2017年07月11日

映画「太陽の下で」感想



 北朝鮮の少女を追ったドキュメンタリー。
 ……なんて当然普通に撮れるはずもなく、少女とその家族は北朝鮮側が用意した脚本・監督に従って「理想の生活」を演じ始める。
 真実を写すために、その演出の様子を隠し撮りすることに。

 具体的には、プロパガンダ映画にメイキング映像が混ざっている感じ。
 北朝鮮政府が考える理想の国民がどんなものなのかは伝わってきたけれど、北朝鮮の人々の実態はあまりよく分からなかったな〜

 少女の両親の仕事を「工場勤務」に変えるというのが興味深かった。
 何かを生産している方が共産主義的で好ましいということなのだろうか。

 少女と両親は演技を始める前、どんな暮らしをしていたのだろう。
 今現在、元気にしているのだろうか。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:57| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年07月09日

映画「ピアノマニア」感想

 ピアノの調律師の仕事を追ったドキュメンタリー。
 音色へのこだわりが強いピアニストの無茶な要望に応えようとしたり、ピアノを使う芸人コンビにネタを提供したり。
 調律師はピアノの「音程」を合わせるだけではなく、もっと幅広く音楽に関わるんだなぁと。
 この映画に出てくるシュテファンさん(スタインウェイ社の技術主任)が特別なのかもしれないけど。

 途中で古楽器のクラヴィコードの演奏を聴けたのが良かった。
 親密で、人間的な愁いを含んだ音。
 これと対比することで、ピアノが生み出す音楽の、暴力的なほどの華やかさがより強く感じられた。

posted by 柳屋文芸堂 at 00:28| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年06月28日

映画「69 sixty nine」感想

 私は「69 sixty nine」の原作が大好きなので、
「映画なんて無理無理、絶対ムリ!」
 と思っていたのだけど、「怒り」で妻夫木聡と李相日監督に興味を持ったので見てみました。

 原作を読んでから25年ほど経ち、内容を程良く忘れていたので、そんなに違和感なく楽しめました。
 男子高校生の日常や妄想の、馬鹿馬鹿しく笑える部分を大切にして映像化されていて、ホッとした。
 この物語の一番好きなところだから。

 何しろ全編で使われている長崎の方言が可愛い!
 星野源がとんでもない役で出ていてびっくりした。
 原作でも非常に印象的な場面で、さすがにここは忘れてなかったよ。

 新井浩文がだらしない番長役をやっている。
 「フランケンシュタインの恋」でさんざん見た後だったからウケた。

 「怒り」と同じように妻夫木聡の母親役が原日出子で、
「(怒りの)優馬は若い頃、こんなにお母さんに苦労かけたのね……」
 と、全然違う話なのに勝手につなげてじーんとしてしまった。
 お父さん役の柴田恭兵も格好良くてステキです。

 多くの物語が「酷いことを言ったりやったりしても許されてしまう登場人物」を求めていて、そういう役を演じられる俳優は限られており、妻夫木聡は良くも悪くもそこにピタッとハマってしまう存在なんだなぁと。
 ゲイでもノンケでも、モテる・愛されるという特徴から「逃れられない」
 本人としてはもうちょっと幅広くやってみたいんじゃないかと思うのだけど。

 妻夫木聡の容貌と演技は、観客の感情を加速させる。
 この長所は、悲しみより喜びに対して使って欲しい。
 「69 sixty nine」のケン役はからりと明るく、見ていて愉快な気持ちになる。
 あのtoo sweetな笑顔を見たら、どんな悪さも全部チャラになっちゃうよねぇ。

 そうそう、下ネタだらけなので苦手な方はご注意を!

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posted by 柳屋文芸堂 at 13:51| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年06月27日

映画「悪魔の手毬唄(1977年版)」感想

 「犬神家の一族」の方がテンポが良くて好みだったな。
 同じ原作者・監督でもずいぶん違うものですね。
 田舎の閉鎖的な雰囲気は良かった。

 「犬神家の一族」にも出て来た三木のり平と沼田カズ子夫妻、最高ですね!
 奥さんが無愛想に写真を投げる場面、この映画の中で一番好き。

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posted by 柳屋文芸堂 at 18:50| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年06月26日

テレビドラマ「フランケンシュタインの恋」感想

 フランケンシュタインの恋、昨日が最終回でした。
 ドラマをリアルタイムで最初から最後まで見たのは2002年の「HR」以来で15年ぶり。
 長編小説を読み終えたような充実感がありました。

