2019年09月22日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その5

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その4の続き)

「僕も山頂ムリだ。膝が笑ってる」
 アブをまくために速度を上げたのが足の負担になったらしく、太ももが震えている。
「助けてくれてありがとう」
「いやいや」

 しかしアブがこんなにしつこく一人を狙ってくるものとは知らなかった。後で調べてみたところ、アブは温度が高く、二酸化炭素を多く排出するものに近付く習性があるという。他の登山者よりオーバーヒートして、ハァハァしっぱなしだったのが、狙われた原因かもしれない。
 アブ除けにはハッカ油が効くという。次に山へ入る時には忘れないようにしよう。



 アブ・いも虫事件を抜きにしても、登りは本当に辛かった。ヨレヨレのフラフラになってどうにか5合目を過ぎ、行者谷別れで今度は急な階段を降りてゆくことになる。ルパン三世のように駆け抜けたらラクそうに見えるが、実際にやったら大ケガだ。



 転落しないよう慎重に進む。息は登りほど苦しくない。鳥や虫の声を楽しむ余裕も出てきた。
 ふと視界が開けた。白い石が敷き詰められた、木のない場所に出た。河原に似ているが、川はないようだ。



 ここでホテルにお願いした登山弁当を食べることにした。時刻は1:00過ぎ。3時間ほど歩いていたのか。

「あっ、ほら!」
「大きい!!」

 黒くて太いトンボが飛び回っている。おそらくオニヤンマだろう。これほど力強く美しいトンボを見るのは初めてだ。
「アブをやっつけてくれないだろうか……」

 白い石の谷を抜けると、またひたすら下り階段が続く。1時間ほど歩いたところで、寺か神社のような古い建物が見えた。



(鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その6に続く予定)
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2019年09月21日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その4

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その3の続き)

2019年8月9日
 早起きしたので近所を散歩してみたら、少し坂道を登るだけで息が切れる。こんな状態で山登りなんて出来るのかしらと不安になった。

 朝食の時にホテルの人が登山弁当を持ってきてくれた。保冷剤付き。ありがたいサービスだ。
 10:00頃、フロントに登山届けを提出し、出発。大山寺の門前町を5分ほど歩いて、登山口に着いた。
 登山客は他にも大勢いる。丸太で作られた階段を登り続けなければならず、一段一段がけっこう急だ。「山歩き」ではなく「登山」なのだと思い知る。



 案の定すぐ息が苦しくなった。
「山頂まで行くのは難しそうだね」
 とDちゃんに言われた。

「行者谷別れで行者コースに進んでも良い?」
「良いよ」
「ごめんね」

 山頂の手前で下山し始めるルートである。それでも行者谷別れのある5合目の先までは登り切らなければいけない。故障を起こしたのにどうしても棄権出来ないマラソン選手のような速度で、一歩一歩上がっていった。日頃の運動不足に加え、湿度が恐ろしく高く、汗が全く蒸発しない。体に熱が籠もり、全身びしょ濡れの状態で動くのはものすごく辛かった。山の神よ、ひ弱な私を、どうか無事に……

「ギャーッ!」
 大きなアブがズボンのひざあたりにくっついている。ハチとハエのあいの子みたいな見た目の、ハチやハエよりデカい昆虫だ。
 刺されたら大変なので、攻撃していると思われないよう、そっとズボンの布を振るってみる。一応飛び立つものの、ブーン、ブーンと私の周りを回ってまた戻ってくる。何度やってもその繰り返し。全然離れてくれない。

「ふぇぇぇん、嫌だよう〜」
 独り言のつもりだったのに、山じゅうに響く大声だったらしく、先に進んでいたDちゃんが下りて来てくれた。
「パーカーを着た方が良いんじゃない?」
 あまりの暑さに脱いで仕舞っていたパーカーを取り出そうと、リュックを背中から下ろす。
「うわぁぁ、こっちにはいも虫がぁぁ!」

 黄みどり色の可愛いやつがリュックの上を元気よく歩いている。どこかから落ちてきたのだろう。リュックを木の葉に近付けてみるが、なかなかそちらに移ってくれない。いも虫は歩き続け、アブは私の周りをブーンブーンと回り続け、いやなんで君たちそんなに私から離れようとしないの……

