2019年07月15日

「一条ゆかり展」感想

 一条ゆかり展は2018年9月29日から12月24日まで、弥生美術館で開催されていました。
 新宿タカシマヤで開催される「特別展 りぼん」にも一条ゆかりの作品が展示されるそうなので、その時の感想を書いておこうかな、と。

 一条ゆかりは子供の頃、貧しい家庭で育った。
 自分が貧乏だったからこそ、貧乏臭い話を嫌い、ゴージャスな世界を描いたという。

 私も貧しい家の出で、自分の小説に裕福な子をよく登場させる(有閑倶楽部ほどではないが)
 しかし文学には私小説の伝統があるので、
「もっと自分に近い境遇を描くべきなのだろうか……」
 と悩むことがあった。

 一条ゆかりの作品世界の成り立ちを知り、
「書きたいものを書いて良いんだー!」
 と吹っ切れた。

 もちろんウソにならないように、色々調べる必要はあるけれども。
 いつまでも自分の境遇を背負い続けなくて良いんだ。

 会場では、有閑倶楽部の第1話が最後まで読めるようになっていた。
 セリフが洒落ていて、ストーリーも面白い。
 今の感覚でも古臭く感じない。

 可憐がこんなに優しい子だったなんて!
 子供の頃は気付かなかったな〜

 一条ゆかりの漫画に描かれる「大人の世界」に憧れていた日々を思い出し、胸が熱くなった。

 「特別展 りぼん」にはどんな原画が展示されるのだろう。
 開催期間は2019年7月18日から7月28日まで。公式ページはこちら
 行けるかな〜?

 その後、京都タカシマヤ、ながの東急百貨店、佐賀県立美術館にも巡回するそうです。
 りぼんっ子たちよ、グッズで破産するなよ☆
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:30| 美術 | 更新情報をチェックする

2019年06月14日

「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」感想

 ちひろ美術館・東京で開催中の、
「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」
 に行ってきました。

 ショーン・タンは、言葉が一切書かれていないのに登場人物たちの感情がひしひしと伝わってくる稀有な作品「アライバル」などで知られる絵本作家です。

アライバル
アライバル

 美しい原画にも感激しましたが、作品制作の舞台裏に触れられたのが嬉しかった。
 幻想的な世界観や、その表現であるイラストも、現実世界の注意深い観察から生まれる、ということで、旅先の風景を描いた絵画が数多く展示されていた。

 私はいつもぼんやりしていて、何事もしっかり見ていないという自覚がある。
 ものを見る訓練のために、写生や写真撮影をしてみようかな……

 「アライバル」の漫画のような画面構成は、レイモンド・ブリッグズの「スノーマン」を参考にしたそう。
 ブリッグズは「風が吹くとき」が深く心に残っているので、こちらも読んでみたいな。

 ショーン・タンにも描けなくなる時があるという。
 そこから抜け出すために、鉛筆の気の向くまま、ただ手を動かす。
 頭の中で先に考えておくのではなく、描いているうちに考えが生まれたりまとまったりする。
 私も文章に詰まったら、自分の手を信頼して、とにかく何か書いてみよう。

 ショーン・タンが原作と監督を務めた短編映画「ロスト・シング」も見ることが出来た(会場内で上映している)
 YouTubeに紹介動画があったので貼っておく。


↑45秒日本語付き


↑1分15秒

 心に余裕を持ち、古いもの、忘れ去られたものを大切にすることが、豊かな創造につながる。
 そんなメッセージを私は受け取った。

 ショーン・タン本人のインタビュー映像を見て(これも会場内で流している)
 国は違えど同世代の(私と2歳しか違わない)「生きている」作家であることを実感した。

 才能の大きさが全然違うけれども、私も頑張って自分の描きたいものを描くよ! と前向きな気持ちに。

 グッズ売り場では大好きなエリックの絵はがきが沢山あり、
「ひどい! 嬉しいけどひどい!」
 と騒ぎながら見事に散財した……



 可愛すぎる。私の好みど真ん中すぎるよエリック……

遠い町から来た話
遠い町から来た話
↑こちらの本の中にエリックはいます。

 会期は7月28日(日)まで。
 ショーン・タンのファンはもちろん、絵や小説など何か創作している人に見てもらいたくなる展示でした。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:50| 美術 | 更新情報をチェックする

