2017年01月19日

「日本で一番悪い奴ら」DVDプレミアム・エディション感想

日本で一番悪い奴ら DVDプレミアム・エディション(初回限定生産) -
日本で一番悪い奴ら DVDプレミアム・エディション(初回限定生産) -

 この1週間は1月11日に発売された「日本で一番悪い奴ら」のDVDに夢中で、この映画の主人公と同様に廃人のようになっていました。
 本編は映画館で見ているので(その時の感想はこちら パンフレットについての感想はこっち)DVDはどうしようかな〜 と悩んでいたのだけど、買って良かった!

 注文する時「デジパック仕様」というのがよく分からず、DVDのケースが大きいのかと心配していた。
 届いてみると、サイズは普通のケースと一緒でホッ(邪魔にならない)
 厚紙を使ったケースのことをこう呼ぶようです。知らなかった。

 ブックレットはパンフそのままの部分も多かったけど、ロケ地マップが充実していた。

 本編ディスクのオーディオ・コメンタリーが特に中毒性がすごい。
 綾野剛主演映画を綾野剛が解説し続けるんだもの。止められない。
 家事をやりながら繰り返し聴いている。

 特典ディスクのメイキングでは脚本家の池上純哉のコメントが印象的だった。

「原作に『裁判になっても、北海道警は自分を守ってくれると思っていた』というのがあって、それを読んだ時に、映画になると思った。あれだけのことをしても、組織の中の考え方で彼はずっといて、それが自分を守ってくれると信じていた」

 私は「自分が知らない価値観で動く世界」に興奮する。
 「今、自分がいる場所」の常識が絶対的なものではないことを教えてくれるから。
 私を縛っているものを壊してくれる気がする。
 「日本で一番悪い奴ら」にもそういう要素があるから、これだけ惹かれたんだ、と気付いた。

 終わりの方、悪徳刑事・諸星であったはずの綾野剛が「怒り」の直人そっくりにうずくまっていてどきりとした。
 いやまあ、同じ人が演じているのだからそっくりなのは当然なのだけど、体の形だけでなく、彼の発している空気が同じだったのだ。
 諸星と直人は全く違うタイプのキャラなのに。

 諸星でも直人でも、綾野剛は人間が本質的に持っている「寄る辺なさ」を見事に表現している。
 それによって見る人の心を震わせられるから、これだけ人気があるし、私も好きになったんだな、と思った。 

 舞台挨拶の撮影裏話も楽しいです。
 映画館行ってパンフも読んでメイキングも見て「日本で一番悪い奴ら」しっかり味わったな〜
 満足♪
 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:32| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

映画「のぼうの城」感想



 埼玉県行田市にかつてあった忍城(おしじょう)の物語。
 城の人たちと村人たちの距離が近くて、風の谷のよう。
 田植えを終え、村中が緑に輝き、城主のいとこである「のぼう様」も喜び踊っている。

 そんな田舎城に、豊臣秀吉の軍が攻めてくるという。
 どうしてここで戦わなきゃいけないのと切なくなった。

 この時代の戦い方ってえげつないんですね〜
 鉄砲ガンガン使うし、油をまいて火を付けたりもする。
 挙句の水攻め。
 小さな城一つを落とすために、あたり一帯を水浸しにするなんて、石田三成、酷くないですか……

 のぼう様を演じたのは狂言師・野村萬斎。
 戦うのが当たり前の時代に「平和に楽しく暮らしたい」と願うのは、まさに狂気。
 まっとうで、だからこそ愛される狂いっぷりを、舞と歌で見事に見せてくれました。

 戦いの話だから、当然死者も沢山出てくる。
 それでものぼう様の祝祭的なキャラと演技のおかげで、正月最初に見る映画にぴったりでした。
 何も考えずに選んだのだけど。

 最後の方に現在の行田市の映像が流れてニヤニヤ。
 のぼうの城に行けなかった行田旅行記(これ)もぜひどうぞ〜
 
posted by 柳屋文芸堂 at 17:02| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年12月27日

映画「帰ってきたヒトラー」感想

 ヒトラーが現代によみがえったら、というコメディ映画。
 途中「これ演技なの? え? え?」となるところがあって、後で調べてみたらドキュメンタリーの手法を取り入れていたことが分かった。
 ヒトラー役の人がヒトラーの格好・人格のままで、街の人々や政治活動をしている人たちと会って話す。
 その部分はおおむねアドリブであるらしい。