 別の木の葉にリュックを近付けたところ、好みの葉だったのかようやくいも虫は移動してくれた。しかしアブは場所を変えてもずーっと私だけを狙い続けている。なんで! 他の登山者たちがどんどん私を追い抜かしてゆくのに、どうしてそちらには行かないの……
「ふぇぇぇん、怖いよう、嫌だよう! ふぇぇぇん」

 半泣きの私を見かねてDちゃんがアブを地図ではたき、アブの注意を自分の方に向けさせ、だだだっと山を登っていった。どうやらアブはDちゃんについていったようで、私の周りからはいなくなった。

 ゆっくりゆっくり登ってゆき、しばらく経った後にDちゃんと合流した。アブに刺されなかったと分かりホッとした。

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その5に続く)
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2019年09月20日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その3

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その2の続き)

 ガンバリウスでタクシーを呼んでもらい、ホテル大山しろがねへ。チェックインの時、登山に持ってゆくお弁当を頼めるか尋ねたところ、大丈夫ですとの答え。前日までなら注文を受けてくれるらしい(当日にお願いして買うことは出来ない)

 事前予約なしでも星空観察会に参加出来ると分かり、慌てて部屋に荷物を置いて集合場所へ向かった。Dちゃんはけっこう酔っていたので部屋で休むことにし、私一人での参加。親子連れなど20人ほどが集まった。

 まず星を天井に映す装置を使い、ホテルの入り口を簡易プラネタリウムにして、お兄さんが今夜見える星座を教えてくれた。その後みんなでマイクロバスに乗り込み、近くのスキー場へ移動。木がないので空を広々見渡せる。しかし半月ながら月の光がものすごく強くて、北斗七星のような有名なものは判別できたものの、暗めの星や天の川は見えなかった。天体観測をするには場所だけでなく、新月の日を選ぶのが大事だと学んだ。

「この月の明るさを逆手に取って、月を見ちゃいましょう」
 お兄さんはそう言いながら、月の表面に焦点を合わせた望遠鏡を覗かせてくれた。これまでに写真や映像で何度も見た通りにクレーターがいっぱいあって、何だか冗談みたいだった。土星にも「土星のイラスト」のような輪がある。
「望遠鏡に土星のシールを貼っている訳じゃないですからね〜」

 解説役のお兄さんを含め、ついてきてくれたホテルの人たちはみな親切だった。寝転がって星を眺められるように、敷物が配られた。横になり、体の力を抜いて、夜空をぼんやり見つめ続ける。シンプルで、心の静まる素敵な時間だった。

 お兄さんは地平線のあたりに散らばる無数の光を指さし、
「あれは街のあかりではなく漁火(いさりび)です。今は一生懸命イカを獲ってます」
 えー!! あれ船なの?! 私にとっては星より珍しく、驚いた。

 星と漁火を充分に堪能し、1時間ほどでホテルに戻った。
 部屋は和風で古めかしく、ベッドではなく布団で寝る。トイレは新しいものに改装してあり快適だった。

 テレビもネットも見ないで早めに寝た。
 おやすみなさい。

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その4に続く)
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2019年09月19日

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その2

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その1の続き)

 ガンバリウスは地ビール「大山Gビール」直営のレストランだ。DちゃんはGビールセットを頼み、ヴァイツェン、ピルスナー、ペールエール、スタウト、限定ビール(ベルジャンブラウンを選択)が100mlずつやって来た。小さなグラスが五つ並べられ、可愛い。


↑ヴァイツェンだけ飲んだ後ですね……

 ソーセージ盛り合わせ、あじのエスカベッシュ、カニクリームコロッケ、ハタハタの唐揚げを二人で食べた。



 Dちゃんのビールを少しいただく。あじやハタハタとスタウトがよく合う! スタウトはこくのある黒いビールで、油っこいものとの相性が良いのだと思う。中華料理を食べながら飲むプーアル茶のように美味い。ヴァイツェンも優しい味だった。

