(他多数)
まいにちドイツ語 2016年11月号
NHK出版
真面目に聴かなかった……

34
中山純(他多数)
まいにちドイツ語 2016年12月号
NHK出版
池内紀が紹介してくれたジュースキントの「香水」という小説が面白そうだった。

35
中山純(他多数)
まいにちドイツ語 2017年2月号
NHK出版
ドイツのクリスマスは家族で祝うもので大騒ぎはしない。ミュンヘンは地中海寄りの南の文化圏に属し「イタリア最北の町」と称されることもあるという。

36
中山純(他多数)
まいにちドイツ語 2017年3月号
NHK出版
映画「ベルリン・天使の詩」の舞台の話が。見てみたいとずっと思ってるんだけど。

37
門倉多仁亜
タニアのドイツ式シンプル料理
NHK出版
この本のレシピでグーラッシュや洋梨のコンポートなどを作った。

38
藤井明彦(他多数)
まいにちドイツ語 2017年4月号
NHK出版
Hilf dir selbst, so hilft dir Gott.「自分で自分を助けなさい、そうすれば神様が助けてくれる」ということわざがあるらしい。

39
藤井明彦(他多数)
まいにちドイツ語 2017年5月号
NHK出版
ドイツを代表する辛口の白ワイン「フランケンワイン」飲んでみたい。

40
小林誠(他多数)
講談社ブルーバックス 通巻2000番記念
講談社
ブルーバックスの販促本。無料。本屋に置いてあったのをもらってきたのだけど、読み応えがあって素晴らしかった。

41
藤井明彦(他多数)
まいにちドイツ語 2017年6月号
NHK出版
増本浩子さんのスイスの直接民主主義の話が面白かった。

42
藤井明彦(他多数)
まいにちドイツ語 2017年7月号
NHK出版
ライン川ではローレライを見物出来る、という文章にびっくりした。ローレライが座っている岩がローレライ(待ち伏せする岩)で、実在するのね。

43
藤井明彦(他多数)
まいにちドイツ語 2017年8月号
NHK出版
池内紀による、ナドルニー「緩慢の発見」の紹介が面白かった。「少年は本が好きだった。本はせかしたりしない。いつまでもじっと待っていてくれる」「大きなことをなしとげるためには、力をためていなくてはならず、着実に行動をつみかさねないと状況は変わらない」

44
藤井明彦(他多数)
まいにちドイツ語 2017年9月号
NHK出版
リューゲン島にある異常に長い(6階建て、横に4キロメートル以上)休暇施設の写真がシュール。国家社会主義者たちは休暇も画一化しようとした、とのこと。

45
鎌田タベア・柳原伸洋
ドイツ人の当たり前
三修社
ドイツのことが細かく書かれていて勉強になった。

46
滝川洋二(編)
発展コラム式 中学理科の教科書 第1分野 物理・化学
講談社
ブルーバックス。理系本を常に用意して読み続けたい。

47
ディケンズ(村岡花子 訳)
クリスマス・カロル
新潮文庫
ユーモアのある語り口が気分に合っていたので読んだ。人間の向上心が向かうべき、正しい「上」をディケンズは示している。人間の弱さや美しさ、社会の仕組みや世知辛さの描写が上手くて、さすがディケンズ。今さら私が褒めなくても、みんな彼の凄さを知っているよね……

48
スタニスワフ・レム(沼野充義 訳)
ソラリス
ハヤカワ文庫
ソラリスは惑星の名前。ソラリスの海やソラリスが送ってくるお客さんの異常さが描かれるのだけど、それらに対する人間の行動の方がソラリスよりよほど恐ろしいと感じた。余裕をなくした登場人物たちの会話はギクシャクして、前衛劇のよう。何でも自分と似たものとして解釈してしまう性質(人間の認識の特性・限界)が気になっていたので、そのことが突き詰められていたのが良かった。表紙が大変美しい。ソラリスの風景、新海誠の絵でも見てみたい。ジャコメッティ展のチケットをしおりにしたら、内容によく合っていた。あの細長い彫刻も、ジャコメッティのところに来たお客さんの似姿なのかもしれない。

49
沼野充義
100分de名著 スタニスワフ・レム ソラリス
NHK出版
読んだのはこちらの方が先。宮沢章夫がラジオ番組でいつになく真面目に紹介していたので。100分で済ますなんてズルいと思っていたけれど、このシリーズ面白いな。沼野先生の物語や言葉に対する姿勢が好きだからそう感じたのかも。イデオロギーやプロパガンダに流されないためには強靭な知性が必要なのか、世の中のあれもこれもそれでなのか、と納得した。