 現代人というのは、独裁者だろうと噴火してる火山だろうと、とりあえずスマホを向けるんですね。
 危険かどうか考える前に、いつもと違う特別なものがあったら撮らずにはいられない。

 みな口々に移民への不満を述べ、ヒトラーを大歓迎しちゃう人もけっこういて、これ演技じゃないんだ、と思うとニュースの向こう側が見えたようでゾッとした。
 何百万人死んでいようと、他人の死は痛くも苦しくもない。
 他人の死に共感出来るのは、余裕のある人が良心的な想像をした時だけだ。

 そして今、世界には、余裕のない人々があふれ返っている。
 自分が言えないことを言ってくれて、やれないことをやってくれる人を切実に求めている。

 余裕のない人を増やさないよう社会を変えてゆくのは簡単ではなく、何かやっても効果が見えにくい。
 勇ましいことを言ったり、そういう人を支持したりする方がラクだ。
 それでも、どんなにささやかであっても、自分で出来ることを探さなければいけないのだと思う。

 さもなければ、ヒトラーは何度でもよみがえる。


 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:30| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

映画「イヴの時間」感想

 人間とアンドロイドを区別しない、というルールを掲げた喫茶店が舞台の、近未来SF。
 論理的に話さないと納得してくれない旧型のアンドロイドがDちゃんみたいでウケた。
 他のアンドロイドたちはあまりにも人間的で、ちょっと私の好みじゃなかったかな。
 みんな優しくてあたたかくて可愛かったけど。

 私も人の話に矛盾が見つかると思考が止まったりするので、我々はアンドロイドよりアンドロイドな夫婦なのかもしれない。


 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:00| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

映画「この世界の片隅に」感想(続き)

 リンさんの出番が少なくなっていたせいで、周作さんが一途な人みたいになってたね。
 原作を読んだ時に私は、
「リンさんのことで悩んだ周作が、子供の頃に自分を助けてくれた女の子なら再び自分を救ってくれるに違いない、と考え、すずさんを探し出した」
 という風に解釈していた。
 映画の描き方だと「子供の頃からずっとすずさんを思い続けていた」ように受け取れるよね。

 それもあって、周作さんがすずさんを説得する場面は、原作より映画の方が情熱的に見えた。
 この作品に限らず、心情の描写は漫画や小説の方が細やか、映画の方がドラマチックになることが多いように感じる。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 09:24| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年12月12日

映画「この世界の片隅に」感想

 原作の全部のエピソードを入れるのはムリだったか〜
 リンさんの話が少なくなっていたのが残念でしたね(楠木公も……)
 独特の筆致や登場人物たちの性格が丁寧に再現されていたのは良かった。

 原作が好き過ぎて、漫画と映画を比較する感想しか言えない。
 これから何が起こるか分かるから、最初から泣きっぱなしで、周作さんが広島に帰りたがるすずさんを説得する場面で一番大泣きだった。

 原作を読んでない人の、純粋な感想が聞きたいです。
(私が前に書いた漫画版への感想はこちらこちら


 
posted by 柳屋文芸堂 at 00:19| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年12月10日

映画「小さいおうち」感想

 戦争が激化する少し前の東京が舞台。
 中流家庭で起きた恋愛事件。
 奥様の不倫を知ってしまった女中・タキが、おばあさんになってから当時を振り返る、という設定。

 不倫相手が綾野剛なら、とちょっと思ったけど、吉岡秀隆は声が可愛いのね。
 子供みたいに頼りなくて純真な感じがして、戦局と仕事の話しかしない男たちにうんざりしている奥様がよろめく相手として「これはこれで良いかも」と思った。

 妻夫木聡が出てくる現代パートがイマイチ、というコメントをいくつか見たけど、
「昭和10年代は暗い時代」
 と思い込んでいる現代人と、
「昭和10年代に明るい思い出を持っている」
 その時代を実際に生きていた人々の感覚を対比させるのがこの映画の肝なのだから、少々説明的でも必要な部分だし、そう悪くなかったと思う。

 何故当時の人々は世相を明るく感じていたのか。
 マスメディア(新聞やラジオ)がだましていたからです。
 世間の人々の「世界観」を形作っているのは結局のところマスメディアで、会社が倒産したり、空襲で家を焼かれたりして初めて「本当の世界」を知ることになる。

 それは今も昔も同じだよと、昭和6年生まれの山田洋次監督は伝えたかったのだと感じた。

 おばあさんになったタキ(倍賞千恵子)が、親戚の男の子である健史(妻夫木聡)にいそいそとトンカツを作ってあげる様子が微笑ましい。
 私がおばあさんになったら、妻夫木聡や綾野剛が毎日家に遊びに来てくれたら良いなと思った。
 うちの伯母はよく、
「毒蝮三太夫や永六輔がしょっちゅう家に来る」
 と言っていたから(※認知症の妄想)不可能なことではない!