 D「追加の注文で、カニクリームコロッケを」
店員「カニクリームコロッケ? 先ほども……」
 D「ええ、だから追加で」
店員「そんなにも?!」
 私「カニ度が高かったんでしょ?(←Dちゃんが全部食べてしまったので味を知らない)」
店員「作った人に特長を訊いたら『カニがいっぱい入ってる。とにかくカニがいっぱい入ってる』しか言わないんですよ」
 私「関東のカニクリームコロッケはそんなにカニ入ってないんで、ここならではですね!」

 鬼太郎の「建国!?魔猫の大鳥取帝国」という話にも、境港のカニが出てきた。さっきのタクシーの運転手さんもこの店員さんも嬉しそうに地元の話をしてくれて、さすが大鳥取帝国。

 追加で来たカニクリームコロッケを食べてみた。
「カニクリームコロッケというより、カニコロッケだ!!」
 ちゃんとクリーミーなのだけど、カニ味が強かったので。関東のカニクリームコロッケは、カニ風味クリームコロッケなのではないか……

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その3に続く)
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鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その1

2019年8月8日
「キャー!」
「怖い〜!!」
 周りは子供だらけで、離陸の瞬間、いっせいに叫び声を上げた。Dちゃん(ダンナ)は秋になってから夏休みを取ることが多いので、お盆近くに国内線の飛行機に乗るのは初めてかもしれない。こんなに賑やかになるのか。

 高度が上がるにつれ、カバンに入れて持ってきた万年筆が気になり始めた。気圧の変化で耳がポコポコしている、つまり万年筆の中の空気も膨張し、インクが吹き出しているかもしれない。ベルト着用サインが消えたので、おそるおそるキャップを開けると、全く汚れていない、いつも通りのペン先が出てきた。セーラー万年筆バンザイ! さっそくノートを開いてこの旅行記のためのメモを取り始めた。

 飛行機が向かう先は、鳥取県にある米子鬼太郎空港。もともと水木しげるの大ファンで、現在放送中のアニメ「ゲゲゲの鬼太郎(第6期)」にもハマったため、二度目の聖地巡礼である。前回はまだ雪の残る春先に、大山(だいせん)と境港を駆け足で巡ったが、今回は大山で夏山登山をする予定だ。

 羽田から米子までは1時間20分。あっという間に着いた。米子鬼太郎空港はその名の通り、あちこちに鬼太郎たちのイラストやオブジェが飾られている。しかしバスの出発時刻が迫っており、あまり写真は撮れなかった。


↑荷物を受け取る所の目玉おやじだけ撮った。スーツケースと一緒にずっとぐるぐる回っている。

 米子鬼太郎空港発、米子駅行きのバスに乗る。空港出口の目の前に乗り場があって便利だった。このバスも鬼太郎キャラでラッピングされていて可愛い。わーわーと慌てて乗ってしまい、外側から写真を撮れなかったため、内側からぬりかべの目だけを撮影した。



 鳥取に行けば避暑になるのではと期待していたが、空港周辺の気温は東京とそれほど変わらず、暑い。山に登れば少しは涼しくなるだろうか……

 米子駅からはタクシー。運転手さんは大山にまつわる神話を話してくれた。高天原(たかまがはら)、天照大神(あまてらすおおみかみ)なんて単語が次々出てくる。出雲大社も近いし、このあたりは古事記に描かれた世界なのだなぁ、としみじみ思った。

 市街地を抜けると風景が開け、眼前に大きな山が。大山だ。すぐそばまで来た気がするのに、走れども走れども山は動かず遠いまま。距離の感覚がいつもと違うので面白い。横を見ると、道の両側に田んぼが広がり、青々とした葉が風になびいていた。

 ガンバリウスに着き車から降りると、木と草の香りにむわっと包まれた。山だー!

鳥取大山登山旅行記〜妖怪もちょっとだけ〜その2に続く)
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2019年09月01日

マレーシアごはん祭り2019〜Malaysia MAKAN Fest

 今日は横浜みなとみらいの象の鼻テラスで開催されていた、
「マレーシアごはん祭り2019〜Malaysia MAKAN Fest」
 に行ってきました!