50
村上春樹
村上春樹 翻訳ほとんど全仕事
中央公論新社
「瀬戸物屋の中で牛が暴れているみたいな小説」ってどんな話なんだろう(ニュークリア・エイジの紹介文)

51
片山杜秀
クラシックの核心
河出書房新社
音楽の表現を深めたくて読んだのに、何故か片山少年と学友たちに萌え転がるハメに……

52
好広勇介(他多数)
PAPERS 03/boy
+ING PRESS
好広勇介さんの山形県鶴岡市への食旅レポが良かった。

53
佐々木芽生(他多数)
映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」パンフレット
ファイン・ライン・メディア・ジャパン
この映画、好みど真ん中過ぎてまだ感想を書けていない。日本人の世界では理解されにくい性質に気付かされると同時に、欧米人の独善性や主張の強さについても考えさせられた。そして人間は何らかの正義がないと生きていけない動物なんだと深く感じ入り、涙が出た。私が最も共感したのはくじらの博物館副館長の桐畑さん。くじらやイルカの実物ではなく「イメージ」によって議論が進んでしまうことに静かに抗議しているように見えた。パンフレットの「欧米では(中略)家畜動物に「命」があるとは、あまり意識されていない」という記述にゾッとした。クラウドファンディングの話も興味深かった。

54
永田美絵
カリスマ解説員の楽しい星空入門
ちくま新書
星への深い愛情を感じた。永田先生のいるプラネタリウム(東急コミュニティーコスモプラネタリウム渋谷)に行きたーい!

55
らし
嘘の町を出ていく
おとといあさって
これも好き過ぎて大変だった。物語とは何か。物語には何が出来るのか。そういう問いを持った人に差し出したくなる物語。

56
上橋菜穂子
物語ること、生きること
講談社文庫
実感を描く大切さ。複数の視点を持つこと。幸福な子供特有の劣等感。イメージと実態の差。心の中で物語が育つ感覚。うまく言えなかったもやもやを形にすること。物語が生まれるまでの見えにくい色々が書かれていて嬉しかった。

57
世津路章
ミス・アンダーソンの安穏なる日々
電撃文庫
まさか一緒にお出かけしたことのある人の本が電撃から出るなんて…… アーティくんが魔法を使って家事をやる場面が好き。ただ綺麗にする魔法をかけるんじゃなく、ハーブ成分を含んだミストを発生させたり、やることが細かいんだ。魔界では人間が悪いと言われ、人間界では魔族が悪いと言われる。ファンタジーでしか描けない現実。私にとっても切実な問題なので、次の巻が楽しみ。

58
添嶋譲
素直になれなくて
空想少年はテキストデータの夢を見るか?
「きみのようにはなれない」の甚平の着心地の描写が好き。

59
ヴァレリー・アファナシエフ
ピアニストは語る
講談社現代新書
ソ連や亡命の話が興味深かった。演奏をする時は、筋肉を強張らせず、自由な動きをすることが重要。人の教えは取捨選択しなければいけない。小説書きにも通じることだと思った。

60
西本喜美子
ひとりじゃなかよ
飛鳥新社
熊本弁が知りたくて。

61
オカワダアキナ
未完の漫画と踊りつつある叔父さん
ザネリ
この話を読んでから、とちおとめを見るたびやらしーことを考えるようになってしまった。

62
秋山真琴
文学フリマガイドブック2017年(通算第10号)
文学フリマガイドブック編集委員会
「ヒトガタリ」を紹介してもらった。くまっこさんのインタビューが勉強になった。私もスペース前に来た人の視線の動きを研究して、少しでも足を止めてもらえるように、売り場のレイアウトを改善したいな。

63
くまっこ
クマの豆本製造ライン3
象印社
物を作るためには、道具と材料への愛情が大事だなと。折り紙を使うアイデアは私でも取り入れられそう。折り紙売り場見てみよう。