2019年03月30日

「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展 感想

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 六本木のサントリー美術館で開催中(で、もうすぐ終わっちゃう)河鍋暁斎展に行ってきました〜

 カエルの相撲と美人画を同じ一枚の絵の中に描いたり、意外なものを組み合わせる感じが現代的だった。
 卒塔婆小町図は人間の死体の上にウサギの顔が浮かび、シュールレアリスム絵画のようだ。

 鳥や虎など動物の絵はどれも、輪郭が活き活きしていて良かった。
 達磨図も視線に力があって格好良かったな〜

 河鍋暁斎はとにかく真面目な人だったようで恐れ入った。
 信仰心が篤く寺にたびたび絵を寄進し、古い絵を模写して学ぶことを怠らず、沢山の注文仕事をこなし、さらには毎日絵日記までつけていたという。
 努力する才能というか、そこまで絵にのめり込み続けることが出来たのがすごい。

 さまざまな種類の絵があったけれど、一番勢いがあるのは戯画だ。
 真剣にふざけるためには、強靭な精神と高度な技術が必要なのだと思った。

 「放屁合戦絵巻」はタイトルそのままのバカバカしい絵だ。しかし解説に、
「『戯画の暁斎』らしい作品だが、画題自体は平安時代まで遡る」
 とあって、エーッ!

 日本美術の豊かさと、河鍋暁斎の異常な情熱をひしひしと感じる展示でした。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 01:40| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年12月10日

「オノ・ナツメ 1日1キャラクター展」感想



 有楽町マルイで開催していた「オノ・ナツメ 1日1キャラクター展」最終日に行って来ました〜!
 1日1キャラクターって何だろう? と思っていたら、オノ・ナツメ作品の登場人物がいーっぱい並んでいた。日付が添えられているので、1日に1キャラずつ、コツコツ描きためていた様子。

 2006年の作品である「not simple」の主人公イアンを、2017年8月29日に描いていたのが嬉しかった。作品が結末を迎えても、イアンは作者の中で生きていたんだなぁ、と。
 漫画では一コマくらいしか出て来ない端役キャラも、主人公と同じ大きさの紙に描かれ、平等に並んでいるのが良かった。どのキャラも作者に深く愛されているのを感じた。

 私はオノ・ナツメの絵、特にその線の引き方と表情のとらえ方がすごく好きで、漫画というより画集のように楽しんでいる部分がある。知っているキャラも知らないキャラも、幸せな気持ちで眺めた。
 Dちゃんと一緒に行くことが出来て、素敵なデートでした♪

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posted by 柳屋文芸堂 at 00:34| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年10月04日

「萩岩睦美 画業40周年記念 再現画展」感想

 ガレリア表参道原宿で開催中の萩岩睦美展に行って来ました〜!

 萩岩睦美さんは雑誌「りぼん」で活躍していた漫画家さん。私は子供の頃に「パールガーデン」「うさぎ月夜に星のふね」「魔法の砂糖菓子」などの作品を繰り返し読み、かなり強く影響を受けた。幼い私に「世界が単純ではないこと」を教えてくれた物語。私の魂の土台になっている。

 再現画、というのは雑誌掲載のために描いたカラー原稿を、展示に耐える画材で御本人が描き直したもの。元の原稿は印刷向きのインクを選んでおり、紫外線で褪色してしまうそうです。