 それにしても、年老いた倍賞千恵子を見るのは、腰の曲がった自分の母親の背中をさするのと同じくらい切ないことですね。
 子供の頃からお馴染みの役者さんなので(「男はつらいよ」ほぼ全作見てる)
 都電荒川線沿線で育った母は、
「あの人のお父さんは、都電の運転士なんだよ!」
 と、いつも自分の手柄のように自慢するのだった。

 タキは恋愛事件の中で一つの行動を起こし、罪を抱えて生きることになる。
 タキ(若い頃を演じるのは黒木華)が恋していたのは、板倉(吉岡秀隆)だったのか、奥様(松たか子)だったのか……
 おそらくタキ本人も分からなかったのではないか。
 それらを全部含めたあの家の世界を愛していて、壊したくなかったのだと。
 そして戦争は容赦なく、何もかもを壊してしまった。

 甘い、ノスタルジックな物語のようでいて、現代への警告とも受け取れる、興味深い作品でした。
 深刻な話にも笑いを入れたくなるところとか、私、山田洋次にけっこう影響受けてるのかも、なんてことも思ったり。
 色んな意味でノスタルジー。




 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:24| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年12月02日

映画「セトウツミ」感想

 川辺で池松壮亮と菅田将暉が関西弁でひたすらおしゃべりする映画。
 アイロンがけしながらのんびり見るには良かったけど、映画だと思うとちょっと物足りないかな〜
 もっと笑わせて欲しかった。
 いや、声出して何度も笑ったんですが。欲張り?


↑本編に入ってないこれが一番面白いような
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:07| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2016年11月19日

映画「トニー滝谷」感想

 映像化を放棄していて驚いた。
 映画というより朗読劇。
 原作の文章を読み上げるのがメインで、映像は挿絵のようだった。

 あまりにも原作を大切にし過ぎており、映像に「翻訳」されることで見えてくる新しい何か、があまりなかったのが残念。
 まあ、原作を知っている人間のわがままなのだけど。

 原作のトニーは完璧に孤独で、どうやっても救う方法がないように感じる。
 けれども映画版のトニーには救う余地がある気がして、そこは良かった。

 「トニー滝谷」というのは閉じた人間の話だと思っていた。
 しかしもしかしたらあそこには「つかめたかもしれない可能性」が描かれていたのかもしれない。

 昔ブログに書いた原作の感想はこちら
 いくら考えても答えが出ない、不思議な話ですよね。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 23:31| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

映画「殿、利息でござる!」感想

 コメディータッチの人情話で、落語みたいに楽しめた。
 貧しさのあまり夜逃げが相次ぐ宿場町で、
「大金を集めて藩に貸し、利息を取ろう!」
 というプロジェクトが始まる、というストーリー。

 何が嬉しかったって、西村雅彦をひっさびさに見られたこと!
 いや、ずっと活躍されていたのでしょうけど、私は12年間テレビの無い生活をしていて、邦画も全然見ていなかったから……

 あの人の芝居がかった芝居、最高ですよね!
 いつも同じような演技という訳でもないのに(にこりともしないシリアスな役も好きだ)西村雅彦はどこに出てきても西村雅彦以外の何者でもない。
 画面の中での異物感が一緒。

 最近は色んな役になりきる役者さんのことを「カメレオン俳優」と呼ぶようですが、どんな作品にも染まらない個性というのも素敵だし、必要だと思う。
 特に笑いは調和の破壊によって生じることが多いから、こういう人が登場するとそれだけでニコニコしちゃう。
 ほんと私、笑える話が好きなんだな〜

 藩主役の羽生結弦が綺麗だった!
 素人とは思えないほどセリフ回しがしっかりしており、お殿様の雰囲気が出ていた。
 あれだけスタイルの良い人が着物を着ていると、何だかもったいない感じがするけど。

 妻夫木聡は複雑な事情を抱えた切ない役で、静かに抑えた演技が良かったです。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 03:11| 映画・映像 | 更新情報をチェックする