64
塚谷裕一
スキマの植物図鑑
中公新書
スキマは植物にとっての楽園らしい。確かにどこのスキマにも元気に生えているよね。

65
たつみ暁
なまけもののつめあわせ
七月の樹懶
「瑠璃唐草と瓔珞百合」が良かった。

66
氷砂糖
アイノマジナイ
cage
「物語 私の中の小さくて幸せな世界」が好き。

67
うさうらら
泣草図譜文鳥編
卯楽々堂
うさうららさんの本は何度見ても綺麗だ。マズメという言葉が印象的だった。

68
らし
幻術みたいな現実
おとといあさって
赤信号とか冷蔵庫とか、日常的なものが愛おしくなる物語。

69
たまきこう
夜に流れる朱華
Couleurs
繊細な紙に記された繊細な物語。

70
わたりさえこ
インドアゲームズ
ナタリーの家
表題作がものすごく好き。人々が勝手に作り出す、時には人に押し付けて来る、浅はかな物語。噂話を物語ととらえる人は少ないかもしれないけれど、足りない情報を補うためにそれらしい形に育っていくという点で、物語の根源に近いと思う。物語の負の側面を描いたこの物語は、物語の正しい力を感じさせる。

71
又吉直樹
夜を乗り越える
小学館よしもと新書
又吉直樹の本の読み方が好き。特に古井由吉「山躁賦」の話が印象に残った。

72
郡司聡
ブラタモリ6
KADOKAWA
熊本のことが載っていたので。

73
佐野裕
ワープ・マガジン・ジャパン 8+9月合併号
トランスワールドジャパン株式会社
綾野剛のインタビューが載っていたので購入。

74
きはら・T.soup(代表)
グルジア史創作アンソロジーJVRIS
グルジア史創作アンソロジー企画
亀さんの漫画が面白かった。

75
並木陽
ノーサンブリア物語 下巻
銅のケトル社
並木さんの本にハズレなし! レゲンヘレとエドウィンが本当に愛おしくて、切なくて…… 最後までドキドキしながら読んだ。世界史なんて一番苦手な科目だったのに、不思議だなぁ。並木さんの、世界の複雑さを優しく受け止める心意気に、共鳴するからかもしれない。

76
並木陽
割れた月の半分は何處へ行ったのだろう?
銅のケトル社
並木さんが私一人のために作ってくれた本。これ、私が持っていて良いのかな……? しかし「柳田のり子様に」と入っているから、私以外にとっては他人の物だ。何だかすごい。学生時代に書いたお話だそうで、現在の歴史ものとはジャンルが違う感じ(童話と純文学の間くらいかな)でも描かれる感覚の細やかさや優しさは確かに並木さんの世界で、ここには私の好きなものしかないなぁ、と目を細めながら読んだ。陶器の貴婦人のセリフに泣いた。あとがきは私宛ての手紙になっていて(本当にこんなのもらっちゃって良いのかな?)手紙をもらうのはそれだけで嬉しいことだけれど、こういう風に本の形になっている手紙というのは格別で、素敵なものだと思った。

77
磯崎愛・うさうらら
百花王
コラボ花うさぎ
ふかみ草(牡丹)が美しい。ふかみ草ってけっこう色んなところで使われるんだな。〇〇が深い、と掛けやすいんだろうな。

78
西乃まりも
空気をソーダで割る方法
a piacere
「電波女と夜の蝉」が好き。

79
世津路章
25周年おめでとう! 映画クレヨンしんちゃんを勝手に振り返ってオススメしてみた
こんぽた。
「感動」という言葉の功罪について考えさせられた。この本で紹介されていたものを何作か見てみたら確かに面白かった。

80
松岡宮
特急の名はフレッチャロッサ!
駅員と私
イタリア男のイメージ通りのイタリア男の話が可笑しかった。

81
笠松則通(他多数)
映画「怒り」アウトテイク&スタッフインタビュー集
映画「怒り」製作委員会
DVDに付いてきた冊子。衣装デザインの小川久美子さんの話が勉強になった。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:08| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年12月31日

樋口一葉「大つごもり」感想

 大つごもりだから大つごもりを読んだよ!
 「つごもり」は(陰暦で)月末。「月隠(つきごもり)」のつづまったもの(岩波国語辞典より)
 大つごもりは大晦日です。

 途中までは人情話で、ふーんという感じでしたが、ラストが洒落てる。
 ○○だったかもしれないし、△△だったかもしれない、と二つの可能性を提示し、
「後の事しりたや」
 で〆る。電車の中で「へー!」ってつぶやいちゃった。私も後の事しりたや!
 悲惨なストーリーも、ほんわか展開も思い浮かぶぞ。