 会場に着くと、入り口の外まで人の列が伸び「最後尾」の札を持った人がいる。
 入場待ちの列かスタッフに尋ねると、食事をしたい人が並んでいるという。

「買い物ならこちらから入れますよ」
「いえ、食べたいです! お腹空いてるんで」
「そうですか! 楽しんでいってくださーい!!」

 たぶんマレーシアの人なのだと思う。
 明るく親しげに言ってもらえて嬉しかった。

 10分ほどでマレーシア料理が買える屋台に辿りついた。
 私たちが選んだのは「チキンルンダンご飯付き」と「カリーパフ」


↑餃子のような形をしているのがカリーパフ

 チキンルンダンは鶏肉をスパイスで煮込んだカレーのようなもの。
 ココナッツミルクがたっぷり入っていて、東南アジアらしい味がする。

 カリーパフの中身はカレー味のじゃがいもで、皮で包み揚げてある。
 インドのサモサに似ているが、それより皮が厚くてふわっとしている。
 優しい味。

 Dちゃんは「アッサムボイ」という乾燥梅干しを煮出したドリンク、私は「テタレ」という練乳入り紅茶を頼んだ。
 アッサムボイは爽やかな味だったそうだが、テタレはマックスコーヒー紅茶味という感じ。
 甘かった……

 ルンダンとカリーパフを食べ終えると、Dちゃんは、
「おやつが食べたい」
 と言い出した(私は満腹)ちょうど人の列もなくなったので再び屋台へ。
 デザート的なものを買うのかと思いきや、骨付き豚肉を煮た「バクテー」を注文。



 器を手に持っているだけで、八角の香りが辺りに漂う。
 さぞやクセのある食べ物だろう、と想像したらそうではなく、肉もスープも意外とあっさりしているらしい。
 しかしおやつに肉ってすごいな……

 このバクテー、マレーシアでは朝食として人気とか。
 朝からしっかり食べるのね。

 マレーシアはマレー系、華人系、インド系等の人々が住む多民族国家。
 料理の種類も幅広く(食べてみたい知らない食べ物がいっぱいあった。胃が3つ欲しかった!)奥深い文化を持つ国なんだな〜 と感じた。
 会場には色鮮やかなイスラムの服装をした女性が多くおり、美しかった。

 食品会社のブースでマレーシア料理を作れるペーストをいくつか購入。
 楽しい異文化体験でした。


↑おまけ。象の鼻テラスのゾウノハナソフトクリーム。暑さで目が流れていった……
 
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2019年05月17日

板橋区立熱帯環境植物館(グリーンドームねったいかん)

 私は現在、ポリネシアのある島を舞台にした物語を書こうと準備を進めている。
 島の植物を知るために、板橋区にある熱帯環境植物館に向かった……が!
 ポリネシアについての資料を持ってくるのを忘れた…… 何しに来たの……

 仕方ないので単純に施設を楽しむことにした。
 ここには植物だけでなく、小さな水族館もある。

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↑タカアシガニ。デカい蟹、と言ってもこの写真では大きさが分からないね…… 横幅1.5メートルくらいかな。

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 色彩豊かな熱帯魚たちをぼんやり眺めていたら、これから館内でイベントがある、という放送が聞こえた。
 どんなものなのか分からないが「大迫力」という単語だけは聞き取れた。

 奥に進んだところにある大きな水槽の前で、
「ここが一番よく見えるから!」
 と子供を説得している母親がいた。
 ここがイベントの会場なのかな? としばらく待っていると、ばらばら人が集まってきた。

 イベントは水槽にいる生き物たちへのエサやりを見せるものだった。
 一番の見ものは世界最大の淡水エイ「ヒマンチュラ・チャオプラヤ」

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 水上にぴょんぴょん飛んだり、エサを上手くキャッチ出来ず落としてしまったかな? と思いきや、すーっと水を吸い上げエサを浮上させてパクっと食べたり、確かにこれは大迫力、面白い!