 主演の綾野剛が目的だった訳ですが、見ていて一番興奮したのは十勝さん(山内圭哉)
 一応カタキ役で善人ではないのだけど、完全な悪人でもない。
 その場の状況によって感情が大きく振れ、瞬間瞬間で良い人に見えたり悪い人に見えたりする。

 下手な人がやったら「演技の定まらない人」になりそうなところを、十勝さんは常に100%十勝さんで、内面だけが見事にリアルにぶれてゆく。
「現実の人間って、こうだよねえ!!」
 と唸ってしまうキャラだった。

 玉名さん(大西礼芳)も色っぽくてステキでしたね〜
 怪物もヤンキーも全部まとめて面倒見ちゃう包容力。
 彼女が出てくるたび、私はニコニコしていたと思う。
 毎回、画面を通して会えることが嬉しかった。
 
 美琴(川栄李奈)も可愛かったなぁ!
 つっぱってしゃべる様子も良かったし、激しい感情を抱えたままじっと黙っている時の瞳が綺麗で。
 美琴と研さん(綾野剛)のやり取りは、可笑しかったり優しかったりでどれも大好きだった。

 深志博士(斎藤工)はそんなに出番は多くなかったのに、少ないセリフから人間を嫌いつつ人間を求めている気持ちが伝わってきて、凄いな〜 と。
 西洋ファンタジーのような風貌が120年前の背景と上手く重なって「フランケンシュタイン」という言葉に合った雰囲気を作り出していましたね。

 研さんには当然めろめろで、あまりの愛らしさにテレちゃって直視出来ないくらいでした。
 そして研さんからの影響でどんどんピュアになっていく綾野剛が…… もう……
 
 サキタハヂメさんの音楽も幻想的かつ前向きで、サウンドトラックを買おうか考えている。
 演奏にのこぎりが使われていると知り、びっくり。
 あの、みょーん、って音がそうなのかな?

 主題歌の「棒人間」は人間の世界で生きていく大変さが凝縮されていますよね。
 お話の最後にこれが流れると、
「ああ!」
 と毎回叫びたくなった。

 オーディオコメンタリーやフラ恋絵大賞など、ファンを大切にした企画も多くて幸せだった。
 私はやきのりさんげげたさんという方が描かれる「フランケンシュタインの恋」のイラストが大好きで、毎週楽しみにしていました。
 ありがとうございました!

 放送が終わってしまって寂しいけれど、ドラマで出会った登場人物たちは私の心にちゃんといる。
 これからも時々思い出して、人間の欲望や思いやりについて考えてみたい。

 第一話を見た後でうっかり書いてしまった二次創作はこちら
 これも良い思い出です。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:01| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年06月14日

映画「犬神家の一族(1976年版)」感想

 複雑な血縁関係を持つ富豪一家。
 矢継ぎ早に起こる殺人事件。次々と入れ替わる容疑者。
 欲望渦巻く人々を絡み合わせる因縁と怨念。

 いや〜 最初から最後まで飽きさせないですね。

 犬神家の一族と言えばスケキヨさんがあまりにも有名で、
「あーこの人、逆さになって死んじゃうんだなぁ」
 と思いながら見た訳ですが、あれは沢山起こる事件のうちの一つでしかないので、問題なく楽しめました。

 岸田今日子の使い方が妙に贅沢だった。
 横溝正史が旅館の主人役で出ており、石坂浩二に向かって、
「金田一さんですか?」
 と言うの、萌え上がりますね!!

 音楽が「ルパン三世 カリオストロの城」などと同じ大野雄二なのも良かった。
 今聞くと逆に新鮮で、全然古臭く感じない。

 他の市川崑監督作品も見てみたいな。

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posted by 柳屋文芸堂 at 18:51| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年06月08日

映画「武曲」感想



「言葉なあ、小僧。大事でもあるし、よけいなもんでもあるわな。禅の世界では、不立文字といって、言葉ではなく心、心という言葉になる以前の心で通じ合うのを理想とするんだ」

 というセリフがある映画の感想を、言葉で書くという矛盾。
 不立文字だということも不立文字という文字を使って伝えなければいけない歯がゆさ。
 私は禅のことをよく知らないけれど、そういう相反する欲求の中で真理を見出そうとする教えなのかもしれない。

 融(村上虹郎)は、ラップの歌詞を作るのが好きな高校生。
 冒涜、原罪など強めの言葉を連ねて叫んで「ある程度の」満足は得ているが、同時にどうしようもなく「何か」を渇望している。