「小松菜はゆでて置いたか、数の子は洗つたか」
 なんて文章もあって、今と変わらない東京の大晦日。

 20年前よりも、19世紀の小説が身近で切実なものになってきた気がする。
 作品の中で描かれる人々の苦しみや格差、貧しさが、過ぎ去った時代の悲しい出来事ではなく、自分にも降りかかってくるかもしれない不幸に感じられる。

 自分の顔がお金になっていることを知ったら、樋口一葉はどんな気持ちになるだろう。
 笑いながら泣くんじゃないか。
 あんなにお金で苦労した人を、お札に印刷するなんて。
 時々、胸が痛くなる。

にごりえ・たけくらべ (新潮文庫) -
にごりえ・たけくらべ (新潮文庫) -
↑この本に入ってます。
posted by 柳屋文芸堂 at 19:25| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年09月17日

らし「嘘の町を出ていく」感想

 この本、届いてすぐに読み終えたのですが「好き過ぎて感想書けない状態」になってしまって大変でした。多くの人にこの物語の素晴らしさを伝えたい。それなのに、感激が強過ぎて、上手く言葉を紡げない。
 明日の文学フリマ大阪でも頒布されるようなので、頑張って紹介してみますね。

 嘘の町「ペテンブルク」で、時計技師の青年ぺトレは、時計塔で踊るからくり人形シアーシャに恋をする。
 嘘の町とは何か?
 そんな、私が説明出来る訳ないじゃないですか!
 読んでみればありありと分かります。
「本を開いたら、あなたも嘘の町に行くことになる」
 と言った方が良いかもしれない。

 まずこのシアーシャが超絶キュートなのですよ。
 からくり人形が生きていることに驚くペトレに、シアーシャはこう返す。

「しかたがないじゃない。いるわけないっていわれても、わたしはここにいるんだもの」

 圧倒的な存在感。いるんです!

 ぺトレは何故ペテンブルクにいるのか? 彼が背負っている深い悲しみ。
 シアーシャはいつも明るいが、時計塔から出て自由に歩き回ることを夢見ている。
 彼らが惹かれ合う様子の描写が素敵。

「時計塔で出会ったふたりの気持ちも、文字盤を走る二本の針と同じように、刻一刻と、交差し重なる瞬間へと向かいはじめていた」

 そして二人はどうなるか?
 うわ、無理だ。ここから先はネタバレになってしまう。
 そこは嘘の町で、でもその恋は紛れもなく本物だった、ということしか私の口からは言えない。
 恋する二人の会話、特にシアーシャのセリフはどれもこれも本当に可愛らしい。

 この話はフィクションであり、フィクションについての話だ。
 つまり「物語とは何か」の話。
 嘘の話に過ぎない物語というものが、読者に何を与えてくれるか。
 それがどれほど大切なものであるか。

 読み進めるにつれて、
「この話、どうやって終わらせるのだろう」
 というドキドキが大きくなっていった。
 ハッピーエンドもバッドエンドも簡単に想像出来る。

 らしさんが選んだ結末に、私はうわー! と叫んだ。
 私の浅はかな予想などはるかに上回り、美しく、深い真理をたたえ、
「形のない、けれども確実に存在する何か」
 は読者に手渡される。

 9月18日(月祝)に堺市産業振興センターで開催される文学フリマ大阪のB-39(ブース名:おとといあさって)で買えるようですので、行く方はぜひ!!
 WEBカタログ(こちら)で表紙など詳細が見られます。
 こんな私の暑苦しい感想などさらっと忘れて、古いお洒落な外国映画を見るような気分で楽しんで欲しいです。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 17:51| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年08月11日

「君の名は。公式ビジュアルガイド」感想

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド -
新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド -

 瀧役の神木隆之介と三葉役の上白石萌音の対談や、新海誠監督、キャラクターデザインの田中将賀、作画監督の安藤雅司、音楽担当のRADWIMPSへのインタビューなどが載っている。
 「ビジュアル」ガイドにしては文字情報が多く、
「『君の名は。』を作った人たちの話が聞きたーい!!」
 と思っていた私は大満足。

 私が新海誠監督のことを知ったのは、日本アカデミー賞授賞式を伝える映像とラジオ番組だった。
 宮崎駿・庵野秀明・押井守など、一目見ただけで一筋縄ではいかないと分かるアニメ映画の監督たちに比べると、ごく普通の、穏やかそうな人に見えた。
 しかしRADWIMPSが作った映画用の音楽に対し、長い褒め言葉と「でも」ここを直して欲しい、という注文のメールを何度も送った、という話を聞き、
「この人にはこの人の面倒臭さがあるな。映画監督なんてそうでもなきゃ出来ないよな」
 と興味深く感じた。

