2017年02月02日

映画「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」感想



 ロンドンにある美術館「ナショナル・ギャラリー」の活動を追ったドキュメンタリー。
 一番面白かったのは、ルーベンスの絵画「サムソンとデリラ」をスパイものの一場面として説明してくれる学芸員。
 人を惹きつける情熱的な語り口で、
「その映画、絶対見に行くよ!」
 という気分になった。

 芸術作品を読み取って、その魅力を伝える作業は、もしかしたら創作そのものより創造的なんじゃないか。
 私が常々感じていたそんな思いを、あの学芸員は体現していた。

 美術好きとはいえ、美術館ではただ作品を見て帰るだけのことがほとんど。
 ギャラリートークやワークショップも利用して、もっと積極的に美術に関わってみたいと思った。

 映画の公式サイトはこちら
 
posted by 柳屋文芸堂 at 18:54| 美術 | 更新情報をチェックする

2017年02月01日

映画「アトムの足音が聞こえる」感想



 アニメ「鉄腕アトム」の音響効果を担当していた大野松雄のドキュメンタリー。
 アトムが歩いたり、飛んだりする時の音を作り出した人。

 文章で書くと分かりにくいけど、聞けばすぐ、
「あー! これね」
 となるはず。よく知られた音だ。

 最初、大野松雄不在のまま、大野をよく知る音響関係者たちへのインタビューが続く。
 大野はもうこの世にいないのか?
 少なくとも同じ職場で働き続けているわけではないらしい。

 大野松雄のその後が明らかになった瞬間、背中がゾクッとした。
 この人は本質的なことしかやらないし、やれない。
 嘘臭い場所からは自然と離れ、音の根源に引っ張られてゆく人生なのだと思った。

 あれこれ要求してくる手塚治虫に向かって、
「おたくは映画に関してはど素人だ。素人は黙っててくれ」
 ときっぱり断った話とか、なかなか凄かったですね。
 頑固な天才たちの戦い。

 音響職人の技と、芸術家の生き方。
 一本で二つの映画を見たような満足感でした。

 そうそう、途中でレイ・ハラカミが出てきます。
 彼の元気な姿が見たい、という方もぜひどうぞ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:51| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

映画「世界一美しい本を作る男―シュタイデルとの旅―」感想



 ドイツにある小さな出版社「シュタイデル社」のドキュメンタリー。
 写真集に力を入れているようですが、ギュンター・グラスの小説なども出しているようです。

 作り手の意図に合った本にするために話し合いを重ね、紙や印刷方法、判型を決めてゆき、納得のいく色が出るまで何度も試し刷りをする。
 規模は違っても同人誌作りで同じようなことをするので、その感覚はよく分かる。

 私は本作りがあまり好きではなく、考えているうちに飽きてしまい、
「ま、これくらいでいっか」
 と適当なところで工夫するのをやめてしまう。

 シュタイデルさんは絶対そんなことしない。
 こういう紙がある、こういう装丁の案がある、見てくれ選んでくれと本の作者にどんどん迫る。
 中途半端な本になんてするものかという強い意志がみなぎっている。

 見ていて感心したのは、何もかもを上質なものにする訳ではないところ。
 安くするための提案もするし、わざと下品なデザインの紙を使って効果を出したりもする。
 何より大事なのは「物としての本」が「本の中身」をきちんと表現出来ているかどうか。

 私も同人誌を作る時に、シュタイデルさんの本への愛情を思い出すようにしたい。
 しかしシュタイデルさんにも負けない本作り狂がわんさかいる同人誌の世界ってとんでもないよね……
 
posted by 柳屋文芸堂 at 17:01| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

映画「ヴィダル・サスーン」感想

 偉い人のことを偉い偉いと褒め称えるドキュメンタリー映画が時々ある。
 これもそんな感じだった。
 言葉で偉いすごいと言うのではなく、
「○○を△△にしたから偉い」
 ということを映像で見せて欲しかった。
 特にビフォアの○○をしっかり示さないから、ヴィダル・サスーンの革新性がくっきりと見えてこない。
 △△が当たり前になった世界で「△△はすごい」って言われてもねえ。
 ファッション史の映画としてもう少し面白く作れたような気がして残念。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 16:44| 映画・映像 | 更新情報をチェックする

2017年01月26日

「一所懸命」「一生懸命」問題

 「一所懸命」「一生懸命」どちらを使いますか?
 新聞や雑誌、放送の世界では「一生懸命」に統一しているそうですが、小説家の文章では「一所懸命」の方をよく見るような気がする。

 辞書(広辞苑)を引くと、

いっしょ‐けんめい【一所懸命】
1、賜った1カ所の領地を生命にかけて生活の頼みとすること。また、その領地。太平記33「―の地を没収せらる」
2、物事を命がけですること。必死。一生懸命。「試験を控えて―に勉強する」

いっしょう‐けんめい【一生懸命】
イッショケンメイ(一所懸命)の転。


 とあるので、一所懸命の方が古く、元々の意味を保った漢字が使われていることが分かる。

 私はこの言葉、「一所懸命」「一生懸命」どちらであるかという前に「いっしょうけんめい」という音なのです。
 だから「一所懸命」だと「『う』が足りない」という気持ちになるので「一生懸命」の方を使います。
 本当なら「いっしょうけんめい」と表記したいくらいなのだけど、ひらがなだと意味が拡散していく気がするし、何だかいっしょうけんめい感が出ないし……

 「一所懸命」を使っている人たちは「『う』が足りない」という気持ちをどうしているのだろう、と思っていたら、先日、関西の芸人さんのトークの中で、
「いっしょけんめいに」
 という発音を聞いて「あっ」と思った。

 もしかして「いっしょうけんめい」って関東訛りなのか?
 地域までは限定出来ないけれど「いっしょけんめい」という発音に違和感がある人とない人がいて、それによって「一生懸命」派と「一所懸命」派に分かれているという仮説。
 まあ習慣で選んでいる人がほとんどだと思いますが……

 「いっしょけんめい」と発音する人、どれくらいいるんだろうなぁ。
 
posted by 柳屋文芸堂 at 13:58| 言葉 | 更新情報をチェックする