↑私が撮ったものではなく、YouTubeに上がっていたMistralQVさんの動画です。

 このエイの大きさは、横幅1.2メートル、縦1.5メートルほどだろうか。さらに長い尻尾もある。
 尻尾をぴーんと伸ばし、ひらひらひら〜 と泳ぐ姿の美しいこと!
 ポリネシアの架空の島を舞台にした映画「モアナと伝説の海」でも、エイが重要な役を担っていたな〜 とじーんとなった。

 エイのエサはサバで、魚や亀のエサはゲソ、とのこと。
 飼育員のお姉さんの説明も明るく自然な感じで良かった。

 植物園の方に上がっていくと、神代植物公園でも見たタコノキがあった(その時の話はこちら

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「幹の下部から多数の気根を斜めに生じ、その状態が蛸に似る(広辞苑より)」
 神代植物公園で見たものよりタコに似ている。こういうことだったのか。

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 これはビンロウジュ。種子に中枢神経を刺激する物質が含まれており、噛みタバコのような嗜好品になる。
 知識だけで実物を見たことはなかったので「これがあの……!」と感動した。

 この施設は地下が水族館で、ゆるい坂道を登って温室の上の方に上がっていくようになっている。
 道の途中にカメがいた。

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↑ビルマムツアシガメという陸亀。

 硬そうなウロコが格好良い。
 理由は分からないが一生懸命レンガを動かしていた。

 2階の高さのところにかかる橋を渡っていたら「ビヨウタコノキ」と書かれた札があった。
 ん? これはさっき見たのと同じ植物では……?
「あのタコノキが上まで伸びているんだ!!」

 神代植物公園で見たタコノキが小さかったので、タコノキはそれほど大きくならないと勝手に思っていた。
 樹齢や生育環境によって植物の見た目は変わる。
 最初に見た姿=その植物の姿 と思い込まないよう気をつけなければ。

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 あっ!

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 タコノキの実だ!!
 ポリネシアの救荒食(日常は食べないが、食糧不足におちいった時に食べるもの)だったと、資料に書かれていたはずだ。
 実物を見られて嬉しい。

 橋を渡りきったところに、虫まみれになっていない、綺麗なムシトリスミレが。

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 何も付いてない状態だと可愛いな!
 神代植物公園で見たムシトリスミレは、温室の外に置かれていたので「虫をいっぱい取っちゃったスミレ」になっていたのだ。

 先に進むと……

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 階段がミストに包まれている。
 ここを歩いていくの?! アトラクションかよ!

 入り口でもらった館内マップによると、熱帯の山地の環境を再現した「雲霧林」というエリアであるらしい。

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↑ベゴニアの一種だと思う(名前がよく見えなかった)

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↑キウイかと思ったら、チューインガムの原料になる「サポジラ」という植物だった。

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↑ジャスミン。クラクラするような甘い香り!

 パイナップルがいくつか生っていた。
 成長順に並べると……

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 全体はこんな感じ。

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 温室を出たところにある展示室に、実から葉が出たばかりという状態のココヤシがあった。

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 こんな風に根が出てくるのか!
 木として植えてあるものしか見たことがなかったので、勉強になった。

 見終わってから分かったのだが、板橋区立熱帯環境植物館は東南アジアの熱帯雨林を再現している。
 地下の水族館で海水・汽水(淡水と海水が混ざった水)・淡水の生き物を見てから地上に上がり、登り坂に沿って、海岸の植物、低地の植物、人々の生活に関わる植物、山地の植物を観賞していく。
 私の知りたいポリネシアの植物とは少しずれているけれど、魅力的な箱庭だと感じた。

 階段があったのでバリアフリーが気になったが、階ごとの移動にエレベーターを利用すれば、車椅子でも全体を見られるようだ。

 ここに来ようと考えたきっかけは、メールでの問い合わせへの返信が、あたたかく親切だったから。
 その印象そのままの、気さくで味わい深い場所だった。

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↑ニシキアナゴ
 
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2018年03月25日

熊本旅行記 あとがき

熊本旅行記(5日目 大阪・京都に寄り道)の続き)

 熊本地震から二年。行く前に考えていたより、沢山の傷跡が残っていました。不通が続く阿蘇の鉄道。立ち入り禁止の夏目漱石の家や熊本城。

 それでも飲食店の美味しいものを食べさせる力は完全に回復していて、熊本のみなさんの努力に胸が熱くなりました。きっと地震の直後には休業していたと思うのです。農家や料理人の生活が元通りになってようやく、食卓に美味しい食事が並ぶ。それは決して、当たり前のことなんかじゃない。