 この公式ビジュアルガイドにはそのエピソードが細かく書かれていて、RADWIMPSとのメールのやり取りは20往復ほども続いたという。
 よく降りなかったな、RADWIMPS……
 「君の名は。」は映像と音楽の合い方が神がかっていて、あれは監督の粘り勝ちだったのだとよく分かった。

 ロサンゼルスで行われたワールドプレミア(世界最初の試写会)では、映画の最後の方で観客たちが歓声を上げたり叫んだりしたという。
 日本の映画館ではそんなあからさまな反応する人いないよね。
 バンドのライブみたいで楽しそうだ。

 安藤雅司の、
「人はこういうものだっていう記号的なところに落とし込まないようにしよう」
 という言葉はアニメキャラの描き方についての話ながら、小説書きにも言えることだと思った。

 シナリオが載っている訳ではないけれど、細かいストーリー紹介があり、耳で聞くだけでは深く考えられなかったセリフの単語を「読めた」のも良かった。

☆むすび
 漢字では「産霊」と書くんですね。
 広辞苑によると「(奈良時代にはムスヒと清音。「むす」は産・生の意、「ひ」は霊力)天地万物を産み成す霊妙な神霊。むすびのかみ」

☆かくりよ
 漢字では「隠り世」あの世のこと。

☆カタワレ時
 カタワレを辞書で引くと「片割れ月」という関連語が出てくる。半月のこと。
 それで瀧のTシャツがHALF MOONだったのか。
 広辞苑では「あふことは片割れ月の雲がくれおぼろけにやは人の恋しき」なんて「君の名は。」そのものみたいな歌が挙げられていて、新海監督が埋めておいた印を見つけられたような気持ちになり、嬉しくなった。

 何かを好きになって、深く知ろうとして、新しい知識や感覚を得られるのって本当に素晴らしいね。
 11月には国立新美術館で新海誠展が開催されるそうで、今から楽しみです♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:41| 読書 | 更新情報をチェックする

2017年07月09日

世津路章「ミス・アンダーソンの安穏なる日々 小さな魔族の騎士執事」感想

ミス・アンダーソンの安穏なる日々 小さな魔族の騎士執事 (電撃文庫) -
ミス・アンダーソンの安穏なる日々 小さな魔族の騎士執事 (電撃文庫) -

 Twitterや同人誌即売会で時々おしゃべりする世津路さんが!
 一緒にお出かけしたこともある、あの世津路さんが!!
 電撃文庫でデビューしたよ〜 わーい!!

 私はあまりライトノベルを読まないのですが、本の最初のところに入っているカラーイラスト、これから始まる物語の予告編のようでワクワクしますね。
 アーティくんが可愛過ぎてエッチだ……

 安穏なる日々、とタイトルにはある。
 けれどもそれは、何の努力もせずに誰かが無条件に与えてくれるものではない。
 ミス・アンダーソンは傭兵。戦うことが仕事なのだ。

 ミス・アンダーソンの身の回りのお世話をすることになったアーティは、魔族でありながら戦いを嫌い、魔法を攻撃のためではなく料理や掃除に活用する(消臭のために月涙の葉のミストを発生させる手順が見事!)

 平穏で温かく幸せな日常こそ、何より貴く、保たれるべきものであると固く信じている(本文より引用)彼も、魔族と人間の対立や、魔族の内乱、人間社会の問題と無関係ではいられない。
 ミス・アンダーソンは当然、真っ先に火の粉をかぶることになる。

 ミス・アンダーソンとアーティが美味しいお菓子を食べたり、ベッドですやすや眠ったり(アーティは抱き枕!)する「安穏なる日々」は、それを守るための「戦いの記録」でもあるのだ。

 魔界も人間界も一筋縄ではいかない事情を抱えており、現実の世界で起きているあれこれを思い出し、身につまされる。しかしあちこちにユーモアと美味しい食べ物がちりばめられているから、最後まで淀むことなく楽しく読み進められる。

 特に「乳白星の実のシチュー」と「まろヤギチーズとたまねぎの麦粥」が美味しそうだった。
 じゅるる。

 アーティの使命は「ミス・アンダーソンを抹殺すること」
 でも彼なら、もっと大きなことを成し遂げられるのでは。
 そんな風に感じた。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 21:57| 読書 | 更新情報をチェックする