 どの絵も懐かしくて、可愛くて、綺麗で…… 萩岩さんに話しかけるファンのみなさんが「作者に会えた感激でどうしたら良いか分からない!」という感じに熱い思いがあふれまくっていて、その様子を見ているだけで幸せだった。私は「似顔絵そのまんまの萩岩さんだ〜」と見つめるばかりで、声をかけられなかった。ひたすら会場内をぐるぐるしていた(不審者)

 少女の頃に夢中になった物語を今でも愛し続けているファンと、かつて描いた作品を今でも大切にしている作者が作り出す、親密で幸福な空間だった。

 展示は10月8日まで(地図など詳細はこちら
 ポストカード、一筆箋、マグカップなどグッズも充実しています。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:13| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年09月30日

「デザインあ展」感想

 日本科学未来館で開催中の「デザインあ展」に行ってきました。
 元になっている番組は見たことがないのだけど、ディレクターの佐藤卓さんに興味があったので。

 とにかく混んでいた!
 体験型の展示が多く、子供たちが楽しむ雰囲気で、大人がしゃしゃり出るのは申し訳ない感じ。
 それでも待ち人数が少ないものはいくつか体験出来たし、見るだけの展示も自然と何かを「想像」させる。
 見る人を受け身にしない工夫があちこちにあった。

 一番格好良かったのは、大きな展示室の四方の壁全てに映し出される、写真が次々と紋に変わっていく映像。
(「森羅万象」このページで見られる)
 花や鳥などが抽象化されて「紋」になる。

 カラーは白黒に、輪郭は数学的な線となって、いったん単純化される。
 しかしその単純な形は規則に沿って細かく増殖し、複雑に変化していく。
 その圧倒的なバリエーション。

 この作品以外にも、複数の物の形の共通点を見つけたり、「抽象化」について考える展示がけっこうあった。
 ふと、私が好きな本の表紙は、本の内容を正確に美しく抽象化出来ているんだな〜 と気付いた。

 私はデザインが苦手で、だからこそ私の知らないことがいっぱいあって面白い。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:51| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年09月02日

「言葉を超えた写真家 富山治夫『現代語感』」展 感想



 東京ミッドタウンへ行く途中で見たポスターの写真に惹かれ、入場無料だというのでFUJIFILM SQUAREで開催中の「言葉を超えた写真家 富山治夫『現代語感』」展を見てみたら、思った以上に良かった! 1960年代(高度経済成長期)の、人のあふれる都会の風景を、皮肉な、時に優しい視線で切り取っている。

 人口増加が当たり前だった時代。人が生まれてくる喜び(妊婦や赤ん坊の写真)があると同時に、人が多過ぎる大変さ(交通や混雑にまつわる写真)もある。仕事の休憩時間も、夜の恋する時間も、人がぎゅうぎゅう。

 人間は幸福だけを運んでくるわけではなく、他人の不幸は(悪いなと思いつつ)滑稽に見えたりもする。しかし人が生きているというのは、おおむねニコッとしてしまうような出来事なんだ、と感じさせる。ユーモアと物語のある写真ばかりだった。


posted by 柳屋文芸堂 at 23:10| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年09月01日

「琉球 美の宝庫」展 感想

 サントリー美術館で開催中の「琉球 美の宝庫」展に行ってきました〜
 9月2日で終わっちゃうので危ないところだった。間に合って良かった。

 やはり一番感動したのはチラシなどに使われている玉冠(ぎょくかん)。



「表面を黒縮緬(ちりめん)で覆い、帯状の金糸が縫い付けられ、各筋には金、銀、珊瑚(さんご)、水晶、瑪瑙(めのう)、琥珀(こはく)、軟玉の7種類の玉が金の鋲(びょう)でとめられている」(展示横の説明文より引用)

(軟玉:硬度が比較的低い玉の一。緑閃石(りょくせんせき)または透閃石(とうせんせき)からなり、古くから飾り石や工芸品に用いられた。「デジタル大辞泉」より)