 熊本には鶴屋百貨店を始め、熊本日日新聞やおべんとうのヒライなど、熊本県内を強固に守っている企業が数多く存在します。そのあり方そのものが熊本城的です。欲張らずに、手の届く範囲のものをしっかり大切にする。熊本の人たちの地に足の着いた商売を見ていると、その真っ当さに心がほっとします。

 修復しなければいけないものはまだまだある。でも熊本は大丈夫。熊本城と阿蘇五岳という「中心」を見つめながら、熊本市民も阿蘇の人たちも、ばらけることなく生きてゆくのだと思います。中心があり過ぎる東京の近郊に住む私には、そういう落ち着いた暮らしが羨ましい。

 このささやかな旅行記が、見知らぬ誰かの熊本旅行の参考になれば嬉しいです。阿蘇の「ひめ路」と「olmo coppia」、熊本市の「橙書店」にはぜひ行ってみて欲しいな。

 ここまでのお付き合い、ありがとうございました。熊本で育った男の子が出てくる小説、頑張って完成させますね。
 
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2018年03月24日

熊本旅行記(5日目 大阪・京都に寄り道)

熊本旅行記(5日目 熊本市)の続き)

 新幹線の席が右側だったので、左側の見える出入口にずっと立っていた。私は九州新幹線開業のCMが大好きで、あの風景を実際に見てみたかったのだ。



 しかし熊本駅から博多駅の間に田園や運動場が何個もあって、
「ここはあのシーンの!……かも?」
 と意外に特定出来なかった。考えてみると、私がCMで胸打たれたのは景色ではない。そこで暮らす「人々」だ。みな、私と同じように生きている。喜びや悲しみを感じる愛おしい毎日が、無数に存在している。

 あれから七年経つ。CMの時ほどは人のいない農道を見つめながら、彼らの今を想像した。九州を離れた人もいるだろう。何も変わらず、トマトや米を作り続けている人もいるだろう。

 九州新幹線は博多が終点かと思っていたが、新大阪まで乗り換えなしで行ける。今回の旅で知った。博多を過ぎたので席に戻り、陣太鼓を食べた。



 思ったより甘過ぎないのは良かった。しかし、つぶあんなのがな〜(こしあんの方が好き)熊本土産の定番らしく、行く先々で売っていた。

 山口県を通るのは生まれて初めてだ。小さな山が連なっている。少しウトウトし、気付いたら広島! 大きなビルが立ち並び、都会じゃーん、と思った。
 私は地方に住む人たちの、土地への屈折した思いが理解出来ない。地方都市の外観は、東京と大して変わらないように見えるから。
 彼らが故郷を憎んだり愛したりする理由は、もっと精神的な何か、なのかもしれない。例えば濃密な人間関係や、親や周囲の古い価値観のようなもの。街をちらっと見ただけでは、そのあたたかさや面倒臭さを、自分の事としてとらえるのは難しい。

 新大阪では駅の中にある「神座(かむくら)」という店でラーメンを食べた。



 熊本でラーメンを食べずに何故大阪で、とは思ったけれど、関東では少なくなった醤油ベースの汁が嬉しい。白菜の味が優しい。
 関東はいつの間にか豚骨ラーメンとつけ麺だらけになってしまった。こういう醤油ラーメンも食べたいんだけどな〜

 在来線で京都に移動し、伊勢丹で朽木旭屋の鯖ずしを購入。一昨年の京都旅行で食べて、そのまろやかな味を忘れられなかったのだ(その時の記事はこちら
「私たち、熊本から東京に帰るところなんです。これを買うために京都で途中下車したんですよ!」
 とお店の人に言ったら、二切入りパックをおまけでくれた。わーお!