 融は予告映像での印象よりずっと普通の男の子だった。
 言葉に惹かれ、言葉が完全なエクスタシーを与えてくれないことにいら立ち、もっと、もっととノートに言葉を書き殴ってゆく。
 融の飢えは私の心にも常にあるものだから、登場人物の中で誰よりも共感した。

 40歳になって高校生に共感するってどうなの…… 私、思春期終わってないのか…… と自分のことが心配になったが、それだけ虹郎くんの演技が自然で、観客が入り込みやすかったのだろう。

 剣道の師範で寺の和尚の光邑(柄本明)は融の満たされぬ思いと剣の素質を見抜き、酒に溺れ堕落した生活を送る研吾(綾野剛)に引き合わせる。

 この部分、物語としては展開に少々無理があるのだけど、
「光邑は研吾を救わなければと思い続けていて、それが出来る人間を探しており、融を見て即座に『こいつだ!』と気付いたんだ」
 と納得させてしまう柄本明はすごかった。

 研吾というか綾野剛はもう、飲み屋で同期生のおじさんに寄りかかっているだけでメチャクチャ色っぽい。
 寂しさで作られたような白い皮膚が、人間が発する熱を狂おしく求めている。

 言葉でも酒でも解決出来ない、欠けた魂を補完するため、融と研吾は嵐の夜に決闘をする。
 ここはほんと、

 君や来し我や行きけむおもほへず 夢か現(うつつ)か寝てかさめてか
(貴方が来て下さったのか、私のほうから逢いに行ったのかもよくわかりません。
 昨日の出来事は夢だったのか現実だったか、眠っていたのか目覚めていたのか……)


 という感じで、ラブシーンよりラブシーンだった。
(上記の和歌は映画に出てくる訳ではありません。伊勢物語からの引用)

 研吾がアルコール依存症なのもあって、画面に映っているものが現実なのか幻なのか分からないところがすごく良い。
 一番好きなのはお墓で老婆に話しかけられるところ。

「五悪というもんを知ってるか(中略)殺生、偸盗、邪淫、妄語、飲酒……(中略)矢田部の人間は、五悪にまみれてるんじゃないか」

 こんなこと唐突に言ってくるおばあさんイヤだ!
 特殊効果を使っている訳でもないので、それはごく普通の老婆にも見えるし、研吾の自責の念が見せた幻覚とも受け取れる。

 鎌倉という街が、半分黄泉に沈んでしまった異境のように感じられ、ここでかけられた呪いはここで解かなければならないと、みな当然のこととして信じている。
 映画というより神話の登場人物の動きに近い。

 私は不立文字を体現したものとして美術や音楽を愛し、憎いのか好きなのか分からないと思いつつ言葉を綴り、そして映画は、
「言葉ではなく映像で見せてくれ!」
 と願いながら見ている気がする。

 武曲という映画は私の気持ちに応えてくれたとも言えるし、不満を残したとも言える。
 不立文字を希求しつつ、徹底してはいないので。

 この記事で黄色い字にしたセリフはパンフレットからの引用。
 パンフに完成台本を載せてくれたことが嬉しかった。
 感想を書きやすい!

 こうやって私は不確かな言葉で世界を切り刻み、悟りは遠い。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:39| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年05月28日

映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」感想



 簡単に言ってしまえば、
「おじいちゃんが荷物でいっぱいの部屋でゴソゴソしてる」
 だけの話なんですけど、もう最初から最後まで泣きっぱなしだった。
 だってそこにあるのはまさしく「人生」だから。

 積み上がった箱の中には、プリントやフィルムが詰まっている。
 片付けるつもりなのか、映画監督に見せるつもりなのか、ソールじいちゃんは箱を引っ張り出して中身を確認する。

 街角のささやかな風景。
 道ゆく人々のやわらかな影。
 愛し合う家族。

 曖昧で美しい記憶はあちこちに散らばりまとまることはなく、どう考えても死ぬまでにこの部屋が綺麗に整頓されることはなさそうだ。

 まるで可視化された魂のような部屋。

 おじいちゃんの部屋にあった写真は現在、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで展示されている。

「写真は、しばしば重要な出来事を取り上げるものだと思われているが、実際には、終わることのない世界の中にある小さな断片と思い出を創り出すものだ」
(ソール・ライター展の公式サイトより引用)

 評価なんて気にせずに、自分が「良いな」と思ったものを心に溜めてゆこう。
 自然とそんな気持ちになれる映画だった。

パンケーキ.jpg
↑コラボメニューのバナナウォルナッツパンケーキ
posted by 柳屋文芸堂 at 00:52| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年05月17日

映画クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」感想

 子供の頃に憧れていた世界を体験させてくれる「20世紀博」に夢中になる大人たち。
 街には人目もはばからず子供のような遊びをする大人たちがあふれる。
 ついには仕事や育児など大人がやらなければいけないことを放棄して、大人たちは消えてしまい……

 映画クレヨンしんちゃん「ヘンダーランドの大冒険」の感想(これ)で、子供向けの作品は安全でなければいけない、というようなことを書いたが、この作品、安全か……?