 豪華でありながら上品。
 こんな宝石の飾り方があるのかと感心した。
 特に朱色っぽい珊瑚の赤と、黒の組み合わせにうっとりする。

 着物の布地も色鮮やかで美しかった。
 王族の少年が着用していたと思われる、芭蕉布の夏物単(ひとえ)
 紅花で緋色に染められている。
 芭蕉は大きな葉を持つ植物で、この茎の繊維から糸を紡いで織るそうだ(参考ページ

 桐板(トゥンビャン)という布もあり、これは虎尾蘭(とらおらん)の繊維で織るとのこと(参考ページ
 苧麻(ちょま)という草の繊維で作る宮古上布(参考ページ)もあった。
 どちらも薄く、暑くても気持ちよく着られそうだ。

 映画「メットガラ ドレスをまとった美術館」を見て、西洋のデザイナーは中国と日本の文化をごちゃ混ぜにしていると、少々呆れた。
 しかし琉球文化を見ると、中国と日本の文化は分断しておらず、連続しているのだと感じる。

 絵画の中に描かれている「針突(はじち)」も興味深かった。
 琉球の女性が指や手の甲などに施していたという入れ墨(参考ページ
 やはり入れ墨が重要な、ポリネシア文化とのつながりを思った(勝手に思っただけで実際に起源が同じかは不明です)

 華やかさという意味でも、他文化との交流という意味でも、開放的な印象を持った。
 日本に琉球文化があるのは本当に幸せなことだなぁ、と感じる展示でした。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 11:35| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年07月25日

特別展「縄文―1万年の美の鼓動」感想

 東京国立博物館の平成館で開催中の縄文展に行ってきました〜
 土器だらけだった!
 ちょっと今、石器気分で、土器を見ても上の空だったのだけど(すまん。当時の人々の暮らしぶりの方に興味があって)それでも立体的に盛り上がり、中空部分があったりする縄文土器は迫力があって美しかった。

 他の国で出土した土器は、表面がつるっとしているものが多いらしい。
 縄文土器のように表面に凸凹のある模様を付けるのは、世界でも珍しいようだ。

 会場に少しだけあった石製品(石斧など)と、国立科学博物館の常設展にあった石製のナイフで、石器気分を満たしました。
 楽しい一日でした。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 22:52| 美術 | 更新情報をチェックする

2018年05月06日

「Khadi インドの明日をつむぐ」感想

 昨日、六本木の「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の「Khadi インドの明日をつむぐ」という展示を見てきました。

 Khadi(カディ)というのはインドの織物の名前です。糸車を使って紡いだ糸を、手織り機で織り上げる。素朴ながら薄くて繊細な布地。全ての工程が手作業で、それが独特の風合いを生み出している。何より暑い時に着たらすっと汗を吸い取ってくれて涼しそう。
 糸の密度を変えて濃淡を出し、格子柄にしているものとか、綺麗だったなぁ!
 芯を入れずに布だけで作るという、丸いボタンも可愛かった。

 機械の方がずっと早く大量に生産出来るのだろうけど、私は手で作り上げた美しいものに強い憧れがある。指先の感覚でしか表現出来ないものはまだまだ沢山あると思うし、「作る」という行為が人の心に与える影響を重視しているせいもある。
 効率的な生産を否定したいのではなく、目的によって使い分けたい。
 選択肢の一つとして、消えてしまいやすい手工芸を守れたら、と願う。

 小規模な展示なので30分くらいで回れた。映像を全部じっくり見たらもう少しかかるかな。
 珍しくDちゃんと二人で鑑賞し(いつもは忙しくて私一人の時が多い)その後、南イタリア料理のお店「Napule」でホタルイカのパスタを食べて、ゴールデンウィークの楽しい思い出になりました♪

 Khadiの服、欲しいな〜 真夏に着たい!
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:17| 美術 | 更新情報をチェックする