 阿闍梨餅も買いたかったが行列が長くて断念。いったいどんなお菓子なのだろう。いつか食べてみたいなぁ。

 東京行きの新幹線に乗る。外が雪景色になった。窓は濡れ、空は暗い。熊本市内が暖かかったから、もう真冬は過ぎたかと思ったのに。
 熊本は日が落ちるのも遅かった。関東より三十分ほど後だろうか。一日が長く感じた。新幹線で季節を遡るようだ。

「私、熊本に行って元気になった気がする」
「それは良かった」
「日常と旅行と、何が違うんだろう」
「普段の生活では、風景が足りないのかもしれないね」

 遠くなってゆく熊本も、Dちゃんと眠る自宅のベッドも、同じくらい恋しかった。

(熊本旅行記 終わり)

あとがきもあるよ)
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2018年03月23日

熊本旅行記(5日目 熊本市)

熊本旅行記(4日目 江津湖など)の続き)

2018年2月17日
 早朝、Dちゃんがバタバタする音で目が覚めた。
「バスルームの水道が、お湯の栓をひねっても、水の栓をひねっても、熱湯しか出なくなっちゃって」
「えっ」
「フロントに電話する。うるさくするけどごめんね」

 すぐにホテルの人が来てくれた。つなぎを着た技師のおじさんも一緒で、水回りをあちこち調べてみたものの、
「訳が分かりませんな」
 とお手上げ。お湯が出なくなるならともかく、お湯しか出なくなるなんて。

 幸い隣が空室で、そちらを使えることになり、Dちゃんはシャワーを浴びに行った。手を洗うくらい平気だろうと、元の部屋のトイレに入ってみたら、みるみる熱湯になってしまい大変だった。トイレを流す水も熱湯だった気がする(レバーが熱かった)

 朝食後、荷物も全て移動させ、本格的に隣の部屋に引っ越した。元の部屋より豪華! 広々として明るく、休憩用のソファーもある。窓も大きい。
「名古屋城がよく見えるよ」
 とDちゃんが言うから可笑しかった。こんなところで名古屋城を見てどうする。

 青空の下、修復中の熊本城の天守閣が、独り占めするように綺麗に見えた。

 寂しいことに、豪華な部屋とはすぐにお別れ。午前のうちに熊本を離れるのだ。ホテルをチェックアウトし、市電(路面電車)の停留所へ。熊本市に滞在中、ずいぶん市電を利用した。段差がなくて乗りやすく、本数も多くて便利だ。



 路面電車が人々を運び、賑やかで、しかし東京より少しおっとりしている。車両と熊本城を見つめながら、
「ああ、ここが、あの子の育った街なんだ」
 と実感した。まだ書き終わっていない小説に出てくる、私しか知らない架空の男の子。熊本のことはガイドブックやネットで調べて、ただひたすら想像していた。そんな乏しい情報だけを頼りに書いたのに、私は大きく間違いはしなかった。読んだ人がどう感じるかは分からないけれど。
 まずは書き終わらせないとね!


↑奥に鶴屋が見えますね。真ん中のおじさんはゴミ拾いをしていて、街を大切にしているんだな〜と。

 九州新幹線に乗るために熊本駅へ。移動中に食べようと「陣太鼓」というお菓子を買ったら、
「鶴屋に行ったんですか?」
 とお店の人が目をキラキラさせて尋ねてきた。Dちゃんが鶴屋の紙袋を持っていたのだ。熊本の人たちは何故これほど「鶴屋」に反応するのか。原理は分からないが、熊本の人と仲良くなりたいと思ったら、真っ先に鶴屋の紙袋を手に入れるべきかもしれない。

「さようなら」
 親しげに話しかけてくれた、熊本の人たち。熊本弁はほとんど聞けなかったけれど、熊本特有の、人と人の距離の近さを感じられた気がする。
「ありがとう」
 熊本にいる間、あらゆる場所でこの言葉を見た。地震の時の支援に感謝するものだ。
 生活を立て直し、美味しいものをいっぱい食べさせてくれて、こちらこそありがとう。

<旅の備忘録>
☆ホテルに頼んで荷物(スーツケース)を宅配便で送ってもらったら、帰り道が非常にラクだった! 旅行疲れも減るので、使えるものはケチらず使おう。
☆熊本市の中心は熊本駅ではなく熊本城です。交通網も繁華街も熊本城から伸びているので、熊本城前のホテルに泊まって正解でした。

熊本旅行記(5日目 大阪・京都に寄り道)に続く)
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