 見ている間、私はすごく怖かった。
 敵であるケンとチャコが作った、人のあふれる昔風の商店街を見て、
「この世界の方が良いかも」
 と思ってしまったのだ。

 暴力ではなく、郷愁によって服従させられることがあるなんて、知らなかった。
 いや、意識していなかっただけで、「懐かしさ」に負けてしまったことが、これまでにも沢山、あったのかもしれない。

 子供というのは存外自立心が強く、大人をあてにしていないものだから、子供だけ残される場面は不安より楽しさが勝り、ワクワク見られる気もする。
 子供にとっては安全で、大人にとっては容赦ない物語だ。

 私は何故か、三島由紀夫が死ぬ前にした演説を思い出していた。
 自殺する人は、未来へ行くことをやめてしまうんだ…… と考えていたら、あのラスト!
 お前こそズルいぞ、しんのすけ!
 ボロ泣きしちゃったじゃないか〜

 子供の頃に想像していたほど輝かしくない未来(=現在)で、クサい臭いのするおじさん・おばさんとして生きていくこと。
 逃れがたい失望感と、それでも「自分で手に入れた」と誇れるちっぽけな幸福。

 年を取ると懐かしく感じるものが増えていって、懐かしさに絡め取られて前に進めなくなる可能性がどんどん高くなってゆくのだ……気を付けなければ。

 東京の現状を考慮していないオリンピックの計画も、現在から目をそらし、美しい過去の再来を夢見ているようで、オトナ帝国の逆襲は何度でも繰り返されるのかもしれない。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:31| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年05月12日

映画クレヨンしんちゃん「ヘンダーランドの大冒険」感想

 遠足で行った群馬のヘンダーランドで、魔女の一味との戦いに巻き込まれる、という冒険ファンタジー。
 想像していた以上に真っ当な子供向け映画で、
「クレヨンしんちゃんってこんな感じなのか〜」
 と感心した。

 子供向け、というのは幼稚・安易という意味ではない。
 子供向けの作品が最も大切にしなければいけないのは、
「安全であること」
 だと思う。

 物語の中では恐ろしいことが起こる。
 しかしその恐怖は、
「観客(子供たち)を傷付けるようなものであってはならない」

 時に物語は、本当に心を傷付けてしまうことがある。
 子供向けの物語は、暴走して脱線する電車ではなく、整備されて安全の保証されたジェットコースターでないと。
 精神的に弱って児童書ばかり読んでいた時期があったので、安全であることがどれほど大事かよく分かる。

 戦って欲しいとお願いされたしんちゃんは葛藤する。
 魔女の魔法にだまされるし、苦しみもある。
 しかし可愛い妖精のようなからくり人形トッペマはしんちゃんを何度も助けてくれるし、父のひろしと母のみさえ、それにアクション仮面たちが味方になって一緒に戦ってくれる。
 危険はあるが、危険よりずっと大きな安心が用意されている。

 オカマ魔女の様式美が素晴らしくて。
 こういうオカマの描き方って、今ではもう許されないんだろうなぁ……
 オカマの文化を守るにはどうすれば良いんだ……!

 しんちゃんが正義のために一直線に頑張ったりせず、すぐ横道にそれるところが、話に緩急をつけていて良い。
 クレヨンしんちゃんを見慣れている人には当たり前なんでしょうけど、私はあまり知らないので新鮮だった。
 ぶりぶりざえもんは寝返ってばかりいるし。

 時々出てくる埼玉・群馬ネタが可笑しかった。
 蓮田サービスエリアとか。
 東武線にも馴染みがあるから嬉しくて。
 桐生線に乗り換えて、って本当にヘンダーランドに行けちゃいそう。

 弱っていた頃の私でも、この映画なら見られたかもしれない、と思った。
 もちろん家事をしながら見た元気な私も、気持ち良く楽しめた。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:49| 映画・映像 | 更新情報